2011年3月に東京電力の福島第一原発が津波で破壊され、放射性物質が周辺地域に拡散され、多くの人が終の棲家を追われることになった。そしてこの大事故の後、原発がテロに見舞われ、同様の大事故が発生した場合のことを考え、政府、有識者の間で議論されてきた。
また、国際的にも、テロによる大型航空機が衝突した場合のことを考え、原子炉を遠隔操作で冷却できるようなテロ対策の必要性が国際的にも強調されてきた。
そして、日本では「特定重大事故対処施設」というテロ対策施設の設置が電力会社に義務付けられた。これの設置期限は2015年の工事認可後5年以内と義務づけられている。つまり2020年。
このテロ対策施設は、原子炉建屋から100メートル以上離れた場所に新設し、制御室や発電機、原子炉に冷却水を送るポンプなどを備えることが義務付けられているそうで、1基で1000億円程度の建設費が必要で、電力会社にはかなりの負担であるらしい。が、原子力規制委員会は今年の4月、テロ対策施設の建設が設置期限に間に合わない場合は、原発の運転停止を求める方針を決めていた。
今、日本で稼働している原発は9基だそうだが、これら9基の原発すべてが、テロ対策施設の期限内設置がここにきて難しいことが明らかになってきた。そして各電力会社はそろって規制委員会に期限の延長を求めてきたとのこと。それに対して規制委員会は「工事が大掛かりになることは設計段階からわかっており、延長の理由にならない」と突っぱねたらしい。
こんな報道をある月刊誌で知ったのだが、日本国民は、津波によって原発が破壊された時の怖さを、目の当たりに見てきたのに、これら電力会社の姿勢は、少し甘すぎやしないかと思った。まだ、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とでも思っているようである。万が一、事故が起きた時の原発の怖さがわかっていないというか、それとも、万が一にもそんな事故は起きないし、テロもないと思っているのだろうか。
原発の怖さは、いったん事故が起きれば人力ではコントロールできなくなる、そういう危険なものだということをよくよく知らなければならないと思う。人類の科学は、まだまだ原子力を扱えるほど発達していないし、人間自身も、それを扱えるほど進化はしていないのである。
溜まっていく一方の放射性廃棄物(使用済み核燃料) の処分さえ、どうしていいのかわからないし、わからないことを知りながら、あとに生まれてくる人たちのことなど俺は知らないとばかりに、平気で原発を使い続けているのが今の人類である。とはいっても、私も原発から生まれるエネルギーのお世話になっているのであるから、そう悪くは言いたくないのだが。ただ、こんな大きな事故を再度経験するようなことがあったら、原因が何であるにしても、それは「大いなる恥」とあざ笑われても仕方がないと思う。