俺は舞台俳優だ
自宅兼舞台で生活している
今度の作品は時代劇だ
水戸黄門的なやつを演じる
主役は俺の息子、主役のお供は息子の友人だ
これは俺の息子の初舞台のために俺が書いた台本だ
俺は主人公を襲う悪党の親玉役で出演する
本番が楽しみだ
そして舞台本番
緊張した面持ちで息子が登場する
物語が終盤に差し掛かったとき、ふと違和感を感じたが気にしないことにした
そろそろ俺の出番だ!
セットの裏から飛び出し、高らかにセリフを読み上げる
「慶次郎!ここで会ったが100年目、決着をつけて見せよう!!」
「のぞむところだ!おまえの悪事、さばいてみせよう!!」
ここで殺陣をして、お供二人が倒れて、一騎打ちという流れだ
カキィン! カキィン! ガッ! ギギギギギッ ブシュッ
「ぐわああああ!」
胸元に仕込んだ血糊を撒き散らして、お供一はここでやられる
「くそう!よくも!!」
ガキィン!
「100年早いわあああ!!」
ズパッ
「ぐ……無…念…」
バタリ
これで一騎打ちの舞台は整った
さぁ、斬りかかってこい、息子よ!
「よくも家来たちを!うおおおおおお!」
ガキィン!ガキィン!バシッ!
「ぐっ…」
息子の刀を叩き落とし、ラストを飾る準備とする
「覚悟ッ!」
ズバッ!!
「がはっ!!」
斬られて、ひざから崩れ落ちるふりをしていた
戻った時には、家族は居なかった
刀を握り締めたまま、俺は呆然としていた