「教科書を出して34ページを開いて3番をやりなさい。ちゃんと下敷きもつかいます。鉛筆は削っていますか。」
教師がこう言ったら、クラスの子は全員その通りにする。
そんな理想の教室…はありません。
何人かの子は、その通りできます。
多くの子は、教科書出してペラペラページをさがします。
下敷きを出すことに集中する子もいます。
鉛筆を削り出す子もいます。
そして、何もしない、もしくは机に突っ伏す子もいます。
「先生!どこやるの!」と、ヤンチャな子が叫びます。
「さっき言いました!」先生が怒鳴り返します。
こんな光景見たことありませんか?
実は、教師になりたての僕の授業です。
一度で聞ける子に育てたいと、一度しかいいませんでした。
で、話を聞いてないと、説教しました。
その結果、子どもたちのやる気はどんどんなくなりました。学級崩壊の始まりです。
「教科書を出して34ページを開いて3番をやりなさい。ちゃんと下敷きもつかいます。鉛筆は削っていますか。」
これの何がいけなかったのでしょうか。
実は、脳科学の研究で、わかります。
ワーキングメモリー、聞いたことありますか?
作業記憶と訳されます。脳で今やる事のために、一時的にする記憶のことです。
ワーキングメモリーは一時的な記憶のため、すぐに忘れてしまいます。さらに、個人差はありますが、一度にいくつも覚えていられません。普通の子どもなら3つ、支援の必要な子は1つしかワーキングメモリーがない場合もあります。
新しい記憶が入ったら古い記憶を忘れます。
だから、いくつも記憶させなければいけない指示は、前の指示を忘れてしまうのです。
先ほどの指示、
「教科書を出して34ページを開いて3番をやりなさい。ちゃんと下敷きもつかいます。鉛筆は削っていますか。」
これはいくつ指示があり、いくつワーキングメモリーを使うでしょうか?
①教科書を出して
②34ページを開いて
③3番をやりなさい。
④ちゃんと下敷きもつかいます。
⑤鉛筆は削っていますか。
5つの指示があるため、ワーキングメモリーは5つ必要です。
先ほど、普通の子で3つと書きました。
普通の子も、これら全てを覚えていられないのです。
ワーキングメモリーが1つのヤンチャな支援の必要な子は、分からなくなるから聞き直すのです。
または、脳がパニックになり、机に突っ伏すのです。
ではどうするか。
代案を示します。
「教科書を出します。」
指示後、視線を飛ばし、全員出したか確認します。
「34ページを開きます。開いたら、開きましたと言います。」
視線を飛ばしながら確認します。
言わせる事で、まだ開かない子に気づかせます。
「3番を指で押さえます。隣の人が押さえてたら手をあげます。」
全員手をあげたか視線を飛ばします。
隣の子に確認させる事で、わからない子も隣の子に教わります。
僕なら、下敷きや鉛筆削りはここでは言いません。机間指導しながら個別対応します。
ここまでやっても、1分もかかりません。
これは例示ですが、どの授業でも、指示を出すときは必ず1つにします。
1つ指示して視線をとばし確認し、また次の指示をするのです。
これをよんだら、明日から実践して下さい。昔の僕みたいに、学級崩壊させないように。