トドママのあるがままに

難病指定を受けている母親です。
笑顔を忘れないように、そんな思いだけでつらつら書きます♪

開業塾へ行こう

2021-05-14 12:42:18 | 開業

開業したらー、と焚き付けたのは確かに私ですが、やるのは主人です。

かわいそうに、責任は全て主人がかぶるので、私も適当なことを言ったとも思います。

言った手前、私も多少なりとも手伝いをする覚悟でしたが、ここまで手も口も出すことになるとは思いませんでした。

 

さて、開業と言いましても、開業のかの字もわからない私たちにとって、まず何をしたら良いのかすらわかりませんでした。

まず「個人事業主」と「株式会社」の違いみたいな本と、「クリニック開業読本」みたいなものを買ってきて私がちらちらと読んでいました。

 

すると、主人が「開業塾」というのがあって、夫婦で参加できるものがあるので、一緒に参加してくれないか?と言ってきたのです。

ちょっと待ってくれ、私は2時間椅子に座っているのが困難な状態なんだから、そいつは無理な相談だと思いました。

でも、その日ステロイドを多く飲めば行けるかもしれないとも思いました。

言った手前、言った手前。

娘を母に預かってもらうことにして、ふたりで開業塾に行きました。

私は久しぶりの都会のオフィスビルで、非常に新鮮でした。

近くまで車で行く、重役出勤的な感じで、電車で通勤していた頃に比べると出世したな!みたいな気分にひたりながら(介護されていると思うとちょっと悲しいので、発想の転換ですね笑)開業塾に参加しました。

いわゆるマーケティング的な診療圏調査や、不動産の借り方、内装の作り方、医療法人と個人事業主の違いや金銭管理の仕方など、広く浅くいろんなことを教えてもらいました。

失敗した、もしくは困難に陥った事例などを教えてもらったことはその後自分たちの対策を考える時に大いに役立ちました。

 

帰宅すると、娘も母ととっても楽しそうに過ごしたらしくて、なかなか預けられなくて苦労した頃から比べると成長したなと安堵しました。

こうして開業塾に行こうと言い出した時には主人もずいぶんやる気になっていたと思いますが、実際に行ってからはより現実味が湧いたというか、実践的になっていった気がします。

乗りかかった船、みたいなことを言いながらガンガン飛ばしていくんですね。

主人もやると決めたら、すごかったです。

ここからまあ、それこそ紆余曲折あるのですけれども、結果的になんと開業までわずかに8ヶ月。

弾丸ツアーならぬ、弾丸開業準備期間と相成りました。


ひとつ歳を重ねることができました

2021-05-13 12:02:26 | 日記

この歳で誕生日にしみじみと幸せを感じるとは思いませんでした。

正直、子どもが生まれてからは特にほんっとにどーでもいい行事のひとつでもあって、忘れちゃうこともありました。

それでも家族にお祝いしてもらったりして、それはそれで幸せでした。

 

でも、今年はまた、格別な気がしています。

去年の誕生日は、ベットの上でした。

そもそも、去年の誕生日は迎えることができないかなあと思いながら過ごしてまして、何とか生き延び続けているだけでした。

母の日が近いので、母の日に一緒にお祝いをすることが多いのですが、去年は主人と娘がコロナ禍なのにお花を買いに行ってくれました。でも、食事も用意しなきゃとかで、テイクアウトの品をあれこれと買っているうちに、すっかり忘れて家の近くまで帰ってきてしまったとか。

「あ!お花!」

「そうだ!お花を買いに出かけたのに!」

と汗だくのふたりは、そのまま方向を変えてお花を買い求めに行ってくれたようです。

買ってきてくれた赤いカーネーションは、雑然とした部屋に全く似合わず、とても綺麗でした。

私はそのカーネーションのお世話もできないのに、毎日毎日、ベットから見つめていました。

枯れる頃には、少しお世話もできるようになっていました。

間引きしたあとの、ずいぶん小さくなったカーネンションを眺めながら、私の身代わりになってくれたのかな、と思いました。

 

今年は今年で。

「ママの誕生日だよ。何しようか、パパ!」と娘。

私の目の前で、おおっぴらに誕生日会議をするのでしょうか?と笑ながら聞くと

「おっと。忘れていたぞ。」

と、主人。

得意の忘れん坊が出たようです。

「今年もお花にしようよ!」

娘、パパの忘れんぼぶりになれ過ぎて、全く気にしていません。そして私も気になりません。

「えー。いいよー。お花はさ、枯れちゃうし、もったいないよ。」

と私が断りますと

「えー!」

と声をあげて、しまったとばかりにおしだまるパパ。

 

「あれ?お花、もう買ったの?何買ったの?」

と娘。

「しまったー。。いや、そう来るとは。」

とパパ。

どうも、サプライズのつもりでお花を注文しておいてくれたそうなのです。

本当にサプライズが下手な人です。振り返れば、嘘や秘密が苦手過ぎて、サプライズが成功した試しはないかもしれません。

 

そんなこんなで、我が家には娘がこつこつと用意してくれた折り紙の花束と、主人が用意してくれた本物の花束とがやってきました。

ましになったとはいえ、相変わらず雑然とした部屋ですが、あたたかい雰囲気になりました。

「来年は出世して、もっと大きいのね!」

とパパが宣言してくれましたが、いやいやいや、と突っ込みつつ。

そうですね、来年を想定できること、楽しみが増えることはとっても幸せです。

 

お祝いのメッセージをいただいたり、大好きな肉まんをと宅配便が届いたり、もう朝からサプライズがあって、なんとありがたいことかと、さらにしみじみ。

今年も歳を重ねることができて、ありがたい限りです。

今年はより一層の恩返しの年になるといいなと、思いだけはひしひしと。焦らずゆっくり参りたいと思います。


病人の本分

2021-05-13 09:01:23 | 家族

物事には必ず両面があって、そのバランスが必要なんだとしみじみ感じました。

 

私は病人は、病人なりに頑張らなければならないと思っています。

たしかに非常に体がしんどいのですが、しんどい、助けて欲しいとだけ言っていると、言われ続ける方は疲れてしまいます。

実際私の家族達は慣れも出てきたりすることもあって、「だから?」という雰囲気がありありと出ている時もありました。

なんなら、サボりたいだけじゃないの?みたいなことを言われて喧嘩したこともあります。笑

つらいって言われるの、飽きた!とかも気持ちは超絶わかります!

 

だから、という訳ではありませんが、病気の人間は人一倍頑張ることでなんとか生きていけるのだと勝手に思っています。

人の助けを得るというのは、それだけ大変で、とてもありがたいことだと思っています。

変な話、助けを得るというのは基本的にしてもらえないもの、と捉えておいた方がいいと思います。

病気になったら負けです。

負けたんだから、仕方ないです。死なないなら、生きるなら、頑張らないと。

 

一方で、そうやって自分を律して頑張っていましたところ

「あのさ、自分に厳しすぎる。見ていて、こちらは辛くなってくる。」

と言われたこともあります。

 

おーい、どっちなんだい!

 

病人は頑張らなければなりませんが、かといって頑張りすぎると逆に周りをしんどくさせるのだそうです。

バランス・・。

バランスが大事なのは、病気のことに限らずいろんなことに言えると思うだけに。

私のおそらく死ぬまでのテーマなんだろうなあと思っています。


冗談も休み休み言ってたら、人生が終わっちゃう

2021-05-12 07:47:00 | 開業

主人に聞いてみました。

「今も開業したいって思ってるのー?」と。

「お?なんだいやぶから棒に。んー、そりゃ、いつかはって思わなくもないけどさ。」

「今日先生にね、精神科足りないって聞いたのよ。」

「は?このクリニックが潰れる時代に。余ってるって聞いてるよ。足りないってなにごと?」

「知らないわよ。そう先生がおっしゃるんだから、足りないんじゃないの?」

「そんな地域はあるのかな。」

「さあ。」

と、最初はこんな感じで、恐ろしく適当な家庭の会話からスタートした気がします。

主人はやっぱり非現実的な話として捉えていたと思うんですね。

 

それで、ちょっとヘルパーさん達にも聞いてみたんです。

「あのー、精神科ってこの辺、足りないんですか?」

「足りないなんてもんじゃないわよ!」

「え?」

「だって、病院に患者さんと行くでしょう?4時間待ちだから!」

「はあ?4時間ですって?そんなの疲れる以外に方法はあるんですか?」

「もう、通常の利用時間では終わらないわよね。基本的に延長っていうか。」

「えー。」

「ご家族で連れて行くのはほぼ無理ってなっちゃうわよね。」

「そんな状況なんですか。」

自分の住んでいる地域の精神科の現状を知らなかったことは恥ずかしいことかもしれませんが、恥ずかしいとかいう感情以上に、その状況はあまりに悲惨だと思いました。通院介助もヘルパーさんのお仕事でそれなりのウェートをしめているようでしたが、往復の時間や診察・会計、薬待ちの時間などを含めると1日つぶれてしまうことも往々にしてあるようでした。

待っている時間もじっと待っていられないこともあるから、大変なのよ、とのことで。

なんとかできることはないのかと思いました。

 

主人にこの話をしますと「えー、ひどいなあ!」と驚いていました。そして、患者さんのためにはとか、いろんなことをいつもの通りとうとうと話していましたので、しばらく聞いた後に改めて提案しました。

「パパ、開業したいって言ってたよね。」

「うん?まあ。」

「じゃあ、開業しようよ。まずは、ちょっと調べてみよう。」

「はあ?冗談も休み休み言いなよ。君はなんだって奇抜な発想ばっかり。」

「いや、こういうのはね、ご縁もあるんだよ。この時っていう時とのご縁もあるんだよ。」

「だって、君はろくに動けない、やるのは僕なんだよ?」

「それはそうだけど。だからこうやって提案だけしてるんだ。」

「失敗したらどうするんだよ!」

「最善を尽くして失敗したら、その時考えればいいんだよ。命を取られるわけじゃない。生きていればなんとかなる。」

 

相変わらず思うことは、私が病気でなければ開業はまだしていなかったと思います。

もう失うものがなかった私にとって、開業の失敗なんてむしろ願ったり叶ったりくらいの瑣末なことにしか思えませんでした。

人生のスパイス程度。

元気な時は失敗するのがとっても怖かったので、開業なんて背中を押すどころか認めたかどうかもわかりません。

この時には、借金さえ返し終われば(人に迷惑をかけなければ)、多少のお金くらい失ってもいいじゃんと思っていました。

ということで、段々と主人がその気になりまして。

本当に開業準備を始めることになりました。


私にできる恩返し

2021-05-11 12:01:38 | 開業

「ねえ、なんで旦那さんは開業しないの?」

 

唐突に、こんな質問が私に投げかけられたのは、いつもの通りジプトーンを見つめている時でした。

麻酔薬が首に入り、目が片方開かない状態でベットに横たわる私に、先生や看護師さんたちがいろんな話をして励ましてくださいました。

しかし、この日はまた妙な話だなと思ったので、こうしてはっきりと記憶にあるのだと思います。

「え?それは。まだ経験も浅いですし、時期じゃないと思ってるのではないですかね。あとは。」

「そんなの、十分よ!若い方が楽ってこともあるしね。で、あとは、ってなに?」

麻酔科の先生は、ほぼ間髪入れずにぽんぽんと会話をされる、典型的な「頭の回転が良い」方でした。

私は会話について行くのがやっとの時も往々にしてありました。

「えーっと、その、私も病気ですし、子どもも小さいですし。」

「え?そんなの気にしてたら人生何もできないじゃない!みんな何かしら抱えてるものよ!」

「あはは、そうですねえ。」

この日もまた、先生は私を元気付けるために、ある種適当な話をしてこられたんだと思っていました。

 

ところが、数週間後。

「ねえ、なんで旦那さんは開業しないんだっけ?開業したいって思ってないの?」

「はい?」

「医者になったらさあ、開業したいってチラリとは思うんじゃない?」

「えーっと、まあそうですね、一国一城になってみたいと言ってはいましたけど。」

「けど、何?」

「夢の話ですよ。それに最近はあまり言わなくなりました。」

「えー、開業なんてそんな夢にしておくものでもないわよ!」

とまあ、こんな感じで、誘導尋問のような会話もありつつ、時々開業話を私にしてくれました。

 

このあたりから、私自身も少し開業ってなんだろうって考えるようになりまして。

先生が開業されたきっかけなどもコラムがあったので読みました。

でも、やっぱりどこか非現実的でした。

 

そんなある日。

「ねえ、旦那さん、開業しないの?足りないのよ!」

と言われました。

「え?足りない?」

 

変な話、主人の夢を叶えるだけなら、私は突き動かされることはついぞなかったと思います。

この「足りない」という話を聞いてから、一気に私の中で風が吹きだしました。

足りないところに必要な医療資源を持ってくること、そしてささやかな主人の夢を叶えること。

私がすべき、恩返しのように感じたのです。

こうして、私の病状が一番悪い時に、主人の開業話はスタートすることになったのです。