tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『さらばウィリービンガム』…二度は見られない。

2023-03-25 20:20:06 | 映画-さ行

 死刑廃止による新たな量刑制度が始まった。それは遺族がその量刑を決めるというもの。最初に適用された囚人は、少女をレイプして殺害したウィリー・ビンガム。

 

 

 このホラー的短編映画の主役は、被害者の遺族である父かもしれない。

 彼に共感するのか、責めるのか。それでいいと肩を抱くのか、もうやめてくれと願うのか。

 ここでは、重犯罪者の気持ちは正直言ってどうでも良い。

 結論は出ず、私はただ見守るだけ。憎しみをいつかは手放したいと思うなら、私なら死刑の方が良いとも思った。それでも当事者になってみないと分からない。私はもっと冷酷で残酷で、憎しみに燃えているかもしれない。

 考えさせられ、結論の出ないこと。ただやっぱり、これはない。どこか酷薄な安易さを感じるから。

 

 

 マシュー・リチャーズ監督、2015年、12分、オーストラリア。

 原題は、『The Disappearance of Willie Bingham』(ウィリー・ビンガムの消滅)。

 

 12分49秒の問題作(YouTube)↓

An inmate is selected to undergo a gruesome new punishment. | The Disappearance of Willie Bingham

(日本語字幕は端末での画面操作でどうぞ。)

 


『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』…はばたけ、戦う乙女

2023-03-25 18:36:01 | 映画-は行

 阪元裕吾監督・脚本、2023年、101分、日本。アクション監督、園村健介。

 伊澤彩織、高石あかり、水石亜飛夢(あとむ)、中井友望、丞威(岩永ジョーイ)、濱田龍臣。

 前作で高校を卒業した主人公二人による、「最強殺し屋稼業」と「ゆるゆる同居生活」。相変わらずな二人を引き続き描く、シリーズ2作目。

 

 「シリーズ」と言ってしまったけど、実際まだまだ続きそうな感じ。

 メイン・キャラクターも揃った(揃えた)感じがあるし、今作は、今後のシリーズ化に向けての橋渡し的作品か?

 

 監督は、フェイクドキュメンタリー『最強殺し屋伝説国岡』(2019年)の阪元裕吾さん。今作から登場の『少女は卒業しない』の中井友望さんは最初気づかなかった。今後メインキャラの一人として定着するのかな。

 前作『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)の設定を引き継いでいるが、ストーリーは特に繋がっていないので、前作未見でも大丈夫。見ておいた方が、しょっぱなから共鳴、同調しやすいかもしれないけれど。

 

 

 さて主人公、「まひろ」と「ちさと」。この映画のヒットの核は、やっぱりこの二人なんだろう。

 この二人、実に良いコンビで、ストーリー上も、戦闘パフォーマンスから日常生活まで「阿吽の呼吸」の親友同士。小ネタで挟まれる二人の喧嘩は、殺し屋だけあってレベルが違う。

 一歩引いた観客目線で見ても、口下手でマイペースな努力家まひると、口が立ち向こう見ずな開拓者ちさとのやり取りは、コミカルで楽しく、二人でなくてはならない気持ちにさせてくれる。

 か弱そうな女の子が実は凄腕の殺し屋という、ありがちな設定ではあるが、スタントパフォーマー・伊澤彩織のリアルアクションはお腹にずしんと来るし、高石あかりのガン・アクション、七変化演技もパワーアップして心臓にずきゅん。(言い方が古い…)見所はやっぱり真剣シーンだ。

 

 実際はまひろ役の伊澤さんが6歳年上だそう。そうは感じさせず、うまくキャラクターの雰囲気にマッチして、個性となってるのも良いところ。

 

 

 今後作品のファンがもっともっと増えて、B級枠を一息に飛び越え、隅田川の橋を次々に爆破するサイコパス殺し屋集団(何ソレ)に立ち向かう二人。なんて大掛かりなアクション・シーンも是非見たい。

 よっしゃ、どかんと花火を上げてくれ!楽しみにしてる!

 

 

いかにもな二人の同居部屋↓ところどころに女子っぽくないトレーニンググッズも。

伊澤さんの肉弾戦はかっこよくてキレッキレ!↓前作よりさらにアクションが楽しい。

「殺し屋協会」に所属している二人↓武器は協会を通して買うのかな?どうでも良いか!

 

 

 


『シェーン』…父との会話

2023-03-25 00:43:15 | 映画-さ行

 去年の6月頃、『トップガン-マーヴェリック』に感銘を受けた私は、78歳と84歳の両親を「揺れる椅子」4DXスクリーンに招待した。

 前作『トップガン』も知らず、いぶかしげな表情の両親を、「絶対後悔しないから」と言ってシネコンへ連れて行った。その言い草は何だか詐欺師みたいだが、もちろん、自分としては親孝行のつもりなのだ。

 結果、彼らが楽しんだのか今一分からないけれど、自分はいたく満足した(笑)

 ちなみに母は映画が好き。ただしミニシアターに一人で出掛けはするが、シネコンには行かない。

 父の方は、映画館に行くことも映画を語ることもまれだった。そんな父が、「マーヴェリック」を観た後、この作品の話をし始めた。ただしモニョモニョと話し下手は相変わらずで。

 そんなことを最近思い出して、改めて西部劇『シェーン』を鑑賞してみた。

 

*************

 

 西部開拓時代のワイオミング州。別名、カウボーイ州。
 1889~93年のジョンソン群戦争を元に、ジャック・シェーファーによる原作を映画化。

 西部開拓も末期であり、滅び行く運命のガンマン。ヒーロー然としていながらも、私には少年のような憧れの眼差しを向ける事は困難で、銃を置き「強くたくましい男になれ」と言うシェーンの言葉にも、特別な感慨を感じることは出来なかった。

 流れ者シェーンは、物腰柔らかく礼儀正しい好人物であり、賢く、また闘いのプロである。もう一人のプロ、雇われガンマンが現れなければ、再び銃を取ることは無かっただろう。

 引退を夢見たガンマンが、夢をあきらめ去って行く姿は、ただもの哀しかった。

 

 

 父はヒロイズムの話をしたかったのかなと思った。

 人助けをして去って行く英雄の姿に、心をワクワクさせたこともあったかもしれない。英雄は、どこからともなくやって来て、どこへともなく去って行く。

 

 父は、何か感想をひねり出さないととでも思ったのだろう。「マーヴェリック」にワクワクしたのかどうかは分からない。

 けれど、普段あまり語られることのない父の記憶や感情の一端に触れられたことは、私には嬉しいことだった。

 そういう意味で、やっぱり自分は満足したのだと思った。

 

 

 『シェーン』、ジョージ・スティーブンス監督、1953年、118分、アメリカ。原題は、『Shane』。

 原作は、ジャック・シェーファーのデビュー作『Shane』(1949)。

 アラン・ラッド、ジーン・アーサー、バン・ヘフリン、ブランドン・デ・ワイルド。第26回アカデミー賞、撮影賞(カラー)受賞。

 

 

スターレット一家とシェーン↓主演アラン・ラッドは慎重168cmと比較的小柄だったそう。劇中では全く感じさせないですね。

壮大な山脈と乾燥した大平原に、人間がぽつぽつ。ワイオミング州、グランド・ティトン国立公園が撮影地↓

ワイオミング州はこちら↓