村の鍛冶屋(作詞作曲不詳)
暫時(しばし)も止まずに槌打つ響
飛び散る火の花 はしる湯玉
ふゐご の風さへ息をもつがず
仕事に精出す村の鍛冶屋
フク、ホ、ヒ、ビ、ブ
うつぼ、ふいご
鞴
【解字】形声。革+備。
- かわぶくろ。
- 鞴靫(フクサイ)は、矢入れ。うつぼ。
- 車前の横木のおおい。
- ふいごう。
向田邦子の眠る盃ではありませんが、ずっと
「火箸(ひばし)も休まず土打つ響」
と唱っていたように思います。
小学校で唱ったのは、おそらく私たちの年代が最後のはず。
ということは、あと30年ほどで完全に誰の記憶にも残らないということ。
この唱歌の寿命もあと30年ほどで自然消滅してしまうのでしょう。
仕方ないのでしょうね、今の子供達では歌詞からイメージが湧かないのですから。
せっかく、鍛冶屋の「冶」も準1級より常用漢字になったと喜んでいたのですが。。
小学生のとき、わたしの親戚が鍛冶屋をやっていました。
初めて目にした「鍛冶屋」は、大音響と火花の散る光で興奮状態になり、小学生のわたしには十分過ぎるほど刺激の強いものでした。
実は従妹と遊ぶよりも鍛冶屋見物の方が楽しみで、一日中飽きもせずずっと眺めていました。
はしる湯玉
これも味わい深い言葉だと思います。
「湯玉」なんていう言葉は、この唱で初めて聞きました。
3番の歌詞がまた奮っています。
刀はうたねど大鎌(おおがま)小鎌(こがま)
馬鍬(まぐは)に作鍬(さくぐは) 鋤(すき)よ鉈(なた)よ
平和の打ち物休まずうちて
日毎に戰ふ 懶惰(らんだ)の敵と
あまり聞き慣れぬ鉄鋼農機具の名称が並んでいます。
鍛冶屋の仕事は、「死の商人」ではなく、あくまで「平和の使い」であると。
戦うのは、 自身の懶惰(=なまけること)とはなんともうまい。
でも戦時中ということが歌詞に色濃く残っています。
慣用句で
蹈鞴を踏む(たたらをふむ)
(蹈鞴=足で踏んで風を送る大型のふいご)
【意味】 勢い余ってから足を踏む。
というのも1級頻出ですね。