漢字を学び心を育む

2回目のチャレンジで漢検1級に合格。
現在、ペン習字に傾倒。
硬筆書写検定1級が欲しいです

「薹が立つ」を連想しませんか。

2010-08-31 19:57:09 | ◇1級:読み(訓読み)
 
 ・鬆()が立った飯は食われぬ。
  漢検協会 完全征服より






ショウ、ソウ
あら(い)、ゆる(い)、す



【解字】形声。髟+松。

  1. 髪の乱れているさま。
  2. 粗い。ゆるい。しまりがない。
  3. す。大根・牛蒡などの芯に細かく通っている穴。
    <新漢語林より>


<Wikipedia>
鬆が立つ(すがたつ)とは・・・

鬆(す)とは、本来は均質であるべきものの中にできた空間をいう。
漢字は松の葉の重なりから向こうがすけて見えるさまからきた。

茶碗蒸しや豆腐の表面に細かい泡のような穴があいた状態。
蒸したり、煮たりするときに火が強すぎたり、加熱時間が長いと起きる。
ダイコンやゴボウなどの根菜類、スイカなどの果実において、すができることが多い。
組織が外側に向かって成長しすぎることなどが原因で、内部が割れて空間(亀裂)ができるのである。



幼い頃、父が抜いた大根をそのまま二つに折って

「やっぱり、スが入ってるな、ダメだこりゃあ。」

と言って畑に捨てていたのを思い出した。


わたしは、スが酢を指している事を疑う筈もありません。
でも、酢が入るってどういう状態なのかは分からなかった。
おそらく大根が熟れすぎて酸味が強くなってるんだろうなと。(どんな状態だ?)

でも漢字を勉強していたお陰で四十年の時を経てやっと謎が氷解しました。(笑+大恥)

要するに、

 蒸しすぎ、煮すぎ、炊きすぎ、熟れすぎ

なんでしょうね。






骨粗











獅犬




定石どおりにいきましょう。:衒

2010-08-28 18:51:09 | ◇1級:読み(訓読み)
 
 ・奇を衒( てら )った行動だ。
  漢検協会 完全征服より



慣用句:一風変わったことをしてみせる。人の注意を惹く。

     衒う:「照らふ」の意。輝くようにする。見せびらかす。ひけらかす。誇示する。
     「奇を―・う」「才を―・う」





ゲン
う(る)、てら(う)、ひけ(らかす)



【解字】形声。行+玄。音符の玄ゲンは、眩ゲンに通じ、くらますの意味。人の目をごまかして商品を実質以上にほめて歩くの意味を表す。

  1. てらう。自分自身をみせびらかす。才能などを世間に自己宣伝する。
  2. うる。歩きながら売る。
    <新漢語林より>




「奇を衒う」はよく耳にするし使ったりもするけど、漢字ではあまり見たことがなかったような気がする。「てらう」という言葉は、戒めの意味も含めたマイナスイメージが付き纏う。でもそんな奇手・奇抜・奇想天外な発想も時と場合によっては、持て囃されたりするんだから紙一重だとも思う。

「衒う」は知らない人も多いかもしれないけれど、「女衒ゼゲン」ならお馴染みであろう。

女衒という職業は、時代小説でよく耳にする職業。江戸時代の遊女を斡旋する仲介人のことであるが、勿論現在においてもその名を変えてその職業は生き存えている。人類最古の職業といわれる遊女という商売が永遠に無くなることはないだろうし、そしてその需要が潰えることがない限り。NHKのクローズアップ現代では女衒という言葉を使わず、彼等の業界用語である「スカウト」という言葉を使って報道していたという。売春を援助交際、簡易な整形手術をプチ整形と言うのに似ている。所謂ネーミングというやつ。すること、している内容は全く変わらないのに、罪の意識を稀薄にさせ巧みに素人を誘き寄せる。


わたしが「女衒」とういう言葉に出会ったのは、ン十年前の高校2年生の時。阿佐田哲也が執筆した娯楽小説「麻雀放浪記」の登場人物で ”女衒の達” という着流しのやさぐれ雀士がいたから。女を売買する人だろうとは凡そ見当はついたけど、「衒」という字からは「街の玄人」を連想させ、”あまり深く詮索してくれるなよ” という雰囲気が字体から感じられた。まあ、ヤクザな世界だなと。


映画 麻雀放浪記より 女衒の達





女衒で不思議に思ったのは、「女」を  ゼ と読んでいること。
漢音なら ジョ、呉音なら ニョ だしね。


女衒の由来 <Wikipedia>

日本では、古くは女見といったことがあるらしい。「七七四草」には「女見の女を衒(う)るところより、女衒と書き、音読み転訛してゼゲンと呼ばれるに至れるならん」とある。女見は文字通り娼婦としての商品価値を見極める意で、その目利きの良い者を呼んだ。



なるほど、転訛なんですね。

 女衒 ⇒ ジョゲン ⇒ ゼゲン


でも、やっぱり意味は「女を衒(ウ)る」こと。



一番大事なのは ”こころ” です。

2010-08-22 18:22:17 | ◇1級:読み(訓読み)
 
 ・もらうものなら藜( あかざ )でも。
  漢検協会 完全征服より





レイ
あかざ



【解字】形声。艸+黎。音符の黎レイは、きびの意味。きびの穂のような、つぶ状の花をつける、あかざの意味を表す。

  1. あかざ。草の名。
  2. 黒い。
    <新漢語林より>




アハハハ。


 『貰う物は夏も小袖』

というのもありました。



藜はなかなか嫌われ者のようですね。

『藜アカザの羹アツモノ』
アカザの若葉を具とした吸い物。転じて、粗食。

粗末な食べ物、粗食の代表選手であり、飽食に対する戒めのシンボルとして使われているようです。



完全征服の音読みでも、

 ・足るを知る者は藜羹( れいこう )も膏粱よりも旨しとする。



出典は、菜根譚。
菜根譚(さいこんたん)は、中国の古典のひとつであり、人生の指南書ともいえる名言が多い。中国の処世哲学書。

【菜根譚 概論167項】

 貪得者分金恨不得玉,封公怨不授侯,權豪自甘乞丐;
 知足者藜羹旨於膏梁,布袍暖於狐貉,編民不讓王公。

貪欲な者は金を分けてやると玉を貰えなかった事を恨み、公爵の位を授けられると領地を持っている諸侯に任ぜられなかった事を怨む。このような大きな権力を持ちながら、自分から乞食の心に甘んじている。

足るを知る者は「あかざのあつもの」のような粗末な食事でも美味いと思い、粗末な綿入れ服を着ていても、毛皮のコートより暖かいと思っている。このような貧しい民百姓でありながらも心は王侯より勝っている。

※訳はこちらのページを参照させていただきました。
翔翔閃閃梦之天 http://www001.upp.so-net.ne.jp/tomiyan/saikon24page.htm




同じ菜根譚で

【菜根譚 後集87項】

 神酣、布被窩中、得天地冲和之気。
 味足、藜羹飯後、識人生澹泊之真。

神酣なれば、布被の窩中にも天地の冲和の気を得。
味足らば、藜羹の飯後に人生澹泊の真を識る。

精神が充実していれば、布製の粗末な寝具でも大自然の調和した真気を得る事が出来る。
味覚に満足していれば、雑穀の粗末な食事でも人生のさっぱりとした真実を知ることが出来る。
つまり、物の豊かさと心の豊かさは全く相関しないということ。
言換えれば、達人とは、欲望を捨て去ることにより得られる「大安心」を得ている人と言えるだろう

※訳はこちらのページを参照させていただきました。
菜根譚 超訳 http://www.saikontan.net/choyk/




また、検定に良く出ることわざとして、

 ・藜羹( れいこう )を食らう者は大牢の滋味を知らず


[王褒]
 羹藜唅糗者,不足与论大牢之滋味。

粗食に慣れた者にはごちそうの味がわからない。つまらない人間には高尚なことや重大なことは理解できないことのたとえ。
大牢=ごちそう



あかざ 【藜】 Wikipedia


アカザ科の一年草。空き地や路傍に生え、高さ約1.5メートル。茎は堅い。葉はひし形に近い卵形で、縁は波形。若葉は紅色をし、食べられる。晩夏、黄緑色の小花が穂状に密生する。中国の原産。近縁種にシロザがある。アカザ科の双子葉植物は、草原、荒地、塩分の多い土地などに生育し、ホウレンソウ・アリタソウなども含まれる。



 天ぷらならイケるかな。。


蘇という鬼がおったそうな。

2010-08-21 21:22:05 | ◇1級:読み(訓読み)
 
 ・兵を起こし城を屠( ほふ )る。
  漢検協会 完全征服より






ほふ(る)、さ(く)、ころ(す)



【解字】形声。尸+者。尸はしかばねの象形。音符の者トは、多く集まるの意味。死体が多く集まる、牛馬などを殺すの意味を表す。

  1. ほふる。
  2. 割く。牛馬などの肉を裂いてばらす。
    <新漢語林より>



城市を攻めてその人を皆殺しにすることを 「沛ハイを屠る」 という。

”ほふる” という言葉自体今まで聞いたことがなかった。
辞書を引くと、”ほふる” は、”はふる” が変化したものとある。
でも ”はふる” にしたって同じこと。

語源のヒントと思われるものが、古事記にある。

「その蛇(オロチ)を切り散(ハフ)る」と。

”はふる” に関連した言葉を字訓(白川静)で調べてみた。


 祝 (ハフリ) =穢れを祓い散らす

 葬る(ハブル)=放り棄てる

 溢る(ハフル) =あふれ出る

 散る(ハフル) =ばらける

 放る(ハフル) =追い払う

 屠る(ハフル) =大きな集合体を切り裂く


”はふる” という言葉は全て「基点から離れる、離される」という共通の意味を持つ。


 放る(はふる)⇒(ほふる)⇒(ほうる)

 葬る(はぶる)⇒(はうむる)⇒(ほうむる)

という具合に変化していった。


--
屠を使った熟語には、「殺す」という意味を持った、

「」「屠腹」

などあるが、「屠蘇」もよく耳にする身近な言葉だ。


屠蘇(屠蘇散、屠蘇延命散)

元日、または三が日に祝儀として飲む薬酒。中国の習俗を伝えたもので、山椒などの生薬を調合した屠蘇散を袋(屠蘇袋)に入れ酒に浸して作る。一年中の邪気を祓い、齢を延ばすと言われ、日本では嵯峨天皇の平安時代から用いられた。中国では、蘇と呼ばれた鬼を屠るということを意味している。



現代日本では、単に正月に飲む酒のことしか指していないようです。
まあ、呑兵衛にとっては酒を飲める理由があれば何でもいいわけでして・・・。

「お屠蘇気分」





人みな飾って言う。

2010-08-19 20:36:20 | ◇1級:読み(訓読み)
 
 ・小人の過ちは必ず文( かざ )る。
  漢検協会 完全征服より




ブン、モン
ふみ、あや、かざ(る)



【解字】象形。人の胸を開いて、そこに入れ墨の模様を書くさまにかたどり、模様・あやの意味を表す。




出典は、

[論語、子張] 小人之過也必文

 小人が過ちをすると、必ずうわべをかざる。


なるほど、真実を知らない人には、己の非を認めたくありませんからね。
自分を良く見せたいという厭な醜い心は誰にだってあるものです。



   あや 表面、外面的修飾

   きじ(生地) 中身、本来の姿




準1級で出題される四字熟語で、「文質彬彬」ブンヒツヒンピンがあります。

この出典も同じく論語からで

[論語、擁也] 子曰 質勝文則野 勝質文則史 文質彬彬 然後君子

 子曰く、
 質、文に勝てば則ち野。
 文、質に勝てば則ち史。
 文質彬彬として然る後に君子なり。

『文質彬彬』
内面と外面が一致して釣合っている様。
徳と才智の調和をいい、どっちに片寄るわけでなく中庸である様。
彬は美しさを意味する。


今回はなぜか幸田文を思い浮かべてしまった。笑
また、「文質彬彬」で中尾彬を連想した人も多いんだろうなあ、と。 (←自分)



画数の多い難しい漢字を覚えるのは1級らしいのかもしれませんが、

小学一年の配当漢字である「文」の意味を勉強するのも味があっていいと思いませんか。



※タイトルの「人みな飾って言う。」は、山本夏彦のコラムから拝借しました。



マルチボウル :盥

2010-08-18 22:38:43 | ◇1級:読み(音読み)
 
 ・早起盥漱( かんそう )して本堂に籠る。
  漢検協会 完全征服より







カン
そそ(ぐ)、すす(ぐ)、たらい



【解字】会意。臼+水+皿。臼キョクは、両手の象形。皿ベイは、盤の象形。両手に水をくんであらう、たらいの意味を表す。


  1. たらい。手を洗う器。
  2. あらう。すすぐ。手を洗う。
  3. 洗濯などをする器。
    <新漢語林より>




「たらい」は、手洗いの転。

 ”たらい” という字は他に、盤 と 槃 がある。
皿はうつわを、般は大きい舟の意で、手を洗うたらいの意味を表す。
般が初文で、盤、槃はその繁文。


盥は、手を洗うこと。


 盥漱(カンソウ) ⇒手洗い + (漱)口をゆすぐ

 盥頮(カンカイ) ⇒手洗い + (頮)顔を洗う ※怪しい

 盥沐(カンモク) ⇒手洗い + (沐)髪を洗う

 盥洗(カンセン) ⇒手洗い + (洗)足を洗う

 盥櫛(カンセツ) ⇒手洗い + (櫛)髪を櫛けずる


と、洗う箇所・作法により、字を書き分けている。




「たらい」というと洗濯板とセットになっているこんなのを思い浮かべていた。


もちろん見た事あるし実家には残っていると思う。




でも、盥漱とかする盥は、おそらくこんなのだと思う。


少し立派過ぎるかな。





かな漢字まじり表記

2010-08-15 00:55:34 | ◇1級:読み(音読み)
 
 ・屎尿(      )を汲んで肥とした。
  漢検協会 完全征服より








くそ



【解字】形声。米+尸。音符の尸シは、死体の象形。米の死体、くその意味を表す。


  1. くそ。大便。
    <新漢語林より>





 ・ら致
 ・だ捕
 ・ほ乳類
 ・えい児
 ・ろ過
 ・は虫類
 ・たん白質


かな漢字まじり表記については、新聞・本などよりテレビでの使用頻度が甚だしい。
でも最近になって、上記の熟語が新聞で頻繁に目にするようになった。
常用漢字表にないという理由だけで、使用しないというのとは違うような気がする。
表外漢字でも結構使っているのがあるからでその辺りの基準がすごく曖昧。
ただ確実にわかっていることは、「ら致」と書くよりも「拉致」と書いた方がピンとくるし、誰も読めなくて困ってはいないという事実。理屈ではなくね。


で、「し尿」。

かな漢字まじり表記で原字を知らなかった見たことなかったのはこの字くらいしか思いつかない。
1級漢字としてはやけに簡単なのに、今までお目に掛かったことがないというのも不思議な話だ。
漢字としての格付けが低いのだろうか。
でも行政地方自治体などの資料によく出てくる「し尿処理施設」という表記に違和感を覚えたことはない。
もちろん「し尿」という言葉の意味は知ってたつもり。
あれしかないなと。笑
でも正確には知らなかった。
子供の頃大人に教えてもらえばよかったのだろうが、そのことは聞いちゃいけないような感じに思っていたのだろうか。触れちゃあいけないみたいな。

 屎(し)
 米の尸シカバネ=大便

 尿(にょう)
 尾+水=小便(後尾から出る水)


大便で思い浮かべるのが、「糞フン」。
どちらも”米”がついていて、肛門から排泄されるモノ。


 屎尿シニョウ=人間

 糞尿フンニョウ=動物

とある程度は使い分けしているらしい。



なんだか汚くなってしまいましたね。


m(_ _)mスマン




--
ちなみに今秋にも決定するであろう新常用漢字には、下記の2文字が追加となる。

 拉(拉致)

 哺(哺乳類)


実はわたしも総ルビまでとはいかなくても新聞で難しい表外文字にルビを振る分には賛成である。
漢字ではなんとなくイメージが広がるが、平仮名ではのっぺらぼうになってしまう。
この ”イメージが湧く” というのがとっても大事なことだと思います。




こんなところにも漢字の名前が・・・。 :轂

2010-08-07 21:18:14 | ◇1級:読み(音読み)
 
 ・三十輻 一轂( いっこく )を共にす。
  漢検協会 完全征服より





コク
こしき、くるま、あつ(める)、しめくく(る)、お(す)



【解字】形声。車+殻。音符の殻コクは、中空が「から」の意味。車軸を囲むように中空になっている部分、こしきの意味を表す。

  1. こしき。車輪の中央にあり、軸を通して、や(輻フク)の集まっている所。
  2. 車。車両。
  3. あつめる。しめくくる。
    <新漢語林より>



まずは、用語の説明から。

「轂コシキ」とか「輻ヤ」は、牛車ギッシャを構成する部品の一つである。




 轂=ハブ(hub)、中枢、集線

 輻=スポーク(spoke)




図書館で白川静先生の「字統」で調べてみる。

 轂

 形声。声符は殻。殻は脱穀したのちの殻で、中の空虚なものをいう。
 「輻ヤの湊る所なり」という。車軸の輻の集るところは轂。
 その虚中のゆえにはたらきをなすものであるから、
 [老子、第十一章]「三十輻プク、一轂コクを共にす。其の無なるに當りて、車の用有り」
 とあり、轂中空虚にして、回転が可能であることをいう。



 輻

 形声。声符は畐。「輪轑リンレウなり」とあり、車輪の中の矢の意である。
 [周礼、孝工記、輈人]に「輪の輻三十、以って日月に象るなり」とあり、
 放射状の輻によって、車輪を支える。車轂のところにそれが集中するので、
 四方より物資などが集ることを輻湊、また輻輳という。



なるほど、これでやっと下の熟語の意味がわかりました。


輻輳 ふくそう

ものが一ヶ所に集中して混雑している状態のこと。IT分野では、電話回線やインターネット回線において利用者のアクセスが特定の宛先に集中することにより、通常行えるはずの通話・通信ができなくなる状況を指す。俗に「回線がパンクする」と表現される状態。



 車シリーズ、なかなか手強そうです。




--
[老子道徳経:第十一章]

三十輻共一轂 当其無有車之用
埏埴以為器 当其無有器之用
鑿戸牖以為室 当其無有室之用
故有之以為利 無之以為用

全ての形有る物が役に立つのは、形無きものがそれを支える役目を果たしているからである。 



らしい・・・。

♪かーごめ、かごめ。 :繞

2010-08-06 20:40:21 | ◇1級:読み(音読み)
 
 ・釈尊を弟子たちが囲繞( いにょう/いじょう )する。
  漢検協会 完全征服より

  【囲繞】 まわりを取り囲むこと。



ジョウ、ニョウ
めぐ(る)、めぐ(らす)、まと(う)、まつ(わる)



【解字】形声。糸+堯。音符の堯ギョウは、弱に通じ、しなやかに曲がるの意味。糸をしなやかにして、まとうの意味を表す。

  1. まとう。めぐる。まつわる。まきつく。
  2. めぐる。かこむ。めぐらす。
  3. にょう。漢字の構成上、左側から下部へめぐる字形部分。
    <新漢語林より>




音符が堯ギョウなのに、糸が付いて繞になるとなぜか ジョウ になる。

繞ニョウといえば、之繞(シンニョウ)などでお馴染みの漢字の部首名。



  繞(にょう):漢字の構成要素のうち、左から下にかけて置かれるもの。
  
 辶(しんにょう) 込 辺 迅 遊
 廴(えんにょう) 廷 延 建
 走(そうにょう) 赴 起 越
 鬼(きにょう)  魅 魁 魃
 麦(ばくにょう) 麺 麩 麹
 風(ふうにょう) 颱 颶 
 夂(すいにょう) 処 
 爪(そうにょう) 爬 
 毛(け)     毬





そういえば、繞という字、右繞三匝で思い出しました。
仏教の敬礼法で、右繞と左繞があるそうです。
上の完全征服の例文から察しても、繞は仏教から来た言葉だと思います。

■若悪獣囲繞(観音経)
「若し悪獣に囲繞(いにょう)せられ、利(するど)き牙爪(げそう)怖るべきも、彼の観音の力を念ずれば、疾(と)く無辺の方に走らん。」
 もし、怖ろしい猛獣に囲まれて、鋭い牙や爪をたてられた時、観音さまにおすがりすれば猛獣どもは遠くの方へ走り去って行くというのです。



--
また、”囲繞” 検索で一番多くヒットしたのが、


 囲繞地(いにょうち)---周りをすべて家などに囲まれ、公道に面してない土地。


どうやら、不動産、法律用語みたいです。

道理ですね。


デザインなんかしなくていいのに。:艾

2010-08-04 21:46:15 | ◇1級:読み(音読み)
 
 ・五十年経つと艾( がい )といい重要な政務に従う。
  漢検協会 完全征服より




ガイ
よもぎ、もぐさ、としよ(り)、か(る)、おさ(める)



【解字】形声。艸+乂。音符の乂ガイは、草を刈るはさみの形にかたどり、草を刈るの意味を表す。

  1. よもぎ。もちぐさ。
  2. もぐさ。
  3. としより。五十歳。頭髪がよもぎ色のようにごま塩になるから。
  4. 久しい。
  5. へる。過ぎる。
  6. 美しい。みめよい。
  7. やしなう。
  8. むくいる。
  9. 草を刈る。
  10. おさめる。
    <新漢語林より>




髪が蓬ヨモギのように白くなる年齢なので、五十歳のことを艾という。


 弱冠 二十歳(男)。

 而立 三十歳。

 不惑 四十歳。

 艾年 五十歳。

 耳順 六十歳。



灸ヤイトに使う「艾モグサ」は、蓬ヨモギの葉を乾燥させたもの。



--
実は、ずっと気になっていたことがあった。

この「艾」の字、完全征服で使用している活字では下のように表現されている。



よくよく見てみると、草かんむりの下の「乂」の字の左上に点のようなものがついている。




これとは明らかに違う。



実はこの他にも似たような字があった。

 爻、駁、吝、餃、馭・・・



最初わたしもこんな字があるのかなと思っていたが、同じ「艾」でも印刷物によって点が付くものと付かないものがあるのに気付いた。



どうやら、「デザイン差」なるものらしい。




漢検問題集の巻末にも載っているが、文化庁の漢字小委員会で決められているもので、


表外漢字における字体の違いとデザインの違い

明朝体活字のデザインについて
常用漢字表では、個々の漢字の字体(文字の骨組み)を、明朝体活字のうちの一種を例に用いて示した。現在、一般に使用されている各種の明朝体活字(写真植字を含む。)には、同じ字でありながら、微細なところで形の相違の見られるものがある。しかし、それらの相違は、いずれも活字設計上の表現の差、すなわち、デザインの違いに属する事柄であって、字体の違いではないと考えられるものである。つまり、それらの相違は、字体の上からは全く問題にする必要のないものである。


と謳われている。