知らないこともありますので、勉強になります。ガラスを溶かす、古くなったのは効果なし。
https://hbol.jp/219493/2
コロナウィルス対策には、500ppmの次亜塩素酸ナトリウムでドアノブなどの滅菌ができると厚生労働省が公表しています*。この濃度はかなり高めですが、確実にコロナウィルスを破壊するにはこの程度の有効塩素濃度が必要という考えのようです。また吐瀉物や便器の消毒には1,000ppm(0.1%)の次亜塩素酸ナトリウムを推奨しています。これらの推奨値は、医療機関向けと全く変わりません。〈*“ウイルスは物についてもしばらく生存しているため、ドアの取っ手やノブ、ベッド柵にウイルスがついている可能性はあります。0.05%の次亜塩素酸ナトリウム(薄めた漂白剤)で拭いた後、水拭きするか、アルコールで拭きましょう。トイレや洗面所の清掃をこまめに行いましょう。清掃は、市販の家庭用洗剤を使用し、すすいだ後に、0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを含む家庭用消毒剤を使用します。” 出典:新型コロナウイルス感染症(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 脇田座長説明)厚生労働省〉
この有効塩素濃度500ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液というのはかなり強力な漂白、殺菌作用があり、あの頑強なノロウィルスでも破壊してしまいます。そして、衣服は脱色されてしまう恐れがあります。またアルカリ性なので、皮膚の弱い人は、ゴム手袋か使い捨て手袋の着用が必須です。
次亜塩素酸ナトリウム希釈液の具体的な作り方は、官公庁自治体のホームページで見ることができるのでそちらをご参照ください。筆者は、目黒区役所のホームページ*がいちばん見やすいと考えています。
〈*次亜塩素酸ナトリウム液の作り方 目黒区 0.1%と500ppmの処方がコロナウィルス向け〉
覚えておくと良いのは、ハイターのピンク色のキャップは25ミリリットル計量でき、ペットボトルのキャップは5ミリリットル計量できることです。
従って、500ppmの次亜塩素酸ナトリウム希釈液が欲しい場合は、ペットボトルのキャップ一杯のキッチンハイターを500ミリリットルペットボトル入りの水で薄めれば良いです。水は水道水で全く問題ありません。家庭・一般業務利用では、精製水の利用は全く無意味ですし、ミネラルウォーターの利用は好ましくありません。
【常用500ppm(0.05%)次亜塩素酸ナトリウム溶液の作り方】
●原料
1)キッチンハイターなどの5〜6%程度の次亜塩素酸ナトリウム溶液
(プライベートブランド等に3%など濃度の薄いものがあるので要注意、その場合は薬液を倍にする)
2)水道水(ミネラルウォーターやアルカリイオン水は好ましくない)
●道具
500ミリリットルペットボトル1本
●処方
水500ミリリットル(ペットボトル1本)に5ミリリットル(ペットボトルキャップ一杯)のキッチンハイターを混ぜる。
1%の次亜塩素酸水が欲しい場合は、ペットボトルのキャップ二杯のキッチンハイターを500ミリリットルペットボトル入りの水で薄めれば良いです。
日常利用は、500ppmでよいので、市販のキッチンハイター600ミリリットル入りから60リットルの消毒液が作れます。従って一月に2本(200円相当)もあれば十分です。
なお次亜塩素酸ナトリウムは、時間と共に分解して水と食塩になります。このため使用期限を守ってください。キッチンハイターの場合、製造後一年で有効塩素濃度はだいたい半分になり、三年後には1/3になります。次亜塩素酸ナトリウムは、高温と光で分解が進みます。従って希釈液は、冷暗所に保管してください。冷蔵庫に入れる必要はありません。遮光瓶が無い場合は、透明な瓶をアルミフォイルで包めば良いです。アルカリ性の物質は、ガラス瓶に入れないでください。アルカリは、ガラスを溶かします。
厳密には、製造後の劣化=分解に応じたキッチンハイターの推奨希釈量については、花王株式会社のホームページに詳しいです*。〈*花王株式会社 お問い合わせ 花王の塩素系漂白剤で、次亜塩素酸ナトリウム0.05%、0.1%の液は作れるの?〉
次亜塩素酸ナトリウム希釈液の使いかた
次亜塩素酸ナトリウム希釈液は、その極めて強い酸化力から医療機関でも使われています。水回りをはじめとして、様々なものの消毒に使われますが、強力であるが故に注意すべき点も多いです。
1)人体には使えない
次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリのため手指消毒など人体には使えません。
2)強力な漂白力がある
次亜塩素酸ナトリウムは、極めて強力な漂白剤であるために衣服などに付着すると脱色してしまいます。
3)金属を侵すことがある
次亜塩素酸ナトリウムは、強アルカリでありかつ酸化剤であるために金属を強く侵すことがあります。取っ手やドアノブの消毒に用いたあとは、必ず水拭きで取り除いてください。
筆者は学生時代にガールフレンドの指輪が酸化で汚くなったときハイターで再処理したところますます酷くなり、立場が危うくなったことがあります。
4)メラミン樹脂を侵す
次亜塩素酸ナトリウムは、メラミン樹脂を強く侵します。メラミン樹脂は、黄ばむだけでなく強度も衰えます。
5)耐性菌がある
次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤には緑膿菌などが耐性をもちます。かつて平成初期までは、病院などに逆性石鹸や塩素系消毒薬または石炭酸を入れた手洗い洗面器がありましたが、これらは緑膿菌などの培養槽となり、最悪の院内感染源となるために全廃されました。
消毒薬は、都度使い捨てにしていちど何かと接触した薬液の再利用は絶対にしないでください。多剤耐性緑膿菌(MDRP)が蔓延すると、取り返しがつきません。
6)ガラスを侵す
強アルカリ性の物質は、ガラスを時間をかけてゆっくり侵します。アルカリ性の物質をガラス瓶に入れると時間が経過したのちに蓋が溶着して外れなくなります。
7)人体やペット等生体に絶対に取り込まない
次亜塩素酸類などの塩素酸類は、生物にたいへんに有害ですので食べる、飲む、吸い込む、注射するなどの体に取り入れる行為は絶対にしないでください。大統領がヨシと言っても厳禁です。
筆者は、スプレイボトル*に次亜塩素酸ナトリウム希釈液を入れて水回りでは日常的に使っています。たいへんに便利な一方で、次亜塩素酸ナトリウムは家庭内での誤飲事故の皇帝と言っても良いほどに誤飲事故が多く、不幸中の幸いで命を落とさずとも、とても苦しく辛いことになります。
子供やお年寄りなど家族の居る家では、絶対に混同、誤飲しないように厳重に管理と分離をしてください。やはりアルコールを使えば良い場合は、アルコールを使うことを強く強くお勧めします。また次亜塩素酸ナトリウムの恒常的噴霧を行う装置がありますが、耐性菌の問題、事故やものの破損の恐れがありますので、筆者はお勧めできません。塩素系消毒薬は、都度、使うべきところで必要な時のみお使いください。
〈*2020/05/22 21:38追記:スプレイでの消毒薬の運用について読者からの指摘がありましたが、塩素系消毒薬はあくまで毒劇物ですのでスプレイボトルでの運用についてメーカーではQ&A等にて禁止事項にしています。これは次の理由です。
1)かつて消毒薬の噴霧による空間洗浄がたいへんに流行ったが、効果がみられない反面、薬液吸引などによる害が多く有害無益であった
2)スプレイ内部のスプリングなど金属部品が薬液により破損し、思わぬ動作をすることがある
3)眼鏡や保護眼鏡未着用の場合、目に入り失明する可能性が増大する
従って、安全上の理由から花王株式会社はQ&Aにおいてスプレイボトルでの運用を禁止事項としています。(ハイター・スプレイタイプを使えという指示)
筆者は、この手の化学薬品の扱いを熟知していますが、その為に安全基準をフールプルーフ(foolproof) 「何も知らない人が使っても大丈夫なように証明されているもの」へ日常的においていません。本記事では、その点の齟齬が現れています。この点は今後の執筆への強い留意点とします。
従ってこの部分は、一般消費者向けにはスプレイボトルでなく「何らかのプラスチックボトル」にれることを強く推奨とここに注記します。その為に手に薬液が付着する可能性が激増し、別のリスクが大きく増大しますが、失明の可能性は最優先で回避すべきです。
また薬剤を使う際は、眼鏡、または保護眼鏡を着用することを強く推奨します。筆者は、反応事故で熱強酸を顔に浴びましたが、眼鏡のおかげで大事に至りませんでした。化学薬品は、小さなミスで大きな事故に至ることがあります。とくに目は厳重に保護してください。
なお容器は、誤飲防止のために絶対に飲食物と混同するようなラベルの無いものを使ってください。小分け瓶による誤認は誤飲事故の最大の原因となっています〉
また、何度も繰り返しますが、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素酸類を強酸(目安としてはpH3以下、クエン酸を含む)と混ぜると猛毒の塩素ガスが発生します。本邦でも「おうちに帰ったらママがトイレで死んでいた」などの悲惨な事故が多く発生しています。不幸中の幸いで死を免れても肺水腫などを生じて死ぬほど辛い目に遭います。
混ぜるな危険
絶対に忘れないでください。正しく使えば、コロナ禍においても生活がずいぶん楽になります。
手指消毒はどうすれば良いか
次亜塩素酸ナトリウムは、手指消毒には使えず、アルコールは入手できないという場合、どうすれば良いのでしょうか。基本は石鹸での手洗いですが、それが難しい場合も多くあります。そういった場合に「次亜塩素酸水」が使えるという説があります。
筆者は、平素の備蓄のおかげでアルコールを潤沢に使えるため、次亜塩素酸水を使ったことがありません。巷では、次亜塩素酸水は強力に効いて安全、次亜塩素酸水はニセ科学のインチキだという諸説が入り乱れています。
幸い、厚労省と経産省という異なる立場の官庁からコロナウィルス対策について次亜塩素酸水への見解が出ましたので次回から2度にわたり、それらを用いて次亜塩素酸水について解説します。
https://hbol.jp/218772?cx_clicks_art_mdl=4_title なぜアルコールが足りないのか? アルコール危機の陰に垣間見える経産省の深刻な不作為 略
他用途を融通すれば、とっくに需給は正常化していて当然です。そもそも全世界的な経済活動の停滞によって、化成品他の需要は大きく鈍ります。
ところがエタノールは、制度上の縛りがたいへんに多いのです。アルコール、煙草、塩は、世界共通で国が儲けるため、管理するために専売制度や税金で縛られています。
本邦も例外ではなく、財務省(国税庁)と経産省(かつてはNEDO)の縄張りで雁字搦めとなっています。更に医療用、消毒用アルコールは、薬機法他の制約があり、これは厚生労働省の縄張りです。
最も話をややこしくしているのがアルコールに賦課される税金で、国税庁が所轄する酒税と、経産省が所轄する「加算額」(賦課金、本稿では税として扱う)があります。課税率は、エタノール1リットルあたり1000円で、免税アルコールを含めて81万キロリットル(2018年)流通していますので、財務省と経産省がそれぞれの課税権益のために事業許可から製造、流通、販売、利用まで厳しく縛ることになります。実際、融通が非常に利きにくく、事業者を泣かせます。
要は、財務省(国税庁)、経産省、厚労省の重要な縄張り、利害が絡み合い、調整にたいへんに時間を要してきているのです。さすがに新型コロナ禍の緊急事態で中央省庁でもクラスターが発生するような状況ですから、省庁間でも調整が行われてはいます。これは、事の深刻さを少なくとも厚労省は、不十分ながら認識していることを意味します。略
このアルコール危機において、エチルアルコールの大部分を支配する経産省の姿が全く見えません。あの財務省ですら医療機関向けに緊急免税措置を実現したのに経産省は何もしていません。実際、” 経産省 手指消毒 アルコール”で検索しても、厚労省に便乗した宣伝一つ*しか出てきません。
〈*マスクや消毒液やトイレットペーパーの状況 ~不足を解消するために官民連携して対応中です~ 2020/05/07経済産業省。実際には厚労省の仕事のうえに、アルコールのラベルを見る限り、経産省所轄、酒税相当の加算額賦課品である〉
実は工業用のアルコールとして大量に流通している95%エタノール(不純物は水)の多くは、非課税です。これを一般アルコールと呼びます。アルコール事業法の対象となり、製造・輸入・販売・使用すべてにおいて経産省による許可が必要です。また、年に1度使用量など決められた項目の経産省への報告義務があります。また、許可を得るためには登録免許税1万5千円まで請求されます。手続きは煩雑で、たいへんに狭き門です。
この一般アルコールは、95%エタノール、5%水ですので、エタノール自体の毒性を除けば人体に影響ありません。無水アルコールのようにペンタンなどの有機溶媒を添加していませんので全く人体に問題ありません。
この一般アルコールは、一斗缶(18L)あたり18000円の「加算額」が無いためにたいへんに低廉です。概ね500mLあたり250円程度でしょう。流通経費をくわえても500mLあたり500円程度です。しかも膨大な量が国内に流通しています。
勿論、お酒への不正流用は防ぐべきですので、経産省と厚労省の連携で、一般アルコールに人体に無害である品質の2-プロパノール(IPA)を出荷時に5%混ぜれば良いのです。医療機関相手の場合は、IPAを需要家側で添加する形にして、写真と管理番号等でその証拠を報告させても良いでしょう。最善なのは、既存の消毒アルコールメーカーに協力を有償で求めるものです。出荷までやってもらえます。IPAを添加すればその苦みで酒類への転用はできませんし、共沸しますので蒸留によるIPAの分離は困難です。
経産省は、現在事実上官邸を支配する官庁で、首相補佐官も経産(出身)官僚です。略
厚労省と財務省は、官僚による省庁間調整でできることはやっていますが、経産省は何もやっていません。これは看過できないことです。
不織布マスクは、三月下旬には中国から船便で大海嘯(かいしょう)の如く日本に押し寄せていることを筆者ですら人づてに掴んでいました。輸送、荷役、通関などで20〜30日を要しますので四月中旬にはマスクが市中に大量流通することは自明で、筆者は3月末に五月連休明けには大きく値崩れが始まることまで予想できていました*。筆者は50枚3000円割れを5月末と予測していましたが、執筆時点で2500円まで値崩れしており、筆者の予測より事態の進行は早いのですが、これも正確に予測した人物が複数います。
〈*このため筆者は手持ちの50枚の備蓄で持ちこたえられると判断し、購入しなかった。但し使ったマスクは、乾式処理で滅菌・洗浄し、保管している〉略
一般アルコールの供給しかない
非課税のアルコールとしては、変性アルコールとよぶ、工業用途にIPAなどを混ぜたものがあります。気がつく人は、1月中に一斗缶で購入したようですが、現在は全社出荷停止です。消毒用につかわれてPL法沙汰になったらたまらないということでしょう。
変性アルコールはメタノール添加のものもあり、これは人体に有害ですが、95%エタノールに1-プロパノールや2-プロパノールを添加したものは、無害ですし、「消毒用アルコールIPA」とだいたい同じです。しかし、薬機法の認可を受けていませんので人体には使えません。いわゆる自己責任で使うにしても、工業用の薬品を人体に使うのは、成分表示にない不純物がもしもあれば危険です*。筆者は、特定アルコールのあまりの高さに変性アルコールを実験用途に導入したことがありますが、成分表からはあり得ない油膜が発生し、苦情多発ですぐに断念しました。
〈*工業用薬品を食べ物に使い、その不純物であるヒ素によって大規模食品公害事件を起こしたのが森永ヒ素ミルク事件である〉
従って、筆者は変性アルコールの消毒への流用はお勧めしません。もしも何かがあったら悲惨です。
エタノールは、水回り以外でコロナウィルスをノックアウトするには最高の消毒剤です。こうかはばつぐんで、毒性は低く、安全で、衣服や身の回り品などについてもだいたい無害です。水回りには次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイターを薄めたもの)でコロナウィルスをノックアウトできます。
エタノールと次亜塩素酸ナトリウムは、コロナウィルスと闘うために市民にとっても必須のアイテムです。それに酒税だ、「加算額(経産省)」だのとケチくさいことを言って流通を混乱させ、市民も事業者も医療、介護・福祉、運輸・輸送・流通、行政と言った現場もアルコールを求めて右往左往、転転売屋にっこりなど馬鹿らしくて仕方有りません。アルコールはそこここに膨大にあるのです。
ここは経産省がドーンと一般アルコールを解放すれば良いのです。厚労省も薬機法を迅速に適用して簡易的IPA添加を認めることで協力すれば、下がりに下がった市民からの評価も少しは回復するでしょう。