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ロシアによるウクライナ侵攻から1カ月が過ぎた。情勢が進むにつれ、欧米諸国から大規模な軍事支援を受けたウクライナ軍の攻勢が顕著になり、ロシアはキエフ制圧の戦略目標をひとまず変更するなどプーチン政権の劣勢も目立つようになっている。
しかし、米国はロシアが依然として軍の縮小や交渉のテーブルに付く姿勢が見せないとして警戒を続けている。
一方で日本はウクライナにようにロシアから侵攻される恐れはあるだろうか。この1カ月間のウクライナ情勢を振り返ると、日本のウクライナ化を考えるにあたり2つのことが懸念されよう。
1つは米国の非介入主義だ。米国が世界の警察官から引退すると歴代の大統領が宣言して久しい。
オバマやバイデンとトランプは性格や国家ビジョン、価値観などが大きく違い、これまで互いを罵り合ってきたが、米国はもはや世界のあらゆる問題に首を突っ込まない、他国の紛争にできるだけ軍事関与しないという部分では違わない。
バイデン大統領はアフガニスタンからの米軍完全撤退を果たし(バイデンはオバマ政権で副大統領の時から撤退すべきと主張してきたが)、結局ロシアによるウクライナ侵攻でも直接軍事関与することはなかった。
バイデン政権が対ロシアで実行しているのは厳しい経済制裁とウクライナへの軍事支援で、これも長年貫かれる米国の非介入主義の一環だろう。無論、プーチン大統領が核の使用をちらつかせたことから、ウクライナで米軍とロシア軍が衝突すれば第3次世界大戦に発展する可能性が現実味を帯びることになるが、たとえその可能性をプーチン大統領が言及しなくても非介入主義は貫かれたであろう。
非介入主義に対する支持は米市民の間でも根強い。米CBSニュースなどが2月に明らかにした世論調査によると、「ロシアによるウクライナ侵攻で米国が積極的な役割を果たすべきか」との問いに対し、
「積極的な役割を果たすべきだ」と回答した人は全体の26パーセントに留まり、「最低限の役割に留めるべき」が52パーセント、「役割を果たすべきではない」が20パーセントと7割以上が否定的な見解を示した。
バイデン政権は支持率に苦しみ、今年11月の中間選挙でも勝利が危ぶまれており、こういった市民の意見に真剣に耳を傾けなければならない情勢だ。ウクライナの戦局を巡る動向は別として、米国の非介入主義が対外的拡張を進める中国の動きをいっそう加速化させることを我々は常に念頭に置く必要があろう。
もう1つは米国のインテリジェンス能力だ。米欧州軍のウォルターズ司令官は3月29日、侵攻当初米国はロシア軍の能力を過大評価し、ウクライナ軍の能力を過小評価し、首都キエフが数日以内に陥落すると予測していたと米軍のインテリジェンス能力に大きな問題があったと明らかにした。
アフガニスタンから米軍が撤退し、関係が良好ではないタリバンが実権を握ったことで、米国では対テロ分野の情報収集・分析能力も低下するとの懸念があるが、中国の核ミサイル戦略、人民解放軍の動きなどでも同様の懸念が現実となれば、台湾や尖閣など日本の安全保障が直接的に脅かされる問題となる。
ウクライナは陸で近隣諸国と接し、険しい山もないことから軍事的には侵攻しやすい。日本は島国でありウクライナ情勢はそのまま日本に当てはまるわけではない。
また、中国とロシアが対米共闘で日本本土に侵攻してくるシナリオは非現実的だろう。
しかし、上述のように、米国の非介入主義やインテリジェンス能力の低下は中国などの行動を誘発することから、米中対立の激化もあり、在日米軍基地への攻撃や離島奪取というシナリオは現実的問題として我々は考える必要があろう。
今年に入ってのウクライナ情勢は、日本にとって大きなシグナルとなっている。
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