(昨日の記事からの続きです)
宮本延春(まさはる)さんは貧乏家庭に育ち、プレハブの家に住み、自転車も買ってもらえなかった。
中学を卒業後建築現場で働くことになったが、親方はすぐ怒るような人で、こういう人のもとで働いていても良いことはないというので、3年ぐらいで退職。最初にもらった賃金は7万円だったとのこと。
お母さんは15歳のとき、肝臓がんで他界し、父もまた18歳の時、他界、文字通り天涯孤独の身となりました。
その後、何歳の頃かわかりませんが、1ヶ月13円で過ごしたこともあるとのこと。その時何を食べたかというと、タンポポの葉を似て食べ、蛋白源としてアリを食べていたとのこと。強い風が吹けば吹っ飛びそうなプレハブ小屋に住み、自転車が欲しいので、廃品の中から壊れたパーツをかき集め、何とか自転車らしくして自転車の代用として使っていた。
そんな生活をしていたころ、誰かに誘われて、建築会社に正社員で雇われることになった。正社員だから健康保険付きで、「安心して風邪もひける」と嬉しかったらしい。そしてそこの親方か社長か知らないが、とても良い人だったらしい。宮本さんが毎日同じ服を着てくるので、
「洗濯しているか?」と聞かれ、
「雨が降ったとき、その雨水で選択している」と答え、
「風呂に入っているか?」と聞かれて、「雨が降ったとき・・・」と答えると、
その親方か社長は、
「うちの洗濯機を使え」「うちの風呂に入れ」「飯を食べに行こう」と何かと親切にしてくれたのこと。
社長が親切にしてくれるので、社長に喜んでもらいたいというので、一生懸命働いた。
そして23歳の時、「アインシュタイン・ロマン」というNHKで放送されたビデオを見た。そして「相対性理論」をもっとよく知りたいと思い、数学を勉強したいという気持ちがふつふつと湧き起こった。
(10年前の読売新聞の記事では、近くで働いている恋人がそのビデオを貸してくれたとのこと。そしてその恋人は記者のインタビュニュー答えて、「彼は“知恵の輪”をするする解く才能があったので、ひょっとしたらと思い、そのビデオを貸しました」と答えていた。)
そんなことで24歳になった宮本さんは定時制高校へ通うことになるが、そのためには、他の人より早く仕事を切り上げなければならず、社長はそれを許可するばかりでなく、時には学校への送り迎えもしてくれたとのことでした。
定時制高校へ通い始めて、宮本さんは「名古屋大学の物理学科」合格を目指すことになった。自分が毎日通うことができ、しかも物理学科があるのは、この大学しかなかったからだそうです。しかし、定時制高校の先生方は、まじめには受け取ってくれませんでした。なぜなら、定時制高校も長い歴史があるが、ここから国立大へ入学したものなど一人もなく、まして中学の成績がオール1ですから、それも無理はありませんでした。でも宮本さんは本気でした。
そして、一発で見事に希望通り、その名古屋大学に合格し、物理学科で学ぶようになったのでした。
ここまで話を進めた後、宮本さんは、「オール1でまったくやる気のなかった私が、なぜこのようにやる気になれたか?」ということに話が移りました。そして、人間の「欲求」について次の5段階があるという話をされた。
ピラミッド型の一番下に①生理的欲求があります。その上に ②安全の欲求 さらにその上に③所属と愛の欲求があり、その上には④評価欲求があり、一番上に⑤自己実現の欲求がある。
宮本さんの場合で言うと、新しく入社した会社の社長の親切で、生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、評価欲求も満たされ、それが最後の自己実現への欲求にまで進むことができた、と分析された。
次に、「評価欲求」には「自己評価」と「他者評価」があり、この2つは表裏一体の関係にあり、子供の場合、親の子供への接し方によって、子供の自己評価が変わってくる。だから親の接し方はとても大切だと話された。
そして、最後に「自己肯定感」について話された。この「自己肯定感」があると、ルールを守ろうという気持ち、思いやりの気持ち、そして学習意欲も湧いてくるのだそうだ。
では、子供たちの、「自己肯定感」を育くむにはどうすればいいか?
① Doing 子供の行動を評価してあげる。つまり、良いことを見つけて褒めてやる。
② Having どんな個性や特徴をもっているか。その個性、特徴を評価する。
③ Being 「在り方」ともいう。ここではDoingもHavingも何もなくても、ただ、あなたがいてくれるだけでよい、という気持ち。この気持ちが一番重要。
「ただ、あなたがいてくれるだけでいい」これが、子供、あるいは他に対する最大の評価である。
そして最後にはこうも言われた。
「あなたがあなたでいるかぎり、あなたは愛される存在だ」
最後まで読んでいいただき、心より感謝申し上げます。ありがとうございます。


【追記】
ある日、安倍総理大臣から宮本さんに「話を聞きたいから官邸へ来て欲しい」という電話があったとのこと。宮本さんは、いろいろしなければならないことがあって出かけられないので、総理の方からきてほしいというと、総理も忙しく「それはできない」とのことだったので、官邸へ出かけたとのことでした。
まあ、安倍総理も、少しは教育のことを心配しているんだなと思いました。
それから、先生は「話を聞かせてくれ」と言いますが、話を聞いて、真剣に対処してくれる先生か、いい加減のところでごまかす先生か、そういうことは子供たちにもちゃんとわかるそうです。そして、いい加減なところでごまかす先生にうっかりしゃべると、後で大変なことになる、ということも話をされていました。