背すじの真っ直ぐな
坐像の貴女に
メスを入れる
美しい貴女に近づくために
どんな方法があるだろう
境界のある野辺は
いつだって華やか
貴女はどこを見ているのか
とがめることの出来ない
この世界で
男と女が
手を取りあって
仲睦まじく
歩いている
二人とも
中年風の装いであり
仲の良い夫婦
に伺えた
木の葉は
いくらか色づき
地面はカサコソの
ささやき
散策は日課だろう
会話は少なめ
お互いの歩幅は
知り尽くし
男と女は
付かず離れず
足どり軽やかに
消えていった
母の誕生日なので
卒寿の祝いに
どこか旅行でも連れて行ければ良いが
不具の私ではむずかしいので
ささやかにと思い
スーパーの刺身の盛り合わせで
夕食を飾る
二人であっという間に
たいらげた
その場所を目指しつづけて
走ったり
地図を広げたり
手紙なども送ってきたけれど
いざ辿り着いてみると
はてどうしたら良いものか
とたんに不安になる
あれは幻影だったのか
錯覚だったのか
手に入れてみると
あとずさりをし
へたり込んでしまう
想い焦がれてきたはずなのに
ぼくは一瞬にして
別人になってしまった
しかし あれだな
なんていうか
あっという間だったな
もしや自分がな
こんなところまで来るとはな
いいのかな
聞いてはいたけど
自分がなるとはな
じかんというのは早いものだな
このぶんだと
またあっという間だろうな
まわりは停年だものな
どうなんだろうな
もの憂いな
しかし あれだな
けっこう大丈夫なんかな
まだ まだな