隊長が、観賞した「テレビ番組」を紹介するシリーズの第613回は、『ドラマ 「終りに見た街」』をお送りします。
『終りに見た街』は、テレビ朝日系列で、「開局65周年記念」と銘打ち、9月21日(土)の21時~ 22時54分に放送された単発ドラマです。放送時間:114分。
原作は、昨年亡くなられた、脚本家・小説作家・随筆家の山田太一が、昭和56年(1981)に発表した同名の小説。
「隊長のブログ」では、山田太一さん原作・脚本のドラマを、これで四本を紹介したことになります。詳細は、こちらの記事一覧をご参照下さい 。
本作は、テレビで三回・ラジオで一回にわたりドラマ化されたほか、舞台上演も行われています。
過去二回のドラマ化は、昭和57年(1982)、平成17年(2005)に、同じテレビ朝日で、山田太一さん自らが、脚本を担当されています。
約20年ぶりの今回は、脚本を務めたのは、宮藤官九郎。
宮藤官九郎さんの脚本・出演ドラマを、これまでに八作品を取り上げています。詳細は、こちらをご覧下さい 。
主演は、大泉洋。
大泉洋さんが主演する作品・番組を、これで19本を紹介したことになります。詳細は、こちらをご参照下さい 。
共演者:吉田羊、三田佳子、當真あみ、今泉雄土哉(子役)、神木隆之介、勝地涼、堤真一、橋爪功、西田敏行、奥智哉、ほか。
あらすじ:テレビ脚本家・田宮太一(大泉洋)は、代表作はないながらも細々と続けて20年。家庭では家族に疎まれつつも、しっかり者の妻・田宮ひかり(吉田羊)、思春期真っただ中の娘・田宮信子(當真あみ)、反抗期が始まった息子・田宮稔(今泉雄土哉)、そして認知症が出始めた母・田宮清子(三田佳子)と共に、ごくありふれた平穏な日常を暮らしていた。そんなある日、太一はプロデューサーの寺本真臣(勝地涼)から『終戦80周年記念スペシャルドラマ』の脚本を無茶ぶりされ、断り切れずに渋々引き受けることに。戦争当時を知らない太一は、寺本から送られてきた膨大な資料を片っ端から読みふけるが。。。
いつの間にか寝落ちしてしまった太一は明け方、衝撃音で目を覚ます。すると、自宅の外には森が一面に広がり、見たことのない光景が広がっていました。何が起きているのか理解できず混乱する太一は、外に確かめに行ったところ、そこが太平洋戦争真っただ中の昭和19年(1944)6月の世界であることを確信。太一たち家族は、タイムスリップしていたのです。 この受け入れがたい事実に太一一家が騒然としていると、太一の亡き父の戦友の甥・小島敏夫(堤真一)から電話がかかってきます。敏夫もまた、息子の小島新也(奥智哉)と出かけていたところ、昭和19年にタイムスリップしてしまったという。敏夫父子と合流した太一はやや安堵したのも束の間、すぐに戦時下の厳しい現実に直面していくことに。
兵士に度々怪しまれる太一たちは、誤魔化しながら何とかその場を凌ぐが、戦争に突き進む日本で生き延びるためには昭和19年の生活に順応せざるを得ませんでした。敏夫は持ち前の人当りの良さですぐに仕事を見つけて前向きに動き、ひかりも針仕事などできることを一生懸命やり始める。そんな中、なかなか現実を受け入れられずに抗っていた太一でしたが。。。
感想:エンターテインメント性を堅持しながら、原作者の反戦への思いを、見事に結実させた、宮藤官九郎さん始めとするスタッフ陣、キャストの皆様に拍手です。「テレビ開局65周年記念ドラマ」の冠に相応しい作品に仕上がっています。
恐ろしいと思ったのは、當真あみ、今泉雄土哉、奥智哉らが演じた、Z世代・α(アルファ)世代の子たちが、戦時中にタイムスリップすると、見事に“軍国少年・少女”に様変わりし、親を批判し始めたこと。
それと、ラストシーンの爆発で気お失った太一が目覚めると、片腕を失っていて、辺りは瓦礫の山で、バックには高層ビル群が見えています。近くで丸焦げになって倒れていた男に「いま何年ですか?」と尋ねると、男は「にせん…にじゅう…」とかすかに答えて、太一も息絶えるエンディングです。
まさに、今は平和を謳歌している日本ですが、このまま進むと近い将来に再び戦火にまみえるとの強いメッセージを感じました。
テレビマンの太一と寺本の前半の軽薄さ、同じテレビマンの脚本家・演出家の自虐ネタを見るようで、エンターテインメント性も充分に味わえました。
2024/10/18 追記:本ドラマで、農夫役を演じた西田敏行さんさんが、2024年10月17日に、東京都世田谷区の自宅で亡くなられました。享年・七十六歳。
心からのご冥福を、お祈りいたします。
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