特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

逃げ道(公開コメント版)

2017-05-22 08:52:31 | 腐乱死体
特殊清掃の依頼が入った。
依頼者は初老の男性で、現場となったアパートの大家。
男性は客面することもなく、礼儀正しく言葉遣いも丁寧。
その語り口は、謙虚な人柄を感じさせるものだった。

いつものごとく、私は、男性と日時を合わせて現地へ。
まずは、男性の要望に従って、現場近くの男性宅を訪問。
男性の腰の低さからは想像できないくらいの豪邸で敷地も広く、何度も番地と表札をみて間違いがないことを確認。
金の力に弱い私は、やや緊張しながら門扉のインターフォンを押した。

男性は、すぐに表にでてきた。
そして、電話と同じ雰囲気で、丁寧に頭を下げてくれた。
私は、玄関先で簡単な挨拶を済ませて鍵を預かるつもりだったが、男性は先に話したいことがあるようで、私を家の中へ上がるよう促した。

足元に置かれた高級そうなスリッパをすすめられた私は、靴下の汚れを気にしながらそれを履き、応接間の扉をくぐった。
通された応接間は豪華、置かれた調度品もまた高そうなものばかり。
一方の私は、くたびれた中年男+貧相な作業服姿。
どう見てもミスマッチな私は、ソファーに腰掛けるのが躊躇われたが、立ったままというわけにはいかない。
背もたれに背中をつけないよう浅く腰掛け、出されたコーヒーの苦味に起こった出来事を重ねながら、男性の話に耳を傾けた。


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