昨年末のことで恐縮ですが、パリを拠点に活躍している建築家の田根 剛氏の展示会「未来の記憶 Archaeology of the Future Digging & Building」を「東京オペラシティ」の「アートギャラリー」(↓)で観てきました。
撮影可だったので、撮った画像を紹介します。
(★トップ画像以外の画像をクリックすると、大きい画像や別の画像が見られます。★リンクに別画像がある場合は、マウスオンするとその旨が表示されますが、ブラウザによっては読み込めない場合がありますm(__)m ★撮影日は2018年12月20日です。)
自然と文化の歴史と未来 ~田根 剛の建築の世界~
展示のタイトル「未来の記憶 Archaeology of the Future Digging & Building」の意味は、こちらの解説をご覧いただくとわかります:
(拡大してご覧ください)
そして、この展示全体を見終えた今、この展示タイトルが田根氏の建築に対する考え方やスタンスそのものだということがよくわかりました。
キーフレーズを拾うと…
「場所には必ず記憶があります。建築はその記憶を継承し、未来をつくることができるのです。」
「私はいつも考古学者のように遠い時間を遡り、場所の記憶を掘り起こすことからはじめます。サブタイトルの『Digging & Building』はそこから来ています。」
そして、この「場所の記憶を掘り起こす」という実際の作業の様子が、↓の展示コーナーで紹介されていました:
この掘り起こしの作業は、これから建築しようとするある場所における有形/無形の遺物/現物を調査したり、その場所と同じような環境にある他所の建築を調査したり、建築のキーとなるモチーフがあれば関連資料や史料を世界中から集めたりと、切り口はさまざまのようです。
その膨大な調査や研究を経て氏の想像力から生まれるインスピレーションを基に、建築が形造られていくのだろうと思います。
氏の言うところの“記憶”とは、“歴史”や“遺産”とも言い換えられるかもしれません。そして、“場所”とは、地球上の場所という“自然環境”であると同時に、ある一つの固有の地点という“風土”の一部分でもあるでしょう。さらに、人間によって造られた建築は“文化”でもあると思います。
ですので、氏にとっての建築とは、“ある場所における自然と文化の歴史を掘り起こし、その遺産をつなぎつつ新たな未来を創る”という意味なのではないかと、私は思いました。そして、自らの創造物を歴史上の通過点として客観視しているように感じました。自らの建築が将来の建築の“記憶”の一つとして認識されることを、強く意識していると申しますか…。氏の言うところの「未来の記憶」とは、そういう意味として捉えたらよいのではないかと思います。
そして、さまざまな切り口による丹念な掘り起こしをすることによって、“自然と人工物の最適な適合”を目指しているのではないでしょうか。その場所における建築に関する資料を古今東西にわたって調査することで、その自然環境に最適な建築物を創ろうとしているのだと思います。
かくして、田根氏の建築は独創性に溢れ、ユニークです。また、「そこでは今日の世界から忘れ去られ、失われ、消えてしまったものに遭遇し、それらを発見する驚きと喜びがあります」という言葉どおり、氏の建築には創造の喜び・自由な発想・遊び心が感じられます。そして、自由な発想やユニークさは、展示方法にも表われていました。
いくつか、氏の手がけた or 現在手がけている建築を紹介します。
[左] 博物館とその周辺が俯瞰できる地形模型 [右] 土地の高低がわかる等高線模型
[左] 長細い博物館の入口から見たところ
[右] 建物の中央辺りを側面から見た画像。おそらく、自然環境に即して造られているのではないかと…?
「新国立競技場」の「古墳スタジアム」(案)
最終的には採用されませんでしたが、最終選考に残った提案の一つです。
この「古墳スタジアム」のモデルを見て、私は一遍に引き込まれました。隈氏には申し訳ないけど、これが採用されればよかったのに…ブツブツ、モゴモゴ……(^^;
関連資料の展示方法もとても斬新でユニークですよね。
建築物ごとに動画もディスプレイされていましたが、床に平面に置かれていました。
等々力渓谷の家
大磯の家
京都の文化複合施設(進行中)
その他、実際に建てられたもの、進行中のもの、採用されなかったもの、すべてを含めた今までのプロジェクトを紹介するコーナー:
私の拙い画像と筆?ではとても氏の建築の世界観を表わすことはできませんが、とにかく魅力的な建築に溢れていて、私は展示を見ながら終始興奮、体が熱くなりました その魅力は、やはり、彼の建築のコンセプト「Digging & Building」と、彼自身が建築を楽しんでいることに由来していると感じます。そして、とてもスマートでスタイリッシュなすばらしい展示でした
撮影可だとは想像もせず、カメラを持参しなかったことが残念なtakuetsu@管理人でした(^^;