走る営業公務員、奮闘記!!

地方分権が進展する中での地方からみた木っ端役人の奮闘記です。

ある部下の葛藤

2008年04月08日 00時36分10秒 | その他
❀❀❀ 君が必要なのです

 当課では異動前に部下のヒアリングを一人ひとり行い異動希望を聴くようにしています。
その中で、異動してきて間もない公民館主事から異動したい旨の申し出がありました。
私は、本当にびっくりしました。
 なぜなら、彼は地域の人たちから慕われ、実績も出してくれていたからです。
 決してルーチンワークだけに甘んじることなく、新しいことに常に挑戦してくれる部下でした。
仕事ぶりもイキイキとしていただけに、ショックでした。

 彼は、決して口数の多いタイプではありませんが、彼なりに理由を話してくれました。
 彼は、仕事大好き人間で、ついついのめり込むタイプだと自己分析してくれました。
確かに、夜遅くまで、不良と周囲から呼ばれていた少年たちに真正面からぶつかり、やればできることを教えてくれ、みるみる少年たちが変わったのを私は知っています。
そのため、奥さんとのコミュニケーションの時間が大幅になくなったというのです。
当然、喧嘩が絶えなくなってきたというのです。
 そして、彼は意外にも「家内の気持ちが痛いくらいわかるんです。でも、うまくいえないんです。ですから、やり残したことはいっぱいあるんですが、家内のために異動をさせていただけませんか」と。
 続けて、子どもがいないということ、自分がいない時間が増えれば増えるほど彼女の寂しい時間が増えていること。
この話を聴きながら、自分がダブってきました。
そして、私は彼のような気遣いがなかったと改めて反省しました。
 
 しかし、今、彼が勤めてくれている地域は誰よりも彼を必要としています。
私は、彼を異動させないことにしました。

 そんな彼が歓送迎会の時に、
「課長、少年たちの親御さんからお礼の手紙が来ました。」と打ち明けてくれた彼に、
「奥さんに、手紙見せた?」と聞くと、
「いいえ、まだです。」
「そうか、見せておあげよ。」
「ちょっと、怖いんです。なんだか、自分だけが褒められているだけで、ひがまれないかと、つい気にしちゃって。」
「でも、それは君だけがもらったもんじゃないよ。奥さんがいて貰えたもんだろう?」
「そうですね、見せます。」
「そうだ、そうだ、見せておあげよ。」

 きっと彼は今も彼なりに悩み続けていると思います。
 私たちの職場は、普通の人たちが休む時にも仕事をすることが多いところです。
そのために、家庭不和になりやすいと言われています。
本当に悲しいことです。
地域のために仕事をすればするほど家庭が駄目になる可能性が高くなる、上司としては本当に辛いのです。

 でも、私も君が必要なのです。