広島を訪問したウルグアイ前大統領ムヒカ氏は平和公園を訪れて、「倫理を伴わない科学は、想像もできない邪悪なものに利用されかねない。地球上で人間だけが同じ過ちを繰り返す」と指摘しました。
アメリカ大統領候補トランプ氏は、韓国の核武装について触れて、容認する考え方を表明しました。世界の多くの国が、核兵器廃絶を願う中で、核兵器の製造、保有を主張する動きが出ていることは由々しきことです。北朝鮮による軍事挑発が、隣国を刺激し、対抗すべきとの主張は、それだけの切迫感があるからでしょう。しかし、核に核で対抗する恐怖の冷戦時代を経験したアメリカ、ロシア、その他の核保有国も、核兵器の製造開発、保有によって、安心して暮らせる国と社会ができるのだとは政治指導者も含めて本心からそうは考えていないでしょう。だからこそ、アメリカ大統領であるオバマ氏が当選直後に核のない世界について提唱して、驚かれたのでしょう。
アメリカ政治軍事首脳部は北朝鮮が、軍事挑発を行った場合、約2週間で北朝鮮を制圧できると予測しています(当然、日本の自衛隊、安倍政権も知っているはずです)。北朝鮮が軍事的な挑発を実行すれば、そのことを口実に、一気に北朝鮮を制圧することは間違いないでしょう。北朝鮮による軍事挑発は、六か国協議をしっかり行い、北朝鮮、韓国が平和を実現し、維持できるように平和的手段で全力を挙げなければなりません。
核兵器製造保有競争に発展しないような交渉と、国際協力、懸命な選択が必要です。
<朝鮮日報:コラム>韓国の核武装は民主主義・人権・言論の自由を守る
この20年余り、北朝鮮は約10個の核兵器と射程1万キロを超えるミサイルを開発したが、韓国は米国に依存するばかりで自ら効果的な対応策を講じられなかった。韓国政府は、北朝鮮による核ミサイルの発射の前段階から攻撃を受けた後の反撃段階に至るまで、どれ一つとっても確実な備えができていない。
北朝鮮の核攻撃を防ぐ最良の方法は、ミサイルの発射前に先制攻撃を仕掛けることだ。そのためには北朝鮮の移動式発射台や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の探知能力が必須となるが、まだ備わっていない。現在、韓米が保有する終末(最終)段階の下層防衛用ミサイルでは、北朝鮮のミサイルを空中で迎撃するには限界がある。そのため、韓米は上層防衛用として米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備を協議しているが、中国の反対で実現は不透明な状況だ。
韓米が北朝鮮の核攻撃に何倍もの核で反撃する能力があるなら、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記もむやみに挑発に出ることはないはずだ。だが、韓国には核兵器がなく、米国の「核の傘」は作動するかどうかが不確実だ。ロサンゼルスが北朝鮮の弾道ミサイル「テポドン」により焦土化される状況がくれば、米国は韓国を助けられないかもしれない。そのため、米国の核の傘は「破れている」との指摘もある。
そんな目も当てられない現実を踏まえ、韓国では今年初めから独自の核武装論が台頭している。北朝鮮による1月の4回目核実験後に行われた世論調査でも、核武装に賛成(54%)が反対(38%)を大きく上回った。だが、政府は一貫して核武装に反対を表明しており、外交・国防分野の元高官らも「得るものより失うものの方が多い」と否定的だ。一部では「韓国が核武装すれば北朝鮮の核に免罪符を与えることになる」との主張もある。強盗にナイフを突きつけられても、自分を守るための武器で立ち向かってはならないという強弁にほかならない。
核武装に反対する最大の理由は「韓米同盟が壊れるから」というものだ。同盟の崩壊は韓国にとって重大な問題であるため、慎重になる必要はもちろんある。
だが、北朝鮮がすでに約10個の核兵器を保有しているため、韓国の核拡散防止条約(NPT)脱退条件(10条)は整っている。こうした状況で韓国が米国を説得できれば、独自の核武装は不可能ではないと専門家は指摘する。例えば、韓国の核武装が「恐怖のバランス」を生み出し北朝鮮の核開発の意志をそぎ、韓国の安全保障面での対米依存度を大きく下げ、米国の財政負担を減らせるという点が説得ポイントになるかもしれない。
さらに、韓国の核武装は韓半島(朝鮮半島)における民主主義と人権、言論の自由を守ることにつながり、米国の世界戦略にも有益だ。独島(日本名:竹島)や離於島(中国名:蘇岩礁)に対する日本と中国の干渉を断ち切り、北東アジアの安定にも寄与するだろう。
世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)室長は「米国の世界戦略における最優先事項は中国のけん制だが、米国は自国兵器の『ビッグバイヤー』である韓国からすぐに在韓米軍を引き揚げ、中国へのけん制力を弱めることはしないだろう」と指摘する。インドやパキスタン、イスラエルが核武装後も米国と友好関係を維持しているように、韓国が核武装しても米国との同盟を守ることができるとの見方だ。
韓国の核武装は、今は不可能な目標のように思える。あまたの障害物が行く手を阻んでいる。だが、力がなく屈従的な国を後世に残さないという強い意思があれば、今の韓国の力で挑戦できないことでもない。朴槿恵(パク・クネ)政権は北朝鮮の5回目の核実験を決断の契機とすべきだ。 池海範(チ・ヘボム)東北アジア研究所長 朝鮮日報