写詩之日々

写真と詩を載せています。

コンタクト

2015-05-26 17:21:00 | ポエム・写真


男と女は不機嫌な関係

イエスとノーを交互にささやく

束縛されるのはいや

ぼくもあなたに束縛されている

生まれも性格もちがうのに

こうして逢っているのは

あなたの髪と手脚が

ぼくをくすぐるから


容姿や才知はご愛嬌

背骨のカーブをみせてくれ

面と面 形と形 醜さと醜さ

融解と融解 与えられた命

似たもの同士の生き物(物体)

どうやら気が合うらしい

さあ異界の道へと洒落こもうか

 
(2015.5.21 横野健一展より。高崎市美術館内、旧井上房一郎邸にて撮影)


主人公

2015-05-25 17:11:00 | ポエム・写真


夕暮れになると

紳士はベンチにもたれかかる

夜までのみじかい時間を

いとおしむように

過去を綴っている


あるときは誇張し

あるときは消去し

ひとつの物語を編んでいる

自慢そうにパイプを吹かし

これは傑作だと膝をたたいた

しかし結末のピリオドまでは打たれていない


ここであっと言わせるような

どんでん返しをおこそうって魂胆らしい

女房もせがれも同僚も

口をポッカリ空けたまま

そんな反応をまぶたに浮かべながら

とばりの降りた家に

一人もどっていく

子供たちは鬼ごっこをつづけている


孤独サークル

2015-05-22 18:41:55 | ポエム・写真


孤独が寄りあつまって

ヒソヒソ話をしている

聞き耳をたてると

ときおりこらえるように

笑い声がとどいてくる

そっとのぞき見ると

抱きあってなぐさめ合っている

ふだん孤独を吹聴してるわりに

みょうな光景で

彼らが孤独だとはとても思えない


しまいには踊りだし

「独りで夜に飲む酒は~♪」

などと合唱している

女性を口説きはじめる者もいる

お前もうたえうたえと絡んでくる

いったい彼らは

楽天家か破綻者ではないだろうか

孤独を隠れみのにしたサギ師のようなものだ

そうか!彼らはキツネだ


空き家

2015-05-06 22:59:44 | ポエム・写真


たしか蕎麦屋だったはずだ

柔和なマスターと

かいがいしい奥さん

それにまだ小さな娘さん


いつも席は空いていて

いつもテレビがついていて

灯りがテーブルの上に

ざらついていた


蕎麦の味はいちばんだった

あれからずいぶん経つが

どこへ越したのか


ガラスが割られ

いつしかペンキが一面に塗られた

人影のない空き家にも

いっとき団らんがあったはずだ


深夜のハンター

2015-05-04 17:40:54 | ポエム・写真


僕はハンター

夜中のフローリングに目を光らせて

うごめく物体に

一目散にスプレー照射

しくじってもハエ叩きで追走し

弱っているところへ

トドメの一撃


ゴキブリ ゲジゲジ

ムカデ 蜘蛛 

その他もろもろ

発音するのもゾッとする

手加減も同情もお構いなしさ

出会ったのが運の尽き


いよいよ活動期だからって

調子にのるなよ

君らの醜怪にどうしても馴染めないだけさ

差別なんかじゃないんだゾ

視野角度を拡げて

ビクビク ブルブル

眠らずに待っているんだゾ