今年は九四歳の母と
初めて
花見に行く約束をした
車窓から桜を眺める
七分咲きだと運転手はいう
桜を忘れるくらい
気がかりが多かった
平和が脅かされても
自然に影を落とす人間の暴利にも
桜は泰然としている
だが僕は
その桜をあまり好きになれない
憂うつになる
浮世離れした絢爛と
あっけなく散るその潔さ
羨望なのか嫉妬なのか
あるいはまったく別の
深層の感情かもしれないが
それを表す言葉が見つからない
母の骨折で
花見の約束は
とりあえず延期になった
病室の母はきっと
忘れているだろうけど
中止ではなく
延期だからね
来年に延期だから・・・