一月はひどかった
収支表をひらくと
食費代がかさんでいる
寿司 餅 蜜柑 焼き芋…
コレステロールが心配だ
けれど止められない
寒さに耐えるには
人のぬくもりよりも
食への貪欲だ
抜けおちた身体を横たえて
ぬくもりよりも現実だ
ながいながい冬の夜
あの山を登るにはカーブして
回り道をしながら
山頂にたどり着くの
源流をたどって
指先は分け入るように
遡上した
ここはどこだろう?
ナビゲーションは位置を示しても
過去まで見はるかせない
どこかにあるはずだ
幼子のように歩きはじめた一滴が
答えは整っている
その問いかけを
ふたたび辿らなくてはならない
早朝の覚醒にざわつき
二度寝すると
気がつけば午後の二時
おそい昼食
よじれた時間と肉体に
どう向き合うべきか
暮れていると
冬の陽は
上がりの照射をいっそう鮮明に
樹枝の身をあらわにする
立ち向かうための意志に
ならぶのは垂線いくつもの
天を射し
ゆれては刺し
三百六十五日のはじまり
冷えこんだ食卓
曇っています
配達された年賀状は
とどかない人が気になり
駅伝走者
ふりしぼっています
心配が宙に浮かんでは消え
でも
目覚めと眠りが
つまずかずにくり返されるのなら
今日一日の
変わらない時間が
とても静かです
榛名山がよく見えるから
店名を”ハルミ”ってつけたのよ
雑貨屋の女性店主が
たばこのショーケース越しに
いつだったか話していたことがある
てっきり苗字につづく名前かと思っていたので
ぼくはそのとき意外に思ったものだ
昨秋九十九歳で亡くなったのを
おくやみ欄で知った
一望に見わたすと
専門病院や高齢者施設 鉄塔などが点在し
その切れ切れから
榛名山は見えるだけになった
店の看板は文字が
すこし欠けはじめたが
いまでも細々と開いている
坂道を登りきったあたりで
榛名山を眺めている女性がいる