忠臣蔵三連発のトリ。
長谷川一夫が大石内蔵助、浅野内頭匠が市川雷蔵。
市川雷蔵の浅野内匠頭は悲哀に満ちていて美しく
「こんな殿をいじめるなんて!」と仇討ちしたくなる魅力いっぱい。
憎まれ役、吉良上野介は滝沢修。
今更言うことでもないが、長谷川一夫という役者には華がある。
その存在から放たれる得も言われぬオーラがある。
「おのおのがた・・!」という声色はあまりにも有名。
この忠臣蔵はそんな長谷川一夫の魅力がいっぱいの娯楽作。
彼が演じる大石は、
泣き、笑い、苦悩する、ひとりの男としての人間味を強く感じさせる。
ストーリー運びはテンポ良く、一気に見せる。
岡野金右衛門に鶴田浩二。
彼のために図面を盗む棟梁の娘には若尾文子、
鶴田浩二は 松本白鸚版では病に倒れる毛利役で仇討ちに参加できなかった分、
この作品では十分暴れまわっていました。
実はこの映画では鶴田岡野が仇討ちの後の凱旋中に、
「そなたのおかげで仇討ちが出来た。礼を言うぞ!」と言い、
若尾文子扮するお鈴が涙ぐむ、大変いいシーンがあったのだ。
マツケン版では岡野無言。そういう演出でまた余韻が残るのかもしれないが
この映画見た後だっただけに、テレビの娘不憫だった~~
千坂兵部に小沢栄太郎、
千坂に派遣される女スパイに京マチ子。
大石を狙うも、「あまりの澄んだ美しい目に」敵ながらファンになってしまう。
長谷川大石は女間者をもとりこにするほど魅力的なのである。
大石りくに淡島千景、浮橋には小暮実千代、
阿久里に山本富士子という松本版に負けない綺麗どころが勢ぞろい。
りくを離縁するという大石に
碁石をぶつける、きりりとした母御役には東山千栄子。
堀部安兵衛に林成年、大石主税に川口浩など・・
清水一角は田崎潤が豪快に・・・
スター総出演。
今回テレビのマツケン版「忠臣蔵」には
この長谷川一夫版とほとんどそっくりの演出台詞場面が多かった。
たとえば、東下りの折に、
垣見五郎兵衛の名を語っていたところ、本物が現れるシーン。
テレビでは江守徹とマツケンの大きな顔見世勝負だったのだが、
長谷川版では垣見を中村鴈治郎 が演じていた。台詞も非常に似ていたが
演じる人が違うとまた味わいも異なる。侍同士の情が感じられ、泣けた場面です。
また、不在の兄の羽織を前に赤垣源蔵が挨拶する場面も
台詞ほとんど同じ。
この映画では勝新太郎が演じていた。
勝が演じる源蔵が神妙に羽織に向かって挨拶する姿は
とても愛嬌があって、目から水っ洟が出て止まらなくなった!!
思い出しても泣けてき申す。
仇討ちが終わって、娘婿の名を探して瓦版をひったくるように読む老人。
志村蕎がまことに味わい深く、
ユーモラスに演じていて、ぐいぐいと引き込まれてしまった。
美術がまた凄い!
極彩色に彩られた遊郭は夢の中の御殿のよう。
松の廊下の美しさ。ふすま絵の見事さ。
討ち入りの殺陣はもちろん迫力があったが、
雪の吉良邸のなんと綺麗だったことか・・・!
松本版の格調高いセットも素晴らしかったが、
この映画もまた素晴らしいの一言。
そして、長谷川一夫がこの映画で一番生き生きして見えたのが、
「浮き様」と呼ばれて遊郭で酔いつぶれ、
花魁と踊り戯れる姿だった!
まさにはまり役、はまりシーン。艶のある大石!
江戸紫の頭巾をかぶり雪の中を歩く姿は
そのまんま美術手帖の絵のよう。
どの女優さんとのツーショットもさまになり、
さすが天下の二枚目といわれた長谷川一夫。
まさに千両役者!
このように華々しいスタアの存在は、
世の中をパアッと明るくしてくれただろう。
1958年 渡辺邦男監督作品 大映
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