母が夏を通り越して
三ヶ月ぶりに帰ってきた
まだ眠たそうだが
リハビリの成果か
歩行器ハンドルを両手に
落ちている新聞紙を蹴飛ばし
軽やかな足取り
そうだ
敬老の日に町内会からもらった
商品券で寿司を取ろう
二人はテーブルに三時方向に座り
テレビを付けて
さっさと食べはじめる
退院祝いだねと僕が言う
母は貪るように食べる
そんなに急いだら
つっかえるよー
あー、お腹いっぱい
残った寿司を母の箸が
僕の皿に移して
母は寝床に急ぐ
いつもの夜にまた戻れたね
僕は自分に言い聞かせて
電灯のスイッチを切った
今までのように
これからもそうであるように