「永遠の武士道」研究所所長 多久善郎ブログ

著書『先哲に学ぶ行動哲学』『永遠の武士道』『維新のこころ』並びに武士道、陽明学、明治維新史、人物論及び最近の論策を紹介。

「良知の言葉」第6回 「樹を種うる者は必ずその根を培い、徳を種うる者は必ずその心を養う。」 

2023-06-27 11:27:54 | 「良知」の言葉
第6回(令和5年6月27日)
「樹(き)を種(う)うる者は必ずその根を培い、徳を種うる者は必ずその心を養う。」 (『伝習録』上巻 116)

「樹木を植える者は必ずその根っ子を培養する。根が強く地に張ってこそ、茎や幹を支え、葉を茂らせ花を咲かせ実を生むのだ。その様に、人の根本とも言える心を充分に養う事によって徳は表れて来るのである。」

 王陽明は比喩が上手い。ここでは、木の生長に譬えて、人間の学びの在り方について諭している。この言葉の後で陽明は、「徳の盛ならんことを欲せば、必ず始めて学ぶ時においてかの外好を去れ。」と注意している。「外好」とは、「他への関心」の事を言う。それは、功名、富貴、文芸等自分を外面で飾る物を指している。王陽明は、「一念善を為さんとするの志を立てよ!」と叱咤する。そして、その志は「専一」でなければならないと言う。日々善を為さんとの努力と、その実践が積み重ねられる事によって、樹=徳は大きく生長出来るのである。

 わが国の有名な国学者である本居宣長は、初学者の学問の仕方について述べた『うひ山ぶみ(「初登山」の意)』の中で「詮ずるところ学問は、ただ年月長く倦(うま)ずおこたらずして、はげみつとむるぞ肝要」「すべて思ひくずをるるは、学問に大にきらふ事ぞかし。」と、学問にとっては「倦まず怠らず励み勉め続ける事」「くずおれる=途中で挫折する、事が大禁物」と、王陽明と同じ事を述べている。

 先日、屋久杉の事をテレビで解説していたが、巨大な花崗岩の塊で出来た地層に張り付いた苔に、屋久杉は根を張って水分を得てゆっくりと生長し、長年かけてあの巨大な杉が生み出されている、との事だった。巨木を支えているのは広大な根である。如何なる環境の下に置かれていても、根をしっかり張って栄養を吸収するなら、屋久杉の様な巨木に成り得るのである。私達も、置かれたそれぞれの環境に真正面から向き合って、倦まず弛まずに心を磨き続けた先に、「偉大なる徳」を備えた人格が磨き出されて来るのだと信じている。

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