桜木紫乃の「硝子の葦」は私がこの数年の間に読んだ小説で最もすぐれた作品だと思っています。
圧倒的な筆力と構成力、極限まで削りとられた文章と選び抜かれた言葉。
作者が住む道東の街、釧路を舞台とした、ひりひりとした男女・親子間の愛憎を時に荒々しく時に静謐に描き切ったこの作品、読後しばらくその余韻で呆けてしまいました。
北海道を飛び出したくて今ここにいる私自身が、地元を舞台とした物語をずっと避けてきました。
「ホテルローヤル」で直木賞に輝く前から「桜木紫乃」は知っていましたが、昔の自分の心情を覗き込むようで、なにやら「怖さ」が先に立って、どうしても手に取ることのできなかった作家でした。
先週出張先で読む本がなくなりKIOSKでたまたま手にしたのが「ブルース」。
この釧路ロワール的物語が面白くて、この1週間の出張移動時間の暇つぶしに「風葬」「氷平線」「ラブレス」「無垢の領域」「凍原」「ターミナル」「ホテルロイヤル」等、10冊程読みました。どれも素晴らしい。
あ、これドラマ化されていますね。
原作に忠実である必要はありませんが、元が素晴らしいので、余りに異なる脚色ではなく、且つドラマとして腑に落ちるように作られていることを願います。