国内法で、税務申告に虚偽があれば、追徴課税、刑事罰が科される。それが、普通の民主主義国家です。しかし、その国の大手企業、多国籍企業、富裕層が租税回避地に資産隠し、利益の隠蔽を図っても訴追されない。そんなことが許されてよいはずがありません。また、このようなことが長期にわたって許され、多くの誠実な国民を馬鹿にし続けることができると考えるのは、彼らの思い上がりです。必ず、このような政治的退廃は多くの国民から批判され、修正をしなければならない時が来ることを自覚すべきです。
政治経済を金の力で捻じ曲げ、どこまでも支配し続けることができると考えるのは大きな間違いです。
<東京新聞社説>税逃れ対策 イタチごっこにケリを
租税回避地を使う税逃れの実態を暴露した「パナマ文書」を受け、OECDやG20が急ぐ税逃れ対策は不十分ではないか。抜け道を完全に塞(ふさ)がなければ税の不公平や財政難は解消しない。
「タックスヘイブン(租税回避地)を使った取引が違法でないということが問題だ」。オバマ米大統領が強調した言葉が問題の本質を突いている。
パナマ文書で名前が出た指導者のほとんどは「法に触れることはしていない」とうそぶいた。脱税でなく合法的な節税だとか、キャメロン英首相にいたっては「資産形成は悪いことではない」と開き直った。
タックスヘイブンを利用するケースとして、政情不安な国の市民が貯金の安全な保管場所として選んだり、国境を越えた企業合併で中立的な地に本社を置く場合はある。しかし、パナマ文書を分析した国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)によれば、税を逃れたり、財産隠しのための利用ばかりが出てくるのである。
そこで暴かれたのは、実体のないペーパーカンパニーを容易に設立でき顧客の秘密を固く守るタックスヘイブン国家は数多くあり、パナマは氷山の一角でしかないこと。富裕層や大企業に交じり本来納税を促す立場の政治指導者が多く利用していること、それらを手助けして稼ぐ法律事務所や大手銀行の存在である。
経済協力開発機構(OECD)や二十カ国・地域(G20)は、海外で暮らす「非居住者」の銀行口座情報を各国の税務当局に提供する仕組みを二〇一七年から始める。しかし、一部のタックスヘイブンは参加を拒否している。
ペーパーカンパニーによる偽装を防ぐため、実質的な企業所有者を登録させる国際機関を創設し税務当局だけでなく一般市民にも開示する制度づくりを進めているが、消極的な国があって不十分なままである。どこかに「抜け穴」が残れば、必ずそこが租税回避の場として狙われ、いたちごっこは続くのである。
抜け駆けを許さないとともに口座などの情報をガラス張りにして資産を隠しようがなくすべきだ。法律事務所や仲介業者を規制対象にし、第三者の税逃れを助ける行為があれば刑事罰を問えるようにすることも必要だろう。
パナマ文書で名前が出たキャメロン首相や習近平・中国国家主席は腐敗一掃を掲げてきたはずだ。汚名返上に一役買うときである。