笑いあり、涙あり。
郷愁と、喜び、不安、喪失、再生。成長、夢、希望。
映画らしい要素が沢山詰まって、スピルバーグ監督らしい作品だったと思う。
スピルバーグ監督らしい作品って、何だろう。
スピルバーグ作品で、一番好きなものは何ですか?(全て見た訳じゃないけど)私はやっぱり子供の頃見た、『インディー・ジョーンズ』シリーズかな。
テレビでも繰り返し放映され、何回見ても面白くて、釘付けになった。
あと『太陽の帝国』も忘れられない。クリスチャン・ベールのかすれた声が耳に残っている。
『ジョーズ』をテレビで、友人ときゃあきゃあ言いながら見たような記憶もある。ん?あれは『13日の金曜日』だったかな。
何故か、子供の頃の記憶ばかり出てくるなぁ。この映画が、少年の頃の話だったからかな。
それはともかく、スピルバーグ少年にとって、家族と映画、これがほぼ全てだったんだなと思った。
サミーに対して、父親の助手であり親友のベニーが「映画を撮るのをやめるなよ。お母さんを悲しませるな。」と言う場面があった。
その字幕を読んだ時、少し鼻白んでしまった。
「お母さんを悲しませるな。」
大人は度々そう言う事で、自分の感情を子供に負わせる事がある。それは愛情だったり、罪悪感だったり、色々だが、自分の感情を肩代わりさせようとするのだ。もちろん、「お父さんを悲しませるな。」でもいいし、「親御さんを悲しませるな。」でもいい。
ベニーが、サミーの母であるミッツィを幸せに出来ない自分の感情を、サミーに預けたような気がして、「そんな理不尽な」と突然鼻白む私だった。鼻白む場面じゃなかったとは思うけど(汗)
それでもサミーが映画を選んだのは、誰かの期待に応える為でも、誰かを悲しませない為でもなく、ただ自分がそうしたかったから。そう描かれていた気がするので、良かったと思った。
映像を撮ることの、光と影も描かれていた。
楽しい記憶、美しい記憶。それらと同時に、見てはいけなかったもの、隠されていたものも写し出される。また、撮影側の意図的な撮り方、編集により、誇張された「作られた真実」を創り上げることも可能なのだと語っていた。それは無意識に誰かを傷つけることにもなりかねない。
そして、自分や他人の人生を、「撮影の対象」として観察すること。それはサミーの特技なのか、身につけたものなのか分からないけど。
スピルバーグ監督らしい作品とは、私にとっては、配慮された映画という印象だ。
心揺さぶられるけれど、どこか安心して観ていられる。驚かされるけれど、人への信頼も思い出させてくれる。
その基盤となったのは、どこにでもいそうな、とあるユダヤ人の家族。スピルバーグ監督は1947年生まれと言うことなので、1950年代から1970年代頃のお話だ。
ラストシーンが粋でしたね。
スティーブン・スピルバーグ監督・脚本、2022年、151分、アメリカ。原題は、『The Fabelmans』(フェイブルマン家の人々、の意)。トニー・クシュナー共同脚本。
ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ、セス・ローゲン、ガブリエル・ラベル、ジャド・ハーシュ。
第80回ゴールデングローブ賞、最優秀作品賞、最優秀監督賞受賞。
音楽は、ジョン・ウィリアムズ。御年91歳で、「引退の仕事を一緒に出来て良かった」みたいな事をスピルバーグ監督が言っていたけど、どうなんだろう。インタヴュー映像では、まだまだ現役で出来そうだったけど。
初めての映画鑑賞↓入館前にビビりまくる少年サミー。
ベニーおじさんは笑わせてくれる↓撮影し甲斐がありそうな家族!
ユニバーサル・スタジオ(らしき場所)を颯爽と歩いて行く。↓