写詩之日々

写真と詩を載せています。

手の思い

2018-11-21 18:11:56 | ポエム・写真


何もしていないときは

いつも手を握っている

ギュッと固く握りしめている

それは無意識のうちに


何かを離さないように

逃がさないように

飛んでいかないように


それとも

誰にも見せられない

触れられたくない

秘密があるから


どっちだろう


手はいつも緊張している

運命線はその中でからまっている

               1993.6「PHP」初出


姿勢

2018-11-20 18:20:00 | ポエム・写真

僕はいつも
前かがみになってしまう
パソコンや本に向かっていると
いつも身体が傾いてしまう

ラジオ体操をしてみても
やっぱり傾いてしまう
眼鏡も新調してみたが
変わらない

うしろへ寄りかかろうと思い
背もたれを高くした
習慣はなかなか直らない
また前かがみになった

外に出て
秋空を見上げた
うろこ雲だろうか
飛行機雲も見える


澄んでいる
その下にコスモス
流れている
揺れている

部屋にもどって
気を取り直して
また書きはじめた
今日見た
空や草花のことを書こうと思った
そして自分のことも
前かがみに気をつけながら


変身

2018-11-19 21:43:39 | ポエム・写真


筋肉は硬直し

ゆっくりと開いた手で

もみほぐす

ぼくの肩ではないような

ただ一部であるような


ふいに投げかける

助けてと何処へともなく

考えるほどに

動くほどに

鎖骨の窪みは深くなる


もう踊り方は習わない

動かない

ギュッと握って

引き裂いて

ちがう自分に変身するぞ


十分の一

2018-11-18 15:22:17 | ポエム・写真


君に話そうとしていることの

十分の一だけ

君と話そうと思う


なぜって

話したいことの全部を

話そうとしても

ふり返ると必ず

十分の一くらいしか

伝えられなくて

もどかしい思いばかりだったから


君と僕の口喧嘩や

あるいは僕が

一方的にまとめてしまって

お互いに気まずくなってしまったことは

何度もあったけどね


けれど気がついたのさ

僕たちの間には言葉が多すぎて

肝心なことが伝わっていなかったことを

言葉を繕うために

どうでもいい言葉ばかりが

行き交っていたことを


だから始めから

十分の一くらいを

話すつもりで

君に会えば

本当に伝えたいことだけを

選んで話せるのではないかと

そう考えたのさ


ただ話し好きの君には

物足りなくて

つまらなくて

退屈かもしれないけどね


そうしたら

二人で電車に乗って

初めての風景でも

無言で眺めに行こうじゃないか