老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

どんどん膨らむ福島第1原発事故処理費用

2016年12月01日 20時28分57秒 | 原発関係
 今日からいよいよ12月。今年も後1ヶ月です。
少しは年末らしい記事をと思いましたが、ここ暫く原発絡みの記事を書いていないので、やはりこのブログらしく原発関連で12月をスタートします。

 『どんどん良くなる法華の太鼓』という言葉がありますが、福島第1原発の事故処理費用に関しては洒落にもならない“どんどん膨らむ”状態です。

◆確か2013年には賠償費用/除染費用/中間貯蔵施設建設関係を、それぞれ5.4/2.5/1.1兆円、計9兆円と設定して、
・国がいつでも現金に換えられる国債を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に渡す。
・東電は、同機構から必要な資金の交付を受け、賠償・除染に充当する。
・機構は、後に東電を含む電気事業会社から負担金を受取り、国に返済する。
という仕組みの中で、機構への資金交付の上限を9兆円と設定していたと思います。
  ※廃炉費用についてはこれとは別に、約2兆円と予想され、これは東電が単独で負担することになっていたはずです。

◆これらの費用はその後どんどんと膨らんでいるようで、最近の数字と整理して見ます。(単位:兆円)
項 目    H13年での見通し             最近の見通し額      備考
         (予想額)  (負担者)         (経産省の試算)
賠 償        5.4    東電・大手電力         8.0       ※
除 染        2.5    政府保有の東電株売却益    4.0~5.0 
               (不足分は東電など)     
中間貯蔵施設     1.1    電源開発促進税         1.1
 小 計       9.0                   13.1~14.1
廃 炉        2.0     東電             +数兆円    ※
 合 計       11兆円                   20兆円強
 即ち、13年度の見通しと比べて、総額は2倍近くになる予想です。
 これに伴い、備考欄に※印を付けた項目については、新電力にも負担させる案が浮上していますが、11月29日付の毎日新聞では、経産省は廃炉費用に関しては新電力の負担を見送る方針とのことです。
まだ全体像が決まらない状態では果してどうなるでしょうか

◆個人的に危惧するのは、額が変更されていない汚染物質の処分費用です。「中間貯蔵施設」が何を対象としたものかは不明ですが、
・汚染水は溜る一方でその浄化処理が予定よりかなり遅れていますし、また浄化処理後に残る放射性物質を含んだ「ゴミ」はその行き先や処分方法も未定で、仮置きされている状態です。
・更に、除染に伴う放射性物質を含んだ収集物の最終処理方法なども未定で、これらの最終処理を考慮すれば1.1兆円で収まるはずはないでしょう。
※ そもそも以前から何度も触れているように、原発関係の放射性廃棄物の最終処理方法・場所については、何も決まっていないのが日本の現状なのです。


 いずれにしても、現時点の経産省試算でも20兆円を超す費用が掛る訳で、これは今後も益々膨れ上がるでしょう。
20兆円といえばある程度規模の国の国家予算にも相当する金額で、東電の資産などではとてもカバーできる額ではなく、最終的には国からの資金(国民の税金)投入や、電力費の形で、いずれにしても国民が負う形にならざるを得ないでしょう。
 
 福島原発では、未だに8万人以上の人が元の居住地に帰れないままですし、原発事故の場合の処理に時間が掛ることと費用が莫大なものになることを目のあたりにして、国民の多くが原発継続を疑問に思うようになっています。
このような状況になっても、政府が脱原発に政策変更ができないのはなぜでしょうか???

 前にもふれたように小泉元首相は最近『脱原発』に方針を変えられ、あちこちの講演会で自分が首相時代に推進した原発は専門家の“安全・安心・クリーン”という説明を信じていたが、これは全くのウソだったので立場を変えたとされ,“過ちては改むるに憚る(ハバカル)こと勿れ”ということわざを引用されています。
今の政府に求められるのはこの姿勢ではないでしょうか。(まさ)