えつこのマンマダイアリー

♪東京の田舎でのスローライフ...病気とも仲良く...ありのままに、ユーモラスに......♪

第6章 ホルモン療法 44.

2007年11月17日 | 乳がん闘病記
44.
 朗らかな人の周りには、自然に人が集まる。暗くしていると、自然に人は離れて行く。だから私は、落ち込んでいるときでもそれを覆い隠し、無理して明るく振る舞おうとしてしまう。実際、父が難病を告げられた明くる日でも、何食わぬ顔で同級生のオフ会に幹事として参加していた。でも、それは自分自身を奮い立たせる行為であると同時に、自分を偽って無理している行為でもあることに、私は気づいて気づかぬふりをしていたのだ。

 そんなとき、私の病気を知る由もない従姉が、こんなことを囁いた。「子供たちが成人して、娘は独立して、ダンナは単身赴任で、今あなた天国でしょう?」と。彼女としては自分の印象に基づいて発した悪気のない、何気ない一言だったのだろうが、私には思いがけなく、またずしっと重く響いた。その言葉で初めて、自分が周りには幸せそのものに見えていることに私は気づいたのだ。実際の自分は、天国どころか地獄にいるかのような思いをしているのに……。
 自分の実像と虚像とのギャップに気づいたとき、私の中で何かがブチッと音を立てて切れた。誰にでもなく、何にでもなく、自分自身に切れたのだ。そして初めて目が覚めた。弱っている自分を良しとすることができないでいる自分に気づいたのだった。Pさんに「弱っている自分でもいいじゃないですか」と言われて救われたのは、きっとそのためだ。―そうか、弱っているのに無理して強がっていたら、自分を追い込むだけだ…無理して明るく振る舞っていても、本当には明るくなれないんだ……― 「弱っている自分でもいいじゃないですか」という言葉とともに、Pさんは私と一緒に沈んでくれたのだとも思った。彼女がそれを意図していたかいないかはわからないが、結果的にそうなっていた。
 そう思えたとき、肩の力がふっと抜け、今までの自分が急にばかばかしくなって苦笑いがこみ上げてきた。苦笑いはやがて苦い涙となり、しばらく流れるままにしていたら、吹っ切れたようになった。「えつこさん…そう、肩の力をお抜きなさい……あなたに一番必要なのは、そうすることなのよ………」 私の“内なる医師”がそう囁いてくれているようだった。


-------------- notice --------------
 これにて「第6章 ホルモン療法」が終わりです。ご愛読に心から感謝しております。
 次回より「第7章 楽観しつつ...」をお届けします。引き続きご愛読のほど、よろしくお願いいたします。
 なお、第7章を開始するまで少し時間をいただきます。忘れずに『えつこのマンマダイアリー ~ある日突然闘病者~』に戻ってきてくださいね


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3 コメント

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実像と虚像 (misa-piano)
2007-11-19 19:59:13
takuetsuさんだけじゃないですよ。みんな笑顔の向こうに何かしら悩みや問題をかかえていると思います。
自分のかかえている問題をみんなにに理解してもらおうと思うと、それを説明するのは大変!虚像と実像があってしかたがないのではと思います。嘘はいけないけれどね。虚像の自分も実はほんとの自分なのでは?同じ悩みや経験をを持った人でないと理解できないこともあるし・・・本当のことを話して、うまく伝わらなくて余計悲しくむなしくなることもあるし。自分をさらけ出せる人がひとりでもいたら心は楽になるのではないかしら・・・
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続き・・・です (mi)
2007-11-19 20:05:24
そういう意味で、takuetsuさんは自分の悩みを受け入れてくれる素晴らしい方がたくさん周りにおられるんだなあとうらやましくなるくらいです!
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misa-pianoさんへ:ありがとうございます... (takuetsu@管理人)
2007-11-19 21:29:07
misa-pianoさん、温かいコメントをありがとうございます。

虚像の自分も実はほんとの自分...確かにそうなのかもしれませんね。強く明るくありたいと願う自分と、実際にはそうなれない自分、両方とも自分ですものね。常に私たちは願望と現実のバランスをとりながら暮らしているのでしょう。願望と現実が一致しているときはハッピーですが、かけ離れるに従ってしんどくなる...でも、そんなときでも、現実を受け入れながら、辛抱強くいるしかないですよね。

おっしゃってくださったように、私の周りには私の現実の姿を見せられる人が少なからずいてくださるのかもしれません。ありがたいことです。misa-pianoさんとて、その一人だと思っていますよ。感謝しております。
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