「おとうさん! おとうさん! ゴ、ゴ、ゴ、ゴゴキブリよーーーっ!」 可能な限り押し殺した声で叫ぶと、「うーーーーーん?」と、反対に振り向きざま、彼はやっと目を開けた。
その時だ。「バチバチバチッ!」 ゴキブリの目と夫の寝ぼけまなこが激突した。
「あーーーーーー」 夫の口があんぐり開き、そう言いたげだが、あまりのことに声が出ないらしい。
口をあんぐり開けたまま、卍型の手足を布団上シンクロ泳ぎ(技名:風車)のようにバタバタさせるだけだ。
―冷徹怜悧が売りのこの人も、咄嗟にこんな失態を見せることもあるんだわぁ!― 18年の結婚生活で知らされなかった彼の一面を見た気がした。
いや、事態はそれどころではない。彼をからかうのは敵を退治してからのことだ。
その時だ! 夫を嘲笑うかのように、ゴキブリはなんと一瞬にして彼の体の上を乗り越えた。「ぎょえぇーーーーーーーーーーーーっ!」 さすがの夫も夢ではないと事態を察し、遂に声を上げた。
その時だ。「バチバチバチッ!」 ゴキブリの目と夫の寝ぼけまなこが激突した。
「あーーーーーー」 夫の口があんぐり開き、そう言いたげだが、あまりのことに声が出ないらしい。
口をあんぐり開けたまま、卍型の手足を布団上シンクロ泳ぎ(技名:風車)のようにバタバタさせるだけだ。
―冷徹怜悧が売りのこの人も、咄嗟にこんな失態を見せることもあるんだわぁ!― 18年の結婚生活で知らされなかった彼の一面を見た気がした。
いや、事態はそれどころではない。彼をからかうのは敵を退治してからのことだ。
その時だ! 夫を嘲笑うかのように、ゴキブリはなんと一瞬にして彼の体の上を乗り越えた。「ぎょえぇーーーーーーーーーーーーっ!」 さすがの夫も夢ではないと事態を察し、遂に声を上げた。