えりも地区のゼニガタアザラシによる漁業被害軽減をめざす管理計画を検討する科学委員会が3日午前、札幌市でWEB会議を開き、モニタリング法に関する作業部会の報告、令和2年度事業の実施結果、令和3年度事業実施計画を協議した。
主催者を代表し、環境省北海道事務所の安田直人所長が「昨年は定置網の捕獲が過去最高値となったが、えりも地域のサケ漁は大変な不漁であり、地元の理解を得ながら第2期目の管理を進めたい」と挨拶した。
さっそく羽山伸一日本獣医生命科学大教授を座長にモニタリング方法に関する作業部会の検討状況が報告された。音波忌避装置は一時中断するが、引き続き情報収集を行う.ドローンによる生息調査の手法確立は今後、過去のデータも解析し、上陸数の調査をドローン主体に移行していく。漁業被害調査は、来年度に専門家からの意見を踏まえ作業部会での設計の詳細を詰め、再来年度から実施する。捕獲幼獣個体数の成獣個体数への換算割合は、当歳(幼獣)のみの捕獲では2倍の捕獲数が必要との解析結果が出たが、モニタリングの精度を上げ今後も毎年の捕獲目標50頭とする方針は変えない。その他、小林万里東京農業大教授からアザラシの上陸数が少なく、個体数の減少も懸念されることから、遺伝子による個体数推定と行動調査の提案があった。
昨年の捕獲実績は、86頭の計画に対し、定置網による44頭と刺し網による37頭、空気銃による3頭の計84頭。これに混獲の59頭、漂着6頭が捕獲されたが、うち2頭の成獣には発信器を付けて放流した。
令和3年度は、獲り残し2頭を加えた52頭を目安に捕獲を行うが、環境省は「昨年の定置網の捕獲が驚くほど多かったが、今年も同数程度獲れるか不透明」として定置網26頭、刺し網26頭を提案した。しかし、定置網による大型成獣を捕獲することが漁業被害の軽減につながると、春、秋の定置網で主に捕獲し、取り残しを翌年春の刺し網で獲るべきとの意見が多く、3月の地元協議会で漁業者らの意見を聞いて決定することになった。