かの竜泉に剣を 淬 ぐとかや。
奥の細道/松尾芭蕉
サイ
にら(ぐ)、つと(める)、はげ(む)
淬
【解字】形声。氵(水)+卒。音符の卒は、つきるの意味。刃物に焼きを入れるとき、冷やす水が一気に蒸発してつきるさまから、にらぐの意味を表す。
- にら-ぐ。焼きを入れる。刀などを鍛えるとき、質を硬くするため、赤く熱して急に水を入れること。「淬礪(サイレイ)」
- つとめる。はげむ。「淬励(サイレイ)」
- 洗う。浴びる。
- そめる(染)。
- さむい(寒)。
にら-ぐ
一般人が生涯けっして使うことのないであろう言葉。
「淬」を使った熟語では、淬励(礪)サイレイ があります。
意味は、”心を奮い起こして物事に励むこと。つとめはげむ。淬勉。”
説文には、
「火を滅する器なり」とあり、刀刃をにらぐ時に水を入れておく器の意とするが、にらぐことを淬または焠という。
その時の音の擬声語である。」
日本語で言ういうところの「淬ぐ」の意味は、
淬(焠)ぎ
1.刀を鍛えるときに鋼を焼いて水にくぐらすこと。「類聚名義抄」
2.どもること。「三蔵法師伝」
【日本難訓難語大辞典】
2のどもるはよくよくわかりませんが、
「焼きを入れる」という意味のようです。
現在では、本来の意味よりも比喩として”制裁をくわえる”という意味での方が多く使われていますが。
この「にら-ぐ」の語源を知りたくて、ネットとか図書館でいろいろ調べてみた。
現代において「淬ぐ人」は刀鍛冶だけです。
私たちは、正月の行事(祭事)として毎年TVに映し出される「日本刀打ち初め式」でしかお目に掛かることはありません。
そう、えぼし(鳥帽子)に直垂(ひたたれ)姿の刀匠が鉄鋼にハンマーを打ち下ろし火花を散らすお馴染みの図になります。
でも、そんな”甘っちょろい”行事しか知らなかったわたしは、この動画を見て度肝を抜かれました。
日本刀ができるまで
http://www.youtube.com/watch?v=vAsCkSA159s&feature=related
「鍛錬」とは鉄を練り鍛えること。
鋼を叩いて平たく折り返して鍛錬する。(何十回も繰り返す)
炭素量を均一し不純物を取り除き鋼の中の空気を抜く。(酸化を防ぐ)
日本刀の武器のとしての強靭さ美術品としての美しさを生み出すこと。
では、なぜ「にら-ぐ」なのか。
水にくぐらす ⇒ にらぐ
への転訛なのかなと自分勝手に想像する。