早春の花に黄色が多いのは何故?
こんなお題をいただいた。
確かに年明けから掲載した花は、ロウバイ、マンサク、フクジュソウ、そしてクロッカスの早咲き黄色系など黄色の花が多い。(気になったら書庫「その他ハーブ」を!)
同じ疑問を持っている識者がいた。(やれやれホッとした~)
『花はふしぎ』の著者 岩科 司さんだ。(講談社ブルーバックス2008年7月20日第一刷発行)
まず岩科さんの見解を著書から引用するとこうなる。
『なぜ春には黄色い花が多いのか? その理由についてはよくわかっていないが、黄色の花というのは比較的特定の動物との結びつきが少ない。昆虫の動きがまだ活発でなく、しかも種類・数も少ない早春にはあまり特定の昆虫と結びつかない方がよいのかもしれない。』
なるほど、悪環境のときはお得意先を絞り込まずに多元外交がいいのだろう。
しかしそれだけではなさそうだ。自己にとって有利なこともある。意訳すると・・・
『春は降り注ぐ紫外線が多く、紫外線は生物にとって有害だ。黄色の花は人間が眼に見える可視光のうち黄色を反射し(だから黄色に見える)、黄色の反対色を吸収する。黄色の反対色は紫でありその隣の人間には見えない紫外線をも吸収する。これで花を保護している。』という説もあげている。
そういえば、早春の花は、花が咲いてから葉がでるものが結構ある。自己防衛という線も捨てきれない。
環境が厳しい時は優先順位をしっかりし、まず子孫繁栄、次に葉を出し栄養を蓄積し来年の準備。理にかなった生き方だ。
花が色をもつようになったのは?
初期の花には花びら、葉から変化した花を保護する萼片がなかったようだ。
風などの偶然に頼って花粉を飛ばしていた(風媒花)と推測されていて、その後昆虫によって花粉が運ばれる虫媒花が出現したようだ。
さらにその後花びらや萼片を持つ花が誕生し、色を持った花が登場してきたと推測されている。化石には色がないので何色だったかはわかっていない。
花粉を運ぶ代償として昆虫の食糧となる花粉を与えていたが、花粉は生産が大変でコストが高いという。また、子孫繁栄に使ってもらう方がいいので食料となる部分を減らしたいということもあり、花粉よりも簡単に作れて植物のエネルギーを多消費しない蜜を作り出したという。(これは意外な展開となった。花も経済合理性で行動を選択している。義理とか人情での行動選択は間違いが多いのかもわからない。)
色を持つ花は昆虫をひきつけ子孫を残す効率がよいので、花と昆虫の共進化がはじまり、花色の増加と昆虫の種類の増加がともにおきたという。
このような歴史を知ると、昆虫に目立つ色、美味しいご褒美は、花粉をばらまくための植物の知恵の結晶でもあることがわかる。
人間がこの花の美しさに気づき再発見したのは16世紀頃からであり、平和な時代をもたらした果実のようだ。
早春の黄色系の花の知恵その他
・黄色の花の多くは上向きに咲く。蜜がやや深いところに隠されているので、口が短い昆虫には蜜が吸えない。
・よくやってくるのは、黄色が好きなハナアブ類、小型で口が短めのチョウの仲間。ハナアブは着陸がへたなので上向きでないとダメなようだ。
・ミツバチやそれよりも小型のハナバチも来て蜜や花粉を集める。
・人間には見えない紫外線の模様で蜜のありかを昆虫にそっと教えている花も多い。紫外線写真でとると、紫外線を反射するところは白く、吸収するところは黒く写り花の中心が黒ずむ。
・フクジュソウは、ハナアブにご褒美で提供する蜜がない。そのかわり、寒くて活動しにくい時期に身体を温めてあげる集光パラボナアンテナを持っている。温まった昆虫は活動的になり花粉を遠くに運ぶことになるから一石二鳥となる。
・マンサクの花の中心に当たるしべ部分が赤紫色なのは、パートナーのハエが大好きな腐肉の色に反応する事を利用しているという。
・(注)ハナアブは、アブの仲間ではなくハエの仲間だという。
最後に気になる紫外線の映像を擬似的に作ってみた。
昆虫からは、黄色が反射して明るく見え、吸収される色は暗く写り、マタ、蜜のありかを誘導する矢印のような印として見えるという。多分こんな風になっているようだ。
(写真)人間の目で見た黄色の花
(写真)昆虫の目から見た黄色の花(擬似)
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