隊長のブログ

元商社マン。趣味:ヒップホップダンス、ジャズダンス、日舞(新舞踊)、旅行、映画、スポーツ観戦。阪神タイガースのファン。

本と雑誌 56冊 『遊遊漢字学 中国には「鰯」がない』

2020年10月30日 | 本と雑誌

隊長が読んだ「本と雑誌 」を紹介するシリーズの第56冊目は、『遊遊漢字学 中国には(いわし)」がない』をお送りします。

 


日経新聞の日曜日朝刊最終面の名物コラム「遊遊漢字学」が、本書として発行されました。


著者の阿辻哲次(あつじ てつじ)氏は、1951年大阪府生まれ。2017年に京大を定年退職後、京都・祇園の漢字ミュージアムにて漢字文化に関する生涯学習事業に参画する。専門は中国文化史。


本書の冒頭で著者は、漢字をルーツに持つひらがなやカタカナが嫌いという日本人はいないのに、なぜ漢字が好き嫌いの対象になるのか、それは非常に便利な道具であることの裏返しではないか――との持論をのべ、日本語における漢字や漢字熟語の意味・用法の変遷とその背景を、1回1文字、もしくは1熟語・成語を例にわかりやすく述べていきます。


目次:

第一章 「北」の年の漢字
すききらいのある文字
「漢字」の「漢」とは?
「漢」はもともと川の名
「櫻」と二階の女
「陽春」――陽極まりて陰生ず
「花」は「華」の簡略字形だが…
ほか 

第二章 「災」の年の漢字
「孟母三遷」教育ママの元祖
「卍」を「まんじ」と読む理由
「豆」は食べるマメではなかった
権威をなぜ「泰斗」とよぶか
茶碗でメシ食う日本人
ほか

第三章 「令」の年の漢字
令和の「令」は「霊」のあて字
まずは「門」から入れ
流れに「枕」し詭弁ふるう
幸福は誠意を「奏」でる先に
《羊》と《大》を組み合わせると
ほか


どのコラムも読後ハッとさせられる気づきに満ちたコラムばかりですが、1話800字強というコンパクトさゆえ、1話=見開き2ページの落とし噺集のような本となり、読者は興味のある文字や熟語・成語から豊穣な漢字の海にこぎ出していくことができます。


中国上海に4年2ヵ月駐在していた隊長にとって、日中の文化の差異、使用されている漢字の違いには、以前から興味があり、これまでにも、『日本の「仕事の鬼」と中国の<酒鬼>』⇒ http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/ed3edee244cf65f41b5071bdc4bae8ea


『諺で考える日本人と中国人』⇒ http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/1f1dad80dfd1065eb243e2a08f6f25fc


『ん-日本語最後の謎に挑む』⇒ https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/4892698c255d0e922d4a5c8860453de3


など、同ジャンルと、比較文化論の本を読んできましたので、本書の発行を待ちわびていました。


本書のタイトルにもなっている「中国には「鰯」がない」の章ですが、「鰯」は、《魚》と《弱》を組み合わせ、「弱くてすぐ死ぬサカナ」という意味で日本で作られた国字(和製漢字)です。


現在の中国人は、イワシという魚を知っていますが、しかしその魚は、今の中国語では「沙丁」と書き、シャディーンと発音されます。すなわち、英語の“sardine”の音訳語であって、イワシを表す専用の漢字は、これまで中国で一度も作られたことがありません。


近年は別として、中国では海産物はいささか貧弱であって、古代の中国人はイワシを見たことがなかったと思われます。中国の古代文明が栄えたのは、黄河流域の内陸部であったので、海産魚の漢字が作られることがなかったとのこと。


従って、「鰹」、「鰤」、「鯛」、など寿司屋の湯飲みに書かれている魚ヘンの漢字のほどんどが、国字だそうです。


尚、『遊遊漢字学 中国には「鰯」がない』の発行は、日経BP日本経済新聞出版本部。発売日:2020年08月12日。価格:1,000円(税抜)。

 

 

==「本と雑誌」バックナンバー ==
http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/c/dc30502bb229b843454e38b8994f9be0

1~40冊  省略

41冊 2018/11/18『上海の中国人、安倍総理はみんな嫌いだけど8割は日本文化中毒!』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/caa4fb69631a759fae89a59a622711e8

42冊 2019/1/6  『SAKIMORI』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/3b8d6573a2a3ca238ffcf715cfc16e4f

43冊 2019/1/28 『演劇とはなにか』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/fb2b24afd8e949f1504e7d8a707b395e

44冊 2019/3/21 『林真理子「最終便に間に合えば」』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/4ed2c3cc4f363616dac47d66a9155226

45冊 2019/4/29 『五木寛之「金沢あかり坂」』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/63df50584ec0b5be41f86c16edc4f711

46冊 2019/6/2  『沢田研二と阿久悠、その時代』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/901be9ea36c2f3065af05e6dc904b6e2

47冊 2019/6/27 『男のきもの入門』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/a90f9c9c43226a05d7ea4ec327a0cdce

48冊 2019/9/17 『森鴎外「山椒大夫・高瀬舟」』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/32860159f6891be24292c3c88c96692a

49冊 2019/12/11『日本100名城公式ガイドブック』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/6e1840d977276b15115b18a3d42fa05a

50冊 2020/2/5  『虎とバット―阪神タイガースの社会人類学―』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/8f69b34551bad87fe268e663a7653cef

51冊 2020/4/4  『池波正太郎 「男の作法」』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/945a81aa7409b9ecefbf75361d165c6d

52冊 2020/6/25 『芥川竜之介紀行文集』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/dadeedca3e5e80fc1250d72fa6c18a80

53冊 2020/7/23 『池永陽「コンビニ・ララバイ」』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/0ded21bfc2a8aa3b71308f512f78b768

54冊 2020/7/30 『大人の御朱印 50にして天命を知る』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/9df94033c4eaeeb20caa1d1f65006681

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