ある夜

ある夜私は彫刻の仕事場で制作をしていました。
晴れて気持ちのいい日だったので戸を少し開けていたのですが、ふと気配を感じ手を止めて戸の方に目をやって思わずぎょっとしました。
近くでよく見るオス猫が戸の外から覗いていたのですが顔が試合後のボクサーのようにボロボロです。
彼はこの一帯のボス的存在でどこかで縄張り争いをしてきたばかりなのでしょう。室内の灯りにわずかに照らされ、暗闇にその顔が浮かんでいる様は幽霊のようでなかなかの迫力でした。


翌日からたまに徘徊していた別のオスの姿を見なくなったのでどうやらこの夜に勝負がついていたようです。闘いのあとの男の顔を見た気分です。
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