えつこのマンマダイアリー

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クラシック入門 ~宮本文昭氏の講座(前編)~

2010年01月18日 | 音楽
 昨日、元オーボエ奏者 宮本文昭Wikipedia)氏の講座を稲城市iプラザで聴きました。ヴァイオリン奏者 宮本笑里(えみり)さんのお父上と言った方がわかりやすい方もいらっしゃるかもしれませんね。

 私の宮本氏との出会いは、NHK朝の連続テレビ小説「あすか」のテーマ曲『風笛』(かざぶえ)大島ミチル作曲)でした。初めて、オーボエという楽器の音色の美しさと、氏の演奏のすばらしさを知りました。10年も前のことです。
 その宮本氏が、「クラシック入門講座」というタイトルで、こんな田舎で講演してくれるとあって、これは聴き逃す手はないだろうと思ったのです。昨日は2回シリーズの前編でした。

 ご存知のように、宮本氏は演奏者から指揮者になりました。氏によると、演奏家は音楽に感動すると涙を流してしまうような、いわば情緒不安定な人間が多いとか。そして、演奏家時代は、好きなようにタクトを振って自分の世界に入れる指揮者が羨ましかったとのこと。でも、実際に指揮者になってみると、そうではないことがわかったそうです。タクトを振りながらも、頭では演奏者より1.5歩~3歩も先の演奏の準備をしていなければならないので、指揮者は冷静でなければいけないのだとか。

 講座の本題は、ブラームスの「交響曲第1番」でした。
 ベートーベンが第9を書いた後、当時の作曲家は誰も交響曲を書けなくなっていたとか。「あなたしか書ける人はいない。あなたが書くべし」とブラームスは言われていましたが、着想から書き終わるまで二十数年を要したとのこと(wikipediaでは21年とあります)。
 また、この曲は、オーボエ演奏者の間では「オーボエ協奏曲」と言われるほど、オーボエが活躍するのが特徴でもあるそうです。

 <第1楽章>
 第1楽章は、作曲に至るまでのそうした経緯や、彼の生い立ち等による複雑な人柄とが表われたような曲で、一言で言うと「情緒纒綿(てんめん)たる曲」だと宮本氏は言います。短調に始まり、長調で終わっていますが、実際に初めは作曲に迷いながらも、最後は勝利感を自分で味わっているように感じると。

 曲の冒頭は、交響曲にしては珍しく、半音階的旋律で始まります。それは当時としてはアバンギャルド、現代風なメロディーだったとか。しかも、弦楽器は半音ずつずっと上がっており、それが希望が先に見える期待感を表わしているように思えるのに対し、管楽器は逆に半音ずつずっと下がっており、それがどこか先行きが見えない不安感を表わしているように思えるのだとか。この両方が混在しているところに、この曲を作りながら感じているブラームスの複雑な気持ちが表われているように思うと、氏はとても興味深い考察を披露していました。

 また、何箇所か、耳で聞いたのとスコアを見たのとでは違う作り方がされているとか。つまり、耳で聞いたとおりに楽譜を起こしても、実際には違う楽譜なのだそうで、「どうしてこんな作り方をするんだろう?」と訝しく思わされる箇所がいくつかあるのだとか。この聴衆を裏切るような作り方はブラームスとベートーベンの特徴なのだそうです。

 <第2楽章>
 第2楽章には、きっちり暗譜していないと絶対に弾けないような、オーボエ奏者にとって演奏が難関な箇所があるそうです。そういう箇所は、歩きながら、あるいは、障害物を乗り越えながらでも吹けるように、何度も練習するのだとか。あれほどの世界的奏者でも、それだけの努力をしているのですね。
 そんな技術的に難解な場所でも、そこはオーボエ奏者にとっては聞かせどころの“美味しい”箇所でもあるのだそうです。オーボエはじわ~っと音を出すことができにくい楽器らしいですが、敢えてそういう技巧を見せたい箇所でもあるそうで、その音一つ出すことに、演奏者としてのこだわりや思い入れ、そしてプライドを持って臨んでいることが、宮本氏の熱弁からうかがえました。

 また、ピッコロとオーボエがオクターブ違いで同じ旋律を奏でる箇所があり、そこは音程がとりにくく、とても合わせにくい箇所なのだそうです。でも、2つの楽器の音色が合わさり、独特の音色になるのだとか。こんなことは、プロに解説してもらわなければ到底わからないことですね。
 
 また、ベートーベンの「運命」の出だしのリズムをわざと何箇所か用いていることからも、ベートーベンの交響曲を意識していることがうかがえるのだそうです。


 歌詞のない交響曲こそ、聞き手が自由に自分の想像をふくらませることができる音楽だと、氏は話を結ばれました。「頭で聞いたり、むずかしいことを考えるのではなく、ぜひ体感してください」と。

 
      ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ 

 宮本氏はシャイな感じで登場し、最初は伏し目がちに静かに話し始めましたが、次第に話が熱を帯び、少年のように目をキラキラさせて語っていました。音楽が、オーボエが、本当に好きな方なんだなと思いました。
 ブラームスの解説では、逐次CDを流したり止めたりしながら詳しく解説してくださり、わかりいやすいトークでした。冗談も随所に入れながらのとても楽しい語りで、質疑応答も含め、2時間半があっという間でした。3月に開かれる後半の講座が楽しみです(*^▽^*)

 なお、さらに詳しい内容が、著書『疾風怒濤のクラシック案内』で読めるそうです。そちらもどうぞ。

 私自身の備忘録を兼ねているので、冗長なレポートになりました。長々おつき合いくださり、ありがとうございました。この続きは2ヶ月後に!

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2 コメント

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Unknown (にりんそう)
2010-01-23 08:24:38
takuさま、おはようございます。
久し振りに入りました。
ごめんなさいご無沙汰です~。
宮本氏のオーボエ、そして娘さんの笑里さんのバイオリン、大ファンですよ~。癒されますね。
そしてブラームス、・・大好き!
ブラームスの音楽ってウィーンの秋を必ず思い浮かべます。
どんなに哀しみをたたえていようとも決して春の香りを失わないのがモーツアルト、
ブラームスは、それがどんな喜びに満ちたものであっても常に秋のかげりを帯びている・・・
そう何かの本で読んだことありました。
そうなんですよね。
かげりのある音楽だけれど、魅力的、
また人間的にも好きです。
クララシューマン夫人との付き合いなど、とっても興味ある人間のブラームスです。
交響曲1番大好きです。
素敵な講義にいかれてよかったですね。
返信する
にりんそうさんへ:後半の講座が楽しみ! (takuetsu@管理人)
2010-01-23 22:00:13
にりんそうさん、こちらへのコメントもありがとうございます! 音楽に造詣の深いにりんそうさんのこと、きっと読んでくださると思っていました(*^▽^*)

ブラームスの音楽は、宮本さんが言うように、複雑な人柄が影響しているのでしょうかね。
交響曲第1番は、シャルル・ミュンシュ指揮のパリ管弦楽団のが名盤だと何かで見ましたが、お聞きになったことあるかしら? カラヤン指揮のベルリンフィルか、小澤征爾指揮のサイトウ・キネン・オーケストラか...迷うところです。
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