tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』…88点とは

2023-03-09 20:51:59 | 映画-あ行

 全編、バカバカしさを押し通しながら、普遍的なテーマを押さえ、共感を呼ぶ。絵面も凝っているし、見応え十分。ストーリーに破綻もなく(そもそものシチュエーションが破綻に近いカオスだけど)、役者が揃い、緻密で、色んなモノが仕込まれている(っぽい)。何回も観れば、その度に何か発見がありそう。

 でももう観ないかなぁ。

 なぜなら、単純にあまり好みじゃなかった。何だか、少し前に観た、デイミアン・チャゼル監督の『バビロン』への思いと似ている。

 

 監督・脚本を手掛けた「ダニエルズ」は、ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートのコンビ。初長編作品は前作、『スイス・アーミー・マン』(2016、米)。同年のサンダンス映画祭で最優秀監督賞を受賞するなど話題となる。以降、それぞれ個人名義で長編作品、TV作品などを手掛け、長編第2作目が、こちら。通称『エブエブ』。

 

 『スイス・アーミー・マン』は、バカバカしさでは本作と肩を並べるけど、わりと好きだった。変な映画だけど、結構面白かった。設定自体が本当に素っ頓狂で、斬新だった。「ナニコレ」と思いつつ、引き込まれて、変な愛着が生まれ、最後には泣かされた。(心の中で)

 結構、楽しめた記憶がある。

 

 それはともかく、本作は、今年のアカデミー賞で10部門、11ノミネートされている。すごい。

 去年のゴールデングローブ賞では、最優秀主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門、ミシェル・ヨー)、最優秀助演男優賞(同部門、キー・ホイ・クァン)を受賞したことから、最多受賞の呼び声も高い。いつだっけ、アカデミー賞。3月12日(現地時間)。今、調べました。

 アカデミー賞に関して普段は割とどうでも良いのだけど、何故そんなに受けが良いのか、少し謎に思っていたら、岡田斗司夫氏の下のご意見が、腑に落ちた。

 

【エブエブ】この作品がアカデミー賞最多ノミネートした理由は●●だったから【岡田斗司夫/切り抜き】

 

 ビデオの内容は、前半は「88点の理由」。

 要するに、80点以上の私的映画リストに入っており、全然悪くない。どちらかと言うと良い。でも90点以上ではない。

 ・・・えー、同じ。(おこがましい)

 何故なら、「マルチバース」、「異界転生もの」は、日本人はアニメなどで見慣れているから、特に新鮮さもない。

 ・・・えーその通り。(おこがましいダブル)

 

 でも、本当にそう感じたのだ。マルチバース、パラレルワールド。ハリウッド映画だって結構使っているし、シチュエーションに目新しさがない分、バカバカしさが悪目立ちしてしまうのだ。いや、もう普通にさくっと移動したらいいじゃん、と投げやりな気分までせり上がってくる。テーマも共感は出来るが、特に新しくはない。

 ビデオ後半の内容は、タイトルの通り。要するに、本作は「ハリウッドにおける人種差別問題」への批判を内包している、その点が批評家達の心をつかんだのではないか。ということで、これは腑に落ちた。

 

 批評家は、そういうのを評価する責務があるのか知らんけど、私はあまり好みじゃなかった。

 「人種差別問題への批判」が嫌なのではなくて、どちらかと言えば、それならそれをストレートに語った映画が好きなのだ。語り口が好みじゃないと、何か90点以上は難しいわ。何を持ってして心を揺さぶられて良いのか、パスを受け止められなかった。

 

 例えば(唐突だけど)、クリント・イーストウッドが『クライ・マッチョ』で、簡素な小屋の中で、ただ奥さんとダンスをする。

 そういうシーンに、無限の何かを感じて、ぐっと来てしまう。投げられたかどうだか?なパスまで、自ら進んで受け取ってしまう。見えないボールが、ドストレートに胸を衝く。

 

 思えば、ダニエルズのお二人は36歳。デイミアン・チャゼル監督は38歳。

 まだ若いのだ。私の年齢は言えないけど(秘密めいた方がかっこいいと思ってる為・冗談です)、彼らより一回り位上である。年齢は関係ないとは言うけれど、年齢のせいで、目まぐるしさに乗っていけなかっただけなのか。体調が悪かっただけなのか。

 と言って、私は年齢差別をしているのか。それとも私が大人しい日本人だからか。人種差別か。ポリティカル・コレクトネスに引っ掛かりまくっているのか。カオスなのか。

 と、ダニエルズに言われちゃうのか。

 

 いや何だろう、そんなにファンタジーでなくちゃいけないのか?

 

 かと言って「無感動」「無共感」と思ってる訳でもないので、88点(笑)。『バビロン』と同じ。次回作も観よう。いや、エブエブももう一回観てみようかな。

 

 

 

 ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート、監督・脚本。2022年、139分、アメリカ。ミシェル・ヨー、ステファニー・スー、キー・ホイ・クァン。

 第80回ゴールデングローブ賞、最優秀主演女優賞(ヨー)、最優秀助演男優賞(クァン)、受賞。

 

主演のミシェル・ヨー↓色んな姿を見せてくれる。クァン氏と共に当たり役。

夫役のキー・ホイ・クァン↓『インディージョーンズ 魔宮の伝説』(1984)『グーニーズ』(1985)では子役。約30年振りに俳優復活。大好きだったな。

右(下)は前作。ポール・ダノ主演、ハリー・ポッターのダニエル・ラドクリフは死体役(!?)↓