興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

認知のゆがみ その13 トンネル性視野 (Tunnel vision)

2014-03-10 | プチ臨床心理学

 さて、この特集も今回で最後となりました。今回紹介するトンネル性視野も、多くのひとが、知らず知らずにうちに経験している、私たちのこころにとってとても有害な認知のゆがみです。「トンネル性視野」という名前から、それが何なのか大体想像がつく方も多いのではないでしょうか。これは、たとえばあなたが晴れの日に車や電車などに乗っていて、その乗り物がトンネルに入ったときのことを思い浮かべると分かりやすいかと思います。徒歩でもよいです。

 もう、周りは真っ暗ですね。ずっと先に光が見えることもあれば、曲線を描いているため、その光すら見えない時間が続くかもしれません。そのとき、ひとは、当たり前ですが、暗闇の中にいます。そして、トンネルの壁のために、明るくてどこまでも開けた外の世界は見えません。また、トンネルの中があまりにも暗いので、そうした世界、可能性が存在していることすら忘れてしまっているかもしれません。

 このように、トンネルビジョンとは、あなたが何らかの状況下で、落ち込んでいたりして、トンネルのように視野が狭められ、特定のネガティブなものにだけ意識が向いてしまうこころの様子を指します。

 たとえば、最近、突然仕事を失ってしまった方が、お先真っ暗で、「仕事を失った。やっとありつけた仕事だったのに。やっと安定しはじめていたのに。もう駄目だ。自分には無理なんだ。どうしたってもうやっていけない」、と思ってしまうような状態です。

 しかしこの人は、その仕事に従事している間に経験した、同僚たちとの良い人間関係、人脈、かけがえのない経験、また、その中で身に着けた、確かな知識とスキル、次の仕事の可能性など、実は確かに存在しているものが、このトンネルによって見えなくなってしまっているのです。そして、その暗闇が自分の世界のように錯覚してしまうことです。

 でも待ってください。こうしたトンネルは、実際には存在しない、あなたが頭の中で作り上げたものです。あなたは実はトンネルの中になんかいません。人生は、いろいろな可能性で溢れているし、すべての物事には、悪い面もあれば、良い面もあります。ですから、今あなたが、「ああ、お先真っ暗」、「もう何にもしたくない」、「ああ死にたい」、と思ったら、あなたがこの精神のトンネルのなかに入ってしまっていることを思い出してください。その精神のトンネルの壁をぶち壊すのは、あなたであり、それは、「私は精神のトンネルの中にいる」、と気づくことから始まります。

 なかには、長くて曲がりくねったトンネルもあります。また、その壁が分厚い場合もあります。その場合も、トンネルに風穴を開けることは可能でしょう。そこから穴を広げていって脱出します。ひとりでそれが難しいときは、信頼できるひとに相談して、その人の全く別の視野を借りることもできます。私もあなたの脱出を助けられます。もし壁があまりにも分厚くて直接壊せなくても、私はあなたと、トンネルの終わりまで一緒に歩くことだってできます。私はあなたの道を照らすとても明るい懐中電灯を持っています。いくつもあります。水も非常食も。一緒に出口を見つけましょう。その出口は必ず存在するのです。それは私の臨床的、また、個人的な経験から、確かなことです。なんだか宣伝みたいになってしまいましたね。でも本当です。いずれにしても、私はここに何かを探しにやってきてくれるあなたをいつでも応援しています。私はいつでもここにいます。あなたの健闘を、幸せを、願っています。



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