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太平洋クロマグロ訴訟 札幌地裁が請求棄却 「大臣の広範な裁量の範囲」として原告の訴え認めず

2020-12-01 21:51:35 | ニュース

 留萌管内で沿岸クロマグロ漁に従事する漁業者9人が国、道を相手に「不当に漁業の権利を奪われた」として訴えていた裁判が2年の審理を経て27日午後から札幌地裁で判決が言い渡され、原告の訴えはすべて棄却された。

 805号法定で廣瀬孝裁判長は「原告らの請求をいずれも棄却する」「訴訟費用は原告らの負担とする」と主文を言い渡し、事実と理由を簡潔に説明した。

 それによると、平成27年から実施されたクロマグロ資源管理の第3管理期間中(平成29年9月〜10月)に道南の定置漁業が小型魚の漁獲枠を大幅に超える漁獲をしたため、国は第4管理期間(30〜31年)から超過分を都道府県単位に次年度漁獲枠から一括して差し引く対応をとった。そのため、留萌管内で一本釣りやはえ縄を操業する原告らは道の指示で操業を中断した上に、翌年から北海道の漁獲枠がわずか8.3㌧(実質ゼロ)に削減された。

 裁判では、国の違法性として①資源管理法、漁業法および水産資源保護法に基づく法的な措置をとらなかった②零細漁業者への配慮を怠った③法律上の明文規定がないのに超過差引を行ったことなどの認定が争われた。

 廣瀬裁判長は、漁獲可能量(TAC)の設定の時期は「農林水産大臣は広範な裁量に委ねられており、第3管理期間の始期(平成29年7月1日)の時点で法律に基づく採捕制限を行わなかったことは著しく不合理とはいえない」。また、「漁業者への減収対策となる漁業収入安定対策事業の内容に照らし、零細漁業者への配慮を何ら行わなかったとはいえない」。さらに「超過差引は資源管理法に基づく農林水産大臣の裁量の範囲内の措置」とし、道の違法性も「著しく不合理とはいえない」と訴えを退けた。

 その後に開かれた記者会見で、原告代表の高松幸彦氏は「行政寄りの判断で零細漁業者の訴えを切り捨てる判決。悔しい気持ちでいっぱいだ。この国は三権分立がないのかと言いたくなる。大臣の裁量で何でも押し切られるのであれば、12月1日から始まる新漁業法の漁業管理にも影響する」。原告の一人で子息の高松亮輔氏は「正直者が馬鹿を見る判決で納得がいかない。まったく非のない漁業者がなぜ連帯責任で漁業の権利を奪われるのか」と不当性を訴えた。伊東秀子弁護士は「国際法、国内法に書かれている採捕停止の措置を無視して原告の訴えを棄却した今回の判決は放置できない重大な問題を含んでいる」と述べた。

 道は「国や道の主張が認められたものと考えるが、結果は厳粛に受け止め、引き続き適切な資源管理に努める」とコメントした。



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