電動車椅子がやって来た
嬉しくなって直線の道を突っ走った
アップダウンの坂道を飛び越えた
小石の悪路を撃破した
コントローラーに力が入る
風が頬を切り裂く
タイヤから何千年かの起伏が
はらわたに響いてくる
生きてるってことかな
隣町の女性に会いに行こう
悪友と未来の計画を企てに行こう
あいつはまだ寝たきりか
バッテリー残量はまだいっぱいだ
電動車椅子のパレードをしよう
ウィンドウ越しに眺める姿
田園を背景に
ひん曲がって
妙なプライドが
電柱の高さまで出っ張っている
私らしさとは何だろう
差異とかマイノリティとか
妙な言葉がまとわりついて
らしさを求めてきたが
それは虚構であった
森の茂みに
交通の行き交いに
紛れて溶けこんで
健全な物体に映るのを
いつか嬉々として見つけるだろう
濃いめの鉛筆で
秋と書く
なにも感慨はないのだけれど
秋の雲にどう答えたら良いのか
いまは戸惑ってしまう
風景とは
きっと風に乗ってやって来る
私の想いと重なり
だれも見たことのない風景が
私の中に広がっている
人はそれを秋にして
いよいよ華やぎの季節へ
背中が痛む
ハンドリムに滑りをまかせて
私の季節を乗り越えていく