"...Sometimes I wish we never built this palace
But real love is never a waste of time..."
「僕らはあんなパレスは築かなければよかったって時々思う
でも、本当の愛は、決して時間の無駄なんかじゃない」―Sam Smith、Palaceより (黒川訳)
Apple社のクリスマスのCM、素敵ですね。
Sam SmithのPalaceというとても切ないラブソングに、Snow danceを踊る男女が見事にシンクロしています。はっと息をのむようなCMです。これはさすがAppleというところです。
しかし何といっても曲が良いです。この曲は、別れゆく恋人の曲で、二人で築き上げてきたものを、廃墟の宮殿に例えたものです。修復不能になった関係性で、争いは絶えず、まだ愛し合っているものの、別れざるを得なかったのでしょう(脚注1)。
私がこの曲を好きな理由はたくさんあるけれど、そのひとつがこの曲の結論、「本当の愛は、(たとえ破局になっても)決して時間の無駄なんかじゃない」というスタンスです。
この仕事をしていると、カップルセラピーにせよ、個人セラピーにせよ、本当にたくさんの苦痛に満ちた結婚生活、恋愛関係に日々向き合うことになります。それは時に本当に悲しいものです。かつては愛し合っていたふたりが、強く憎しみ合っていたり、ネガティブな関係性を経て離婚、失恋をした人が、「出会わなければよかった」、「長い時間を無駄にした」、というのをよく耳にします。
こうした時、本当にそうかな、本当に時間の無駄かな、本当に出会わなければよかったのかな、と、私はしばしば思います(脚注2)。お話を聞いていると、確かに深い問題のある関係性であったり、確かに極めて不本意で悲しい終わりであったりすることが少なくありません。でも、その人がそこまで傷ついているのは、その関係性が本物だったからだと思うのです。その人は、本気でその関係性を築いてそこに全力を尽くしていたと思うのです。それは、結果がどうであれ、本当の愛だと思いますし、決して無駄なことではないと思うのです。このように思えるようになるには時間が掛かるかもしれません。でも、不本意であったり、悲しい結末であっても、今はなかったことにしたいくらいに苦痛であっても、そこには確かに良い時もあったでしょうし、全否定しなくてもよいと思うのです。愛したという事実は、大切にしていいと思うのです。
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(脚注1)こういう時、私のカップルセラピーに来てくださればと思います。あるいは修復可能です)。
(脚注2)もちろんなかには、ひどいモラハラ、暴力や暴言などの被害に遭って、トラウマを負ってしまった方もおられますし、その出会いがその人にとって何のプラスにもなっていないという関係性も存在します。
そうならないためにサイコセラピーがある気がするので、身体が悪くなったら病院に行くのと同じくらい、恋愛や結婚でつまづいたらセラピーを受けるのが常識化してほしいです。