写詩之日々

写真と詩を載せています。

不意

2017-12-28 18:33:29 | ポエム・写真


その風景は近くだった

あの曲がり角に入ったのは

ほんの気まぐれだった

気がつかなかったのではない

勇気がなかったのではない

その両方だ

近くにあって遠いところ

遠くに見えて近いところ

そんな場所をあちらこちらに

抱えているようだ



果汁物語

2017-12-26 16:58:36 | ポエム・写真


草原にこぼれていたミルクと

密林から届いたバナナ

二つをくっつけてミルクバナナ

それをお店に持っていったら

バナナミルク


なつかしい響きだ

白衣のお姉さんがよく

おやつに出してくれた

大人になっても

つい欲しくなってしまう


ミルクとバナナ

バナナとミルク

どっちが先か

バナナミルクは知らんぷり


冬至夜話

2017-12-21 18:31:16 | ポエム・写真


地軸の傾きに乗っかりながら

長い夜の入口に立つ

かじかんだ手に

数冊の本をかかえ

電熱線ストーブの前で

ひっそりと過ごしている

温まったココアは直に冷める

足先に気を配りながら

とおく果てない夢をみる


最北端に近いロングイェールビーンでは

今夜オーロラが見えるという

闇に光るのは人々の眼と

天空の神々

暗闇と宇宙の輝きが交わるときだ

だれかとだれかが

手を繋ぐだろう


一冊の本を読みかけて

僕はながい夢の途中で引き返す

真っ直ぐにならなくていい

傾いたまま手を合わせる

スタンドの灯りは

頷くように瞬いている


密室の問答

2017-12-13 02:13:33 | ポエム・写真


コルバン先生は

椅子をくるりと回転させて

じっと見据えた


君のように眠りたいときに眠り

描きたいときに描くのは

自由でもなく意思でもないのだよ

眠りたくないときにも眠り

描きたくないときにも描く

それが意思であり

継続であり

情熱でもあるのだよ


なるほどね

そうして人は意思に縛られ

自由を失っていくのだね

無意識のうちにね


君は神になるつもりかね

       (写真:鬼頭健吾Multiple Star展より。ハラミュージアムアーク2017.11)