今回は、こちらの過去記事で紹介した「よみうりランド」隣接のフラワーパーク「HANA・BIYORI」特集の後半記事です。結果的に2回続けて訪れることになりましたが、その理由はくだんの初回記事をご参照ください。前半記事では「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」以外の施設全体の様子を紹介しました。今回は、2022年から造園されているくだんのナチュラリスティックガーデンと、TVでもお馴染みの園芸王子こと三上真史さんのイベント(くだんのガーデンのガイドツアーやトークショー&サイン会)について紹介します。
gooアルバムを中心に紹介しますが、その前に、ナチュラリスティックガーデンと、くだんのガーデンのデザインを手がけたオランダ人のガーデンデザイナーPiet Oudolf(ピート・アウドルフ)氏について解説しておきます。
ナチュラリスティックガーデンとは、一口で言うと、野草を含めた宿根草を野原のように植え、芽吹きから冬枯れまで、植物の一生をあるがままに楽しむガーデンです。くだんのサイトによると、「装飾的で労力と資源を費やす従来の造園に対して疑問を抱いたガーデンデザイナーたちによるムーブメントが起こり」、その結果、一つのスタイルとして定着してきたのがナチュラリスティックガーデンです。ナチュラルな風情のイングリッシュガーデンでさえ、緻密に計算された造園技術と維持管理の手間とで成り立っていますものね。同じナチュラルでも、それとは一線を画す造園スタイルです。
「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」はアウドルフ氏が日本で最初に手がけたナチュラリスティックガーデンです。当施設のオフィシャルサイトから引用します:
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ナチュラリスティックな植栽の手法で、何年も生きる草花を、野原に見えるようにふんわりと植えています。新芽や葉の形、様々な色や形の花、穂が集める光と風、蝶や小鳥の羽ばたき、そして冬枯れの美しさ。季節とともに進む植物のコミュニティに、新しい発見があるかもしれません。
花盛りのガーデンの美しさは言うまでもありませんが、ここでは最盛期を過ぎた植物が落とす陰影やスケルトンの濃淡にまで、細心の注意が払われています。これは、従来の鮮やかな花に頼りすぎた園芸の世界には、革命的な出来事でした。
現代アートの世界でも一見美しく見えないものの中に「感情を揺さぶるもの」「朽ちる美しさ」を見ることがあります。アゥドルフ氏の作品は、意図的にこの魂に訴える植栽に挑んでおります。みなさまの心にもこの思いが届けば、幸いです。アゥドルフ氏が四季を通して紡ぐ独特な色彩や質感、豊かな芸術性をご堪能ください。
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アウドルフ氏のプロフィールについて、当施設のサイトから引用します:
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1944年オランダ・ハーレム生まれ。1982年、オランダ東部の小さな村ハメロに移り、宿根草ナーセリー(植物栽培園)を始める。以来、宿根草デザインに おいて先鋭的な手法とアイディアで注目される。代表作:米国ニューヨーク市のハイライン、バッテリーパーク、シカゴ市のルーリーガーデン、英国のオリンピックパーク、南西部ハウザーアンドワース、オランダのフリンダーホフ公園など。
映画:2018年 Five Seasons
著書:Planting the Natural Gardens
Planting:A New Perspective Planting the Oudolf Garden
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つい先日、氏のくだんの著書の翻訳版『ピート・アウドルフの庭づくり』(永村裕子翻訳)が日本で発刊されました。永村氏(西日本短期大学緑地環境学科非常勤講師)は「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」のヘッドガーデナーで、今回のイベントでガーデンツアーガイドを務めてくれました。居住地の熊本、職場の佐賀、アウドルフ氏の母国オランダを往ったり来たりしながら、ヘッドガーデナーを務めています。
前置きが長くなりましたm(__)m それでは、枚数は多くありませんが、アルバムをお楽しみいただけると幸いです。
秋のフラワーパーク ~「HANABIYORI」(2) 園芸王子と一緒に~
(★スマホで見る場合は、「PC版サイト」に設定してください。★画像は23枚あります。★バーの左下の<三角マーク>をクリックすると、スライドショーが始まります。手動で送るときは、画像上の左右にある<三角マーク>をクリックしてください。★バーの右下の<拡大/縮小ボタン>をクリックすると画像が大きくなり、同ボタン or Escキーで元の画面に戻ります。★コメントは全部にはついていません。コメントのフォントの大きさは、PC画面全体のフォント設定に比例します。★撮影日は2024年10月27日です。)
最後までご高覧お疲れさまでしたm(__)m
さて、イベントの内容を詳しくご紹介しましょう!(「これからが本題?!w(☆o◎)w」って呆れないでね(^^;)
<ピート・アウドルフガーデンツアー>
時間厳守の三上さん、開始時刻まで前説してくれました。マレーシアと日本と半々(or 前者が多いくらい)で生活しているとのこと、びっくりです。世界中で森林が減る中、マレーシアは例外で熱帯植物の森林が多く残っているそうで、元々熱帯植物に興味のある上、近年酷暑化が進んでいることもあり、熱帯植物について調査している由。
5歳のお子さんがいるので、よみうりランドの年間パスポートを所有。でも、いつもランドで遊ぶことになり、ここ「HANA・BIYORI」には来られていなかったので、「今回念願が叶って本当に嬉しい」と喜んでいました。
ツアー参加者は40名ほどだったでしょうか。三上さんの絶妙なガイドとサポートにより、ガーデンを巡りながら永村裕子氏が造園の工夫や苦労などについて30分にわたって解説してくれました。
ナチュラリスティックガーデンとは...
その土地に合った植物を、芽吹き→生長→開花→結実→冬枯れという植物の一生全体を通して楽しむガーデン、というのが彼女の解説でした。でも、現在、”ナチュラル”の定義やポリシーを巡って考え方が分かれており、業界?は揺れている状況だそうです。「その土地に合った植物を植えるというポリシーなら、日本のガーデンに外来種を入れるべきではない」という意見がある一方で、「そこまで厳密にこだわる必要はないのでは?」という意見もあるとか...(^^;
アウドルフ氏と連携しながら...
設計者のアウドルフ氏が細かく植栽の種類と数を指定しているので、現地で、あるいはリモートでと、永村氏はアウドルフ氏と細やかに連携をとりながら、造園と維持管理をしているそうです。
夏の酷暑をどう乗り切るか!
アウドルフ氏の母国である冷涼なオランダとここ数年酷暑化が進んでいる東京とでは気候がかなり違うので、アウドルフ氏の指定どおりに植栽すると、暑さでダメになってしまう植物が出てくるそうで...それが一番の悩み、苦労でもあり、工夫のしどころでもあるようです。特にこのガーデンは1日中日当たりがよい環境なので、なおさらだとか。
夏期が3ヶ月のオランダで5年ほど植え替えずにすむ宿根草が、半年ほども暑さの続く東京では寿命が短くなると。本来より早く芽吹き、生長も進み、早々と結実してしまうため、花期を本来の長さより伸ばさざるを得ないので、切り戻しを3回繰り返して花を咲かせ、秋まで持たせると。でも、その結果、寿命が半分ほどになってしまうのだとか。今後ますます暑さ対策が重要になるだろう、とのことでした。
それに関して三上さんは、近年はより耐暑性の高い植物が市場に多く出回るようになったとも言っていました。少し前までは耐寒性が問題にされていたのに、最近では耐暑性への配慮が高くなっているそうです。
土壌の違いも...(^^ゞ
オランダとは気候だけではなく土壌も違うわけで、アウドルフ氏指定の植物が東京の土壌に合わずにダメになることも...例えば、バーバスカム・ウェディングキャンドルはダメになった花の代わりに植えたものだとか。ここの土壌に合い、かつ本来の指定の花と雰囲気の似ているものを選んだ結果だそうです。
白絹病(しらきぬびょう)で土壌がダメに...(^^;
無農薬で育てているそうですが、ようやく3年目まできたフィリペンデュラ・カホメの一株に白絹病が発生すると瞬く間に周りに広がり、広範囲にダメになってしまったそうで...土壌消毒を余儀なくされたそうです。病害虫との闘いもガーデン作りの宿命ですね。
このガーデンでお薦めの花は?
三上さんの質問に対して挙がった名前は、ツルバキア(姿はニラと似ていて、匂いもニラの匂い)・アムソニア(初夏は花、夏は葉、秋は黄葉を楽しめる)・リモニウム(薄紫色の小さい花が咲いてこんもりと大きく広がる)・八重のシュウメイギク(アネモネ・クイーンシャーロット)(秋明菊は成長が遅いのが一般的だが、これは生長が速くて丈夫で育てやすい)です。
この中で一番好きな花は?
三上さんの質問に対し、「どの子も好きなんですけど...」と。「どの子」「この子」「あの子」と、まるで我が子のように花を呼ぶ様子が印象的でした。それだけどれも慈しみながら育てているのですね。
三上さんはその後予定されていたトークショーの準備と休憩のため、一旦退出。でも、永村氏はガーデンに残り、ツアー参加者の質問や相談に、時間ギリギリまで丁寧に応えてくれましたよ(^^)v
<三上真史さんのトークショー>
参加者は50名弱だったでしょうか。熱帯植物好きの三上さん、前説も熱帯植物のお話...(^^)v 植物の生命力を信じ、東京の冬でも外で管理してみたところ、一つもダメになったものがなかったと言っていました。もっと研究したくてマレーシアへ渡ったそうです。
本題は、寄せ植えについての基本テクニックと9号鉢を用いての実践でした。
花選びのコツ
主役・準主役・脇役・大御所というふうに分類して考えるとよい、鉢の大きさに合わせて株の数を増やすときは、準主役・脇役・大御所を増やせばよいと。大御所とは、全体の背景になるような、他の株より丈のあるリーフ類や、場合によっては低木だそうです。
花は、大きさや色だけではなく、いろいろな形を選ぶとよいということで、観客の好みも取り入れながら、計7種(7株)の花と葉物を選びました。
オージープランツ
オーストラリアなど南半球の乾燥した土地で育つ植物なので、使うときは土の水はけをよくしてね、とのこと。
万能な用土の作り方
市販の培養土でOKだけれども、水はけをより良くするため、赤玉土を1/3~半量加えると、どんな植物にも使える万能の用土になるそうです。
マレーシアの鉢植え事情
マレーシアでは鉢植えに鉢底石(水はけをよくするため)を使わないので売っていない由。代わりに、日本ではマルチングなどに使うヤシの繊維を使うのだとか。そうすれば、水はけもよい、防虫ネットも不要、自然に戻る、と良いことづくめだとか。
良い根の苗の見分け方
黒っぽい根は古く、新しい根は白い。苗鉢の用土全体に白い根が回っているものが生育の良いものだそうで、ポットと根鉢の隙間から覗くと見えることもあるとか。白い根が下の方にしかない場合は、長い間水が不足していた可能性があるとのこと。
用土を鉢に入れる
1.鉢の穴が大きい場合は、防虫ネットを底に敷いてから鉢底石を入れる。
2.既定量の肥料を載せる。※先に入れるのは、根が直接肥料に当たるのを防ぐため。
3.一番深い苗ポットの上端が鉢の上端と同じ高さになるように、そのポットの底の位置まで用土を入れる。
根鉢を崩す方法
根がポット一杯に張っている場合は、空気を入れるためと根に刺激を与えるために、根鉢を少し崩した方がよいとのこと。
根にはヒゲ根タイプと直根タイプとがあり、ヒゲ根タイプは細かい根が沢山出ているので、根鉢の中央に指を入れ、根鉢を回しながら軽く押しほぐすとよいそうです。直根タイプは中央に指を入れると根を傷めてしまうので、水の中で優しく洗い、土を落とすとよいとのこと。
また、根鉢の肩の土はコケなどが生えていたりするので、その場合は取り除き、枯れた下葉があればそれも取り除くように、とのこと。
植えつけ
主役→準主役→脇役→大御所の順に植えつけました。根が分けられる場合はいくつかに分け、散らして植えつけるのもOK。浅いポットの苗を植えるときは、足りない高さ分の用土を盛ってから。
植えつけ後は割り箸や指で土をつつき、隙間を埋めて土を鉢に充分行き渡らせてね、とのことでした。
時間厳守の三上さん、時間を気にしながら手も口も忙しく動かし、終始笑顔を絶やさず精力的にショーを盛り上げてくれました。TVでの爽やかで朗らかな好青年の印象そのもので、また、サービス精神旺盛のエンターテイナーでもあると感じました。花が好きで好きでたまらない様子もよく伝わってきましたよ。
実は、ガーデンツアーが始まる1時間前から現地でソワソワウロウロしていた私...打ち合わせ中の三上さんも遠くから拝見していましたが、本番とテンションが変わっていませんでした。
45分間のショーはあっという間に終わり、寄せ植えが完成しました!
ジニア(主役)・ビオラ&スウィートアリッサム(準主役)・ハツユキカズラ(脇役 根を3つに分けて3ヵ所に散らしました)・名前を失念した3株(大御所)の計7株が収められました(^^)v 補色同士のジニアのオレンジとビオラの紫が互いに引き立て合っていますね。品のある秋らしい寄せ植えになりました。さすが!
<三上真史さんのサイン会>
三上さんが故郷の燕三条市の刃物メーカーと共同開発して作ったハサミを購入(2,500円)、サインしてもらいました。四半世紀近く使ってきた我が家のハサミ、切れ味が鈍り切っていたのでちょうどよかった(^^)v 刃がカーブしているのが特徴です。女性としては大きい手の私の指でも4本入ります。手袋をしたら3本かな。三上さんの名前入り!(^^)v
三上さん、とっても気さくだった~(#^.^#)
こちらはおまけ...
2日前に訪れたときにちょこっとおしゃべりしたこの方、なんと埼玉県越谷からいらしたそうな...。しかも、私と同じく、1日目で三上さんのイベントについて知り、二度足を運んだとか...。熱心な同志がいるのですねぇ(^^; 三上さんと撮った写真をとっても嬉しそうに見せてくれました。
なお、過去に訪れたときの「HANA・BIYORI」の様子を次の過去記事で見ることができます。
「秋のフラワーパーク2020 ~よみうりランド『HANA・BIYORI』」~
「早春のフラワーガーデン2023 ~春の便り from HANA・BIYORI~」
「多摩の桜2023(3) ~よみうりランド&町田の墓苑~」
こちらの過去記事内で、群馬県吾妻郡中之条町の高地にある「中之条 花楽の里」について触れましたが、別のナチュラリスティックガーデンを紹介します。長野県須坂市にある「ガーデン ソイル」。更地から造園されて四半世紀、常に今も進化系のナチュラリスティックガーデンです。日本のそれの先駆け的ガーデンの一つではないでしょうか。ここにも来年以降訪れたいと思っています。備忘録を兼ねて紹介しました。
またまた長~い記事となりました(^^; 最後までご高覧くださり、誠にありがとうございましたm(__)m
三上さんに「インスタをフォローしてます」って言えばよかったな~のtakuetsu@管理人でした(^^ゞ