光と影のつづれ織り

写真で綴る雑記帳

カミーユ・アンロ|蛇を踏む展を観て #2  東京オペラシティアートギャラリー

2021年01月17日 | アート 現代美術

カミーユ・アンロ|蛇を踏む展・・・生け花作品 <革命家でありながら花を愛することは可能か>

次の作品は

《光の領分》津島佑子

津島佑子も読んだことがない作家です。本の初版は1979年。

作品の概要(Webから)

”夫との別居に始まり、離婚に至る若い女と稚い娘の1年間。寄りつかない夫、男との性の夢、娘の不調、出会い頭の情事。

夫のいない若い女親のゆれ動き、融け出すような不安を、“短篇連作”という形でまとめ、第1回野間文芸新人賞を受賞した

津島佑子の初期代表作”

津島佑子が亡くなった時のニュースで、太宰治の次女というのを知りました。 

ウィキペディアによると、”父、兄、長男との死別から「不在の者」をモチーフに、人間関係における孤絶と連帯の実相を

追求し、高い評価を受けた。” とある。

生け花作品ですが、花材は椿とさんごみずき。 椿の花は無く、さんごみずきの枝も一部だけ赤くなって折れている、離別

で屈曲をイメージしてるのかな。

花器の形が面白いのですが、背景に溶け込んでしまって、形が活きないのが残念。

 

 

《永遠の愛を死の彼方に》 フランシスコ・ゴメス・デ・ケベード(1580-1645)

 スペイン文化の黄金時代を代表する作家、詩人。スペイン文学史上最大の存在感を持つ人物
の一人・・・とウィキペディアにある。 恥ずかしながら初耳の作家。

キャプションに書かれている

”灰となるも、意識は失われず、灰となるも愛は永遠に”・・・ワー、キザっぽくて、とても言

えない ・・・でも、一度ぐらいは言ってみたい

作品は石と、象の鼻のような花器

えっ、花は?・・・野暮かも。

 

 

 

 

《お菊さん》 ピエール・ロチ

うーん、なんと正統的な生け花、華やかで、気高い雰囲気。 ・・・でも花材は外国原産なので姿は和風でも

中身は西洋風という、西洋人から見たジャポニズムを揶揄したものか。

花器には、作家が描いたと思われる白いドローイングが意味ありげですが、よくわかりません。

花材のアルストロメリアは和名「百合水仙(ゆりずいせん)」
 
花言葉は、持続、未来への憧れ、エキゾチック、ピンク色:気配り

セイヨウサンザシはバラ科の落葉樹で、春に咲く花と秋に熟す実が美しい。
 花言葉は「華奢(きゃしゃ)」  「やわらかな気配り」「幸い」  「凛々しさ(りりしさ)」  「人の気持ちを引き立てる」
(キリストが処刑される際、セイヨウサンザシの冠をかぶっていたとされ、キリスト教圏においては神聖な樹木として保護されて
 きた歴史あり)

 

ピエール・ロチの「お菊さん」は、京都国立近代美術館 常設展(2019.9.8)で竹久夢二の絵を見て知りました。 

その箇所を以下に抜粋。

”「蘭燈」の楽譜の表紙絵です。 歌詞は

和蘭(おらんだ)屋敷に提灯つけば
ロテのお菊さんはいそいそと
羞恥草(はにかみぐさ)は窓の下
玉蟲色の長椅子に
やるせない袖打ちかけて
サミセン弾けばロテも泣く

フランスの作家ピエール・ロティが1893年に書いた「お菊夫人」をもとにした夢二の作詞。

ロティは、海軍士官として日本を訪れており、1885年には長崎に滞在し、現地妻を囲ったのだとか。

 

” 以上、抜粋終わり。

プッチーニの「蝶々夫人」を思い浮かべますが、「お菊夫人」の方が、10年ほど早く刊行されており

米国の作家ロングの「蝶々夫人」は、「お菊夫人」を原型に、より劇的にした作品のように思われます。

画家ゴッホも、「お菊夫人」を読んで、日本人の生活に感銘を受けたらしい。

 

 

次はエメ・セゼールの《奇跡の武器》

この作家も初耳で、調べると、フランスの植民地であったカリブ海のマルティニーク島(現在、フランスの海外県)出身で

黒人の詩人、評論家、劇作家、そして政治家。

詩集「奇跡の武器」は1946年に刊行されたシュルレアリスム詩集でシュルレアリスム宣言をしたアンドレ・ブルトンが序文

を書いている。

花材は扇椰子とプロテア

扇椰子は、太陽のフレアような葉。

プロテアは華やかでエキゾチックな花姿、南アフリカ原産の熱帯植物です。花言葉は、「自由自在」「華やかな期待」など。

ここではドライフラワーが使われているのかな。

アンロがキャプションに採り上げた ”私が、その反骨心と、握り拳と、縮れた髪をもって” を花材で表現してると思う。

 

 

 

《船を編む》 三浦しおん

原作については、「舟を編む」が映画になり、新聞の映画評を読んだだけで、何も知りませんでした。

概要をWebから引用

”出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』
の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。 定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる
老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸
を打つ2012年本屋大賞受賞作!”

キャプションの言葉 ”犬は動物の犬だけを意味する単語ではない”

なるほど、花材に雑草の”いぬたで”を使ってきましたね。でも、じゃのめ松に覆われてよくわからない。

たぶん、松の葉が言葉の大海を表し、裏に潜んだ意味をいぬたでが表している・・・と私は解釈。

この作品は、じゃのめ松の形、そして花器が渋くて、好きです。

 

 

 

 

《働き疲れて》チェーザレ・パヴェーゼ(1908-1950)

チェーザレ・パヴェーゼ(1908-1950)は、イタリアの詩人で小説家、文芸評論家、翻訳者。20世紀のイタリア文学

におけるネオリアリズモの代表的な作家の一人。・・・以上ウィキペディアからの引用。

作家も知らないし、詩集「働き疲れて」も全く知りませんし、Webで調べてもわかりません。

おまけにキャプションに書かれている言葉も理解しづらい・・・・調べ疲れて、生け花作品の印象だけを書きます。

セイヨウトチノキ、フランスではマロニエと呼ばれ、街路樹などに多い。この作品では葉も種も枯れ落ちて、寂しい姿。

粟も写真ではよくわからないのですが、濡れ手で粟の実を取った後かも。

花器の形は、兜のようで面白いけど、他と同じで、何かが足りない感じ。

 

 

 

 

《ゴッホの手紙 テオドル宛》 ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ

”ゴッホの手紙”という書物があるのは知らなかった。調べると、ゴッホの弟テオ宛の手紙が

約650通もあり、制作背景や、いろんな思索など、ゴッホの繊細な一面が窺われる書物のよ

うです。 私も借りるか買って読もうと思います。

で、生け花作品ですが、死や狂気を感じる。  一方、キャプションのゴッホの手紙の一節を読

と、繊細ですが健康などに気を遣う、温かい人柄を感じる。 アンロは、そうしたゴッホの

繊細な気性が、薄皮一枚で狂気に繋がっていることを表現したのか。

日本人が活ける生け花には、こういう作品は無いでしょうね。  

 

 

当初、さーっと生け花作品を紹介できると思ったのですが、思いのほか時間がかかっています。

で、今回はここまでにして、続きは次回にします。


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2 コメント

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越後美人さんへ (te-reo)
2021-01-18 21:42:50
日本人の美的感覚に合う生け花作品は、お菊さんと
舟を編む 、ですよね。 あと、次回紹介予定の源氏物語ぐらいかな。
カミューユ・アンロが現代アート作品として制作し
ているので、通常の生け花作品とは違うものになっています。 ただ、今回はいけばな草月流が協力しているので、一部の作品では、日本的感覚も色濃く出ているようです。
越後美人さんにとって、参考になったのであれば、紹介のし甲斐があったというもので、嬉しいです。

イヌタデは、作家が意図的に見えにくくしている
ようで、世阿弥の”秘すれば花”を意識しているの
かもしれない??
返信する
お菊さんと舟を編む (越後美人)
2021-01-18 19:55:34
花器も素敵ですが、活けた花も伸び伸びとしていて気持ちのよい姿ですね。
アリストロメリアと西洋サンザシは、なかなか思いつかない組み合わせで、
よい勉強になりました。

蛇の目松がまた変わっていますね。
初めてみました。
斑入りでパッと開いているところが魅力的ですね。
手に入ったら活けてみたい花材です。
イヌタデが見えないのが残念です。
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