「有力な産業を持たない小国にとって金融は一大産業であり、それらの国の多くは英国を旧宗主国とする。そしてイギリスは世界のマネーを集めることで成り立つ金融立国である。タックスヘイブン退治は国家の最大の権益を脅かすため、面従腹背を貫いてきたのである。」
新自由主義と資本主義の醜さを代表とする支配層が、租税回避地を設立し、その回避地を利用して、税の支払いを免れる。支配層が作る法律で守られたから合法というなら、立法権を握る支配層は何をしてもよいのか??そのことが歴史によって問われるでしょう。
今回、アイスランドの首相が国民の批判を受けて、辞任に追い込まれました。現行の司法が無謬でないことと、司法が社会的常識を反映しないのであれば、国民的な批判と運動によってその矛盾を告発し、正さなければなりません。イギリスであろうと、アメリカであろうと、支配層の腐敗堕落を放置し、政治的な不正義を許すことはあり得ないでしょう。
<東京新聞社説>パナマ文書 税逃れのツケは払えぬ
世界の名だたる元首や著名人が租税回避地を利用して税を逃れる。「パナマ文書」と呼ばれる内部文書と調査報道で、その実態が暴露された。公平・公正な税負担なくして格差の解消はない。
タックスヘイブン(租税回避地)での会社設立を代行するパナマの法律事務所から、およそ四十年分、一千万件以上の内部文書が流出、それを国際調査報道ジャーナリスト連合が分析した。
名前が挙がったのはロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、英国のキャメロン首相、シリアのアサド大統領ら。本人ではなく知人や親族らがタックスヘイブンの企業などを通じて巨額の金融取引をしたり架空会社を設立したりしていた。資産隠し疑惑を追及されたアイスランドのグンロイグソン首相は早々と辞任表明した。
タックスヘイブンで資金を保有すること自体は違法ではない。しかし、そこでは情報の秘匿性が極めて高いことから脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)に利用されるケースが多い。何より税率が極端に低いタックスヘイブンを有力者や富裕層が利用することは公平な税負担という意味で問題だ。
税務や法務の専門家を利用できる富裕層や大企業がますます富む一方、「逃げた税」の穴埋めは市民が負う。世界のタックスヘイブンに富裕層が保有する金融資産は少なくとも二十一兆ドル(約二千三百兆円)に上るとの試算もある。その結果、経済格差は拡大し、中所得層らの税負担が増す。
パナマ文書に日本の政界要人の名はなかったが、医師や実業家ら四百人が載り、逃げた税金が小さくないことは容易に想像できる。
問題は、犯罪やテロの温床にもなっているタックスヘイブンがなぜなくならないかだ。経済協力開発機構(OECD)がブラックリストをつくり、各国との情報交換を促すなど対策はとってきた。だが消滅しない大きな理由がある。
有力な産業を持たない小国にとって金融は一大産業であり、それらの国の多くは英国を旧宗主国とする。そして英国は世界のマネーを集めることで成り立つ金融立国である。タックスヘイブン退治は国家の最大の権益を脅かすため、面従腹背を貫いてきたのである。
米国も法人税が著しく低いデラウェア州を抱えている。主要国が公平な税負担の大原則を徹底できないかぎり、問題の根本は解決しない。不公平のツケは払えない。