空手バカなオヤジの日常

新潟の空手道場「空手道新武会」で稽古に励む、空手バカオヤジの徒然記

未来少年コナン その2

2020-06-22 11:51:25 | アニメ・特撮
5月3日(日)の深夜(正確には5月4日ですが…)、NHKで「未来少年コナン」の再放送が始まりました。
以前にも一度、このブログで「未来少年コナン」については書いたことがあるのですが、(こちら)「未来少年コナン」は、昭和53年(1978年)にNHKで放送されてアニメ番組です。演出(監督)を宮崎駿さん、作画監督を大塚康生さんが務め、私の中では、日本のテレビアニメ史上最高の作品であり、宮崎駿監督作品の中で、「ルパン三世カリオストロの城」「天空の城ラピュタ」と並ぶ、最高傑作のひとつだと思っています。

未来少年コナンについては、忘れられない思い出があります。
昭和53年(1978年)、私が高校2年から3年に進級する時の春休みに、未来少年コナンの製作真っ只中の「日本アニメーション」のスタジオを見学に行ったのです。今では信じられない話ですが、当時、事前に連絡して見学をお願いすると制作スタジオを見学することが出来たのです。

私にとって、人生初の一人旅でした。当時はまだ上越新幹線は開通していませんでしたし、鉄道もJRになる前、国鉄(日本国有鉄道)の時代でした。「とき」という特急列車で東京に向かいました。スマホなどない時代ですので、地図や時刻表を頼りに、事前に交通手段や経路を調べての旅です。約4時間列車に揺られ、上野駅で乗り換え、神奈川県川崎市へ。当時、川崎市に親戚がおり、そこに泊めてもらうことにしていたのです。事前に調べておいたおかげで、迷子になることもなく無事に親戚の家にたどり着くことが出来ました。

翌日、いよいよ日本アニメーションに向かいます。聖蹟桜ヶ丘という駅で降りて、しばらく歩いたところに、日本アニメーションのスタジオはありました。受付で見学に来た旨を告げると、すぐに2階の仕事場に案内してくださいました。仕事の邪魔になるようなことをしなければ、特に制限はなく、自由に見学することが出来ました。

仕事をされている方々は、私のような見学者には慣れているようで、全く気にすることなく各々仕事に没頭されていました。アニメーターの方や彩色の方の手元を、恐る恐るのぞき込んだりしても、怒られることもなく、見せてくださいました。

そんな中、すこし離れた席で仕事をされている方がいらっしゃったのですが、近づいてみると、なんと宮崎駿さんでした。当時、宮崎さんは、私のようなアニメ好きには有名でしたが、一般的にはまだ無名でした。恐る恐る背中越しに手元を見ようとしたら、「何だ?」といった感じで私の方を振り返り、「何だ、見学者か」といった感じでまた机に向かったことをはっきり覚えています。(「何だ?」とか「なんだ見学者か」というのは、私が感じたことで、宮崎さんは無言でした)

私が人生の中でアニメーションの制作現場を生で見たのは、この時が最初で最後でした。本当に夢のような、貴重な時間でした。

本物のアニメの制作現場に触れ、当時の私は「アニメーターになりたい。」という大それた夢に向かうことを決意したのでした。(このわずか数年後に、自身の心の弱さから、その夢からあっさり撤退してしまいましたが…)

帰り際、撮影済みのセル画を販売していることを知り、「未来少年コナン」のセル画2枚と「ペリーヌ物語」のセル画1枚を購入して帰路に就きました。現在、セル画は結構高額で売買されているようですが、当時日本アニメーションでは、見学に来たファンに撮影済みのセル画を販売していました。高校生の小遣いでも買える程度の値段(具体的にいくらだったかは明確に覚えていませんが、200~300円程度だったように思います。)でしたので、当時いかにアニメーションの社会的地位が低かったかの証明のように思います。

今や日本のアニメーションは、「クールジャパン」の代表格として、海外でも高い評価を受け、素晴らしい日本文化に成長しました。それはそれで素晴らしいことですが、私が幼かった頃、ワクワクと胸躍らせ、夢中になって観たようなアニメーション作品は、最近ほとんどなくなったように感じます。

私が幼かった頃、ワクワクと胸躍らせ、夢中になって観たアニメーション作品、それらは、昭和30年代から40年代にかけて、映画会社の東映が「東映まんがまつり」と銘打ち上映していた、長編アニメーション(当時アニメーションという言葉は一般には使われておらず、長編まんが映画と呼ばれていました。)「太陽の王子ホルスの大冒険」「長靴をはいた猫」「空飛ぶゆうれい船」「海底3万マイル」「どうぶつ宝島」「ちびっこレミと名犬カピ」といった作品、そして、東宝が「東宝チャンピオンまつり」と銘打ち上映していた作品「パンダコパンダ」「パンダコパンダ雨降りサーカス」といった作品です。ぜひ現代の子供たちにも観てほしい、名作ばかりです。もちろん、同じ時代にテレビで放映されていたTVアニメ(当時はテレビまんがと呼ばれていました。)にも、数多くの名作がありました。

これらの作品の魂を受け継いだのが、「未来少年コナン」であり、「未来少年コナン」という作品の魂を受け継いだのが、「ルパン三世カリオストロの城」であり、「天空の城ラピュタ」なのだと個人的には思っています。

「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」が大ヒットし、「アニメーションはティーンエイジャー向けの方が商売になる」と業界の方々が気づいて以降、、アニメーション業界はティーンエイジャーや更に上の年代向けアニメの制作に重点を置くようになり、結果的に子供向けのアニメーションは、あまり作られなくなったように感じます。私自身、「宇宙戦艦ヤマト」も「機動戦士ガンダム」も大好きですが、アニメの制作に携わっているクリエーターの皆様には、かつて宮崎駿監督が制作したような、幼い子供たちがワクワク、ドキドキと胸躍らせるようなアニメーション作品も、ぜひ制作していただきたいと願っています。


「愉しきかな 血湧き 肉躍る 漫画映画。」(天空の城ラピュタ公開時のキャッチフレーズ)

「~子供たちの心に語りかけたい~
古典的骨格を持つ冒険物語を、今日の言葉で語れないだろうか。
正義は方便になり、愛は遊びになり、夢が大量生産品になったこの時代だからこそ、無人島が消され、宇宙が食いつくされ、宝物が通貨に換算されてしまう時代だからこそ、少年が熱い想いで出発する物語を、発見や素晴らしい出会いを、希望を語る物語を子供達は待ちのぞんでいる。
自己犠牲や献身によってのみ獲得される絆について、何故、語ることをためらうのだろう。
子供達のてらいや、皮肉や諦めの皮膚の下のかくされている心へ、直に語りかける物語を心底つくりたい。」
(「天空の城ラピュタ」公開時のパンフレットに掲載された、宮崎駿監督のメッセージ)

日本アニメーション見学時に購入した未来少年コナンのセル画


未来少年コナンのムック本の数々


未来少年コナン第1話の絵コンテ本 アニメージュというアニメ専門誌のふろくです。
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