写詩之日々

写真と詩を載せています。

二月抄録

2015-02-28 02:29:37 | ポエム・写真


ついにメールはなかったな

ついに電話はなかったな

ついに届けられなかったな


雪が少なくてよかったな

去年はまいったから

スコップは用意しておいたけど


風邪をひかなくてよかったな

年ごとに寒さがこたえるけど

ストーブとエアコンで電気代が心配だ


みかんとテレビとパソコン三昧

夜中のくしゃみは

うわさ話でもないだろうに


四週きっちり並んだ数字が

生まれかわろうとしている

トイレでつい踏んばった



架空

2015-02-27 23:55:48 | ポエム・写真


住みなれた部屋の片隅で

架空をころがした

いちばん欲しいものが

近づくと

気持ちとはうらはらに

拒んでしまうのはなぜ?


さりとて手に入らないと

地団駄をふみ

指をくわえて

うらめしそうに愚痴をこぼす

ドラマの悲劇を

ヒロインのようになぞっている


いったいなにが欲しいのか

自分でも気づかないまま

架空と現実を

ごちゃ混ぜにして

私はますます

身体をよじる


白い山

2015-02-25 18:32:49 | ポエム・写真


一線級の寒波が南下して

それでも私は日課の運動へと

坂道をのぼる

この辺りで山が白く映るのは

一年でもめったにない

父が旅だった日も

こんな冷たい風の吹く

春まだとおくにけぶる夜だった


山はさまざまな姿形を見せるが

私は立ち止まりもせず

目先のことばかりにこだわっている

季節の移ろいに目をそむけ

蒼白いディスプレイで

自我と称賛を追いかけている


やがて春が来たとき

私は胸を開けて迎えられるだろうか

あまりに無垢な

その真白き姿に

とまどうばかりか

逃げ去ってしまうかも知れない

素直になれないいじましさをかかえ


もうすぐ父の十三回忌が訪れる

(2015.2.19撮影)


トルソ

2015-02-23 18:29:56 | ポエム・写真


眠れない夜に

私は暗闇にわたしを映す

曲がった背骨が

中空で踊っている


ときが流れるのは

どこかへ向かっているのか

運ばれていくのか

どちらなのだろう


荒涼とした地図を

指先でなぞり

立ちつくした


たくさんの荷物をかかえて

背骨はますます

螺旋をえがく


トルソ(塊)をつくる

ひずんだ骨格は

堂々とした意志で

肉付けをしよう


おそれず ひるまず

未知をわたるために


二月の陽

2015-02-21 14:42:06 | ポエム・写真


感情は置き去られた

言葉のはしばしを追いかけて

いつわりの場所と時間を

かかえてしまった


しわがれた着衣や半焼けのトースト

つぶれた卵黄や体液のシミ

それらをカーテンで被って

季節の欠片など謳っている


水面の鏡は

いく体もの人形を沈めた

正直に話そう


私はここにいない

憧れが泳いでいる

斜光にゆれる水晶体