認識

ひん曲がった線は
好まれない

ただ曲がっているならまだしも
ひん曲がっているとなると
それは野放図に近いのではないか
襲いかかる妖怪に似て
この世のものとは思えない
しかし一本の線
扱いに悩まされる

ひん曲がった線
だれが名付けたのか
だれが目撃したのか

冬の街では

引きこもった室から
冬まだ早い街に出る

都会の変わり様に
視線はうろつき
浮かれ気味とすこしの孤独

 

向かうところは
ネットで知った街頭演説会

 

「あなたたちを幸せにしたい！」

 

ふつうの言葉をもとめて
夢をたぐり
観衆の吐息とともに
ネオンにすべてが紛れていく

 

幸せよ 来い
みんなに 来い
俺に 来い

 

こころの中でくり返し
自らを励まし
ふたたび冬の街へ

小春日和

二人は

ふいに立ち止まり
壊れていく何かをみつめた

 

「わたし こういうの好きなの」

 

それぞれに
二人は壊れていく何かを
壊したい何かを 
抱えていた

 

過去 背景 道のり
いくつかの隔たりを
その日 ごくまれに
忘れていた時間だった

 

めずらしく黙って
眺め入った

 

ふとどちらかが
不安になり
行こうと手をとった

 

よく晴れ渡った
小春日和の午後であった