・奇を衒( てら )った行動だ。
漢検協会 完全征服より
慣用句:一風変わったことをしてみせる。人の注意を惹く。
衒う:「照らふ」の意。輝くようにする。見せびらかす。ひけらかす。誇示する。
「奇を―・う」「才を―・う」
ゲン
う(る)、てら(う)、ひけ(らかす)
衒
【解字】形声。行+玄。音符の玄ゲンは、眩ゲンに通じ、くらますの意味。人の目をごまかして商品を実質以上にほめて歩くの意味を表す。
- てらう。自分自身をみせびらかす。才能などを世間に自己宣伝する。
- うる。歩きながら売る。
<新漢語林より>
「奇を衒う」はよく耳にするし使ったりもするけど、漢字ではあまり見たことがなかったような気がする。「てらう」という言葉は、戒めの意味も含めたマイナスイメージが付き纏う。でもそんな奇手・奇抜・奇想天外な発想も時と場合によっては、持て囃されたりするんだから紙一重だとも思う。
「衒う」は知らない人も多いかもしれないけれど、「女衒ゼゲン」ならお馴染みであろう。
女衒という職業は、時代小説でよく耳にする職業。江戸時代の遊女を斡旋する仲介人のことであるが、勿論現在においてもその名を変えてその職業は生き存えている。人類最古の職業といわれる遊女という商売が永遠に無くなることはないだろうし、そしてその需要が潰えることがない限り。NHKのクローズアップ現代では女衒という言葉を使わず、彼等の業界用語である「スカウト」という言葉を使って報道していたという。売春を援助交際、簡易な整形手術をプチ整形と言うのに似ている。所謂ネーミングというやつ。すること、している内容は全く変わらないのに、罪の意識を稀薄にさせ巧みに素人を誘き寄せる。
わたしが「女衒」とういう言葉に出会ったのは、ン十年前の高校2年生の時。阿佐田哲也が執筆した娯楽小説「麻雀放浪記」の登場人物で ”女衒の達” という着流しのやさぐれ雀士がいたから。女を売買する人だろうとは凡そ見当はついたけど、「衒」という字からは「街の玄人」を連想させ、”あまり深く詮索してくれるなよ” という雰囲気が字体から感じられた。まあ、ヤクザな世界だなと。
映画 麻雀放浪記より 女衒の達
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/ed/4b4e492c8b85fed61378a57b1cb241f4.jpg)
女衒で不思議に思ったのは、「女」を ゼ と読んでいること。
漢音なら ジョ、呉音なら ニョ だしね。
女衒の由来 <Wikipedia>
日本では、古くは女見といったことがあるらしい。「七七四草」には「女見の女を衒(う)るところより、女衒と書き、音読み転訛してゼゲンと呼ばれるに至れるならん」とある。女見は文字通り娼婦としての商品価値を見極める意で、その目利きの良い者を呼んだ。
なるほど、転訛なんですね。
女衒 ⇒ ジョゲン ⇒ ゼゲン
でも、やっぱり意味は「女を衒(ウ)る」こと。