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俺の知り合いの美容師オンナが、
同業美容師オトコと結婚して、
店を持った。
子供も産まれた。
けど、
従業員雇うカネがないから、
共働き。
やから、
むちゃ忙しい!!
そんな時、
いとこが美容師資格をとった。
赤毛が自慢の二十歳オンナやった。
そして、
この夫婦が忙しい時に、
よく、
手伝いに来た。
ある日、
常連の大学教授の奥さんが、
カットに来ていた。
ちょうどその日は、
夫婦そろって、
いきなり、
税務署から、
緊急呼び出しがあったので、
赤毛のいとこに、
バリカンをほんの少し使って、
後ろを綺麗に揃えるように指示して、
夫婦は、
税務署へと急いだ。
お客さんは、
無言で雑誌に目を通していたので、
赤毛のいとこも、
無言でバリカン当てようとした時、
足元に、
ゴキブリがいたので、
「アッ❗️」と驚いた‼️
そのはずみで、
お客さんの頭の中央を、
直線に深く刈り上げてしまった🙀
お客さんは、
雑誌に目を落としたまま、
「わたしはね、この雑誌から、顔を上げられないのよ。何かあなたが、最低のことやったみたいで、現実に向き合うのが恐ろしいの」と呟いた。
赤毛のいとこは、
ショックで声が出なかった。
お客は続けて言った。
「人にはね、許されない失敗と言うものがあるのよ。多分、あなた、今、自覚してるわね」
いとこは答えた。
「奥さまの言うとおりです。でも、あたしはただのお手伝いですし、仕事上のトラブルは、ここのオーナーが責任持ちます」
お客は「フフフ」と笑い、
「まるで人ごとね。観念の世界だわ。血と肉の無い空想の世界よ」
と言って、
目を開けて、
鏡に写った自分の髪を見た。
ふさふさ髪の中央に一本道が走っていた。
お客は言った。
「あなたは観念に逃げて、わたしは現実に向かい合うのね」
いとこは「申し訳ございません」と言った。
お客は軽く笑い、
「申し訳ございません?それで元通りになるのかしら?」
いとこは、
「お客様。いちおう、あたし、お詫び入れたんですから、このことは終わったも同然です」と、
言い返した。
お客はいとこをじっと見つめ、
「あなたはしあわせな人ね。いつも無責任でいられるから」
と言った。
いとこは、
「無責任も何も、これ以上、あたしに何を求めるんですか😠」と言い返してきた。
お客は立ち上がっていとこに向き合い、
「あなたを観念には逃がしません。わたしが現実を教えます」
いとこは、
「ほぉ!お教えくださって奥さま」とせせら笑った。
お客は、
「教えますとも。しでかしたコトの現実!責任の現実!!」と言って、
いとこにいきなり蹴りを入れて、
ひるんだ隙にバリカンを奪い、
いとこの自慢の赤毛の中央に、
一本道刈り上げした‼️
いとこは、
鏡で、
自分の一本道を見つめ、
涙声で、
「奥さま、これが現実なんですね?あたしは辛くて、耐えられません」と言った。
お客は答えた。
「世界はね、あなたの意思に反して有り続けるのよ」
いとこは、
「奥さま!あたしはどうしたらいいんですか?」
と問うと、
お客は、
「とりあえずは、二人で泣きましょう」言うて、
二人で爆泣きした😭😭‼️
夫婦が税務署から戻ってきたとき、
中央に一本道作った二人が爆泣きしているのを見て、
今度は、
ハローワークに行かなければならないことを悟った。
そして、
それが、
この美容師夫婦の現実やった。