お別れもひそやかに

家族にも内緒にしていた秘密があります。

実は私、この1ケ月、誰にも内緒で小さな生き物を飼っていました。

ペット禁止の集合住宅で密かにこっそりと。

 

 

でも一昨日ついにというかとうとう終焉を迎えてしまいました・・・・・。

家族が増えたようにも思い始めていた矢先の出来事です。

ただただもうショック。

 

 

彼の存在に気付いた時には追い払おうかとも思ったのですが

思いのほかよく働いてくれるので見逃しているうち愛着が湧いてしまったのです。

 

家族の誰かが気づいて追い払うまでは・・・と思い見守っていました。

でも誰もちっとも気がつかない。

これはきっとこのままでいいんだよという神の思し召しと受け止めて

ここまできたのですが・・・・

 

 

 

彼はお風呂場の壊れた洗面台の片隅に糸を張っておりました。

紛れ込んでくる小さな飛び虫を食物連鎖の掟にしたがって

せっせと捕食なさっておいででした。

 

それなのに何が気に入らなかったのでしょう。

おとといの朝気付いた時にはもう姿を消したあとでした。

探しても探しても　どこにも見当たりません。

 

この1ケ月がなんだったのか、胸にぽっかり穴が開いたような気分です。

 

 

網の下にポロポロこぼれた食べ物の残骸を残して、関東の梅雨入りも

待たずに彼は去ったのでした。

 

 

 

どこかで元気にしているでしょうか。

ハングリースパイダー。

絹糸のように透明で細い足の美しい、小さくて華奢なひとりぼっちの孤独なクモでした。